食事ができなくなるだけじゃない!顎関節症を放置する危険性

食事ができなくなるだけじゃない!顎関節症を放置する危険性

顎に痛みなどが生じる顎関節症は、治療せずそのまま放置しておくとどうなるのでしょうか? 顎関節症は自然に治る病気なのか、放っておくとどのような状態になる可能性があるのかをお伝えします。
顎関節症を改善するためには、歯医者さんで受けられる治療のほか、セルフケアも重要となります。まずは、顎関節症の症状をきちんと理解することから始めましょう。

 

この記事の目次

顎関節症の症状

1-1 口を開けると音がする

口を開けたときや閉じたときに「ポキ」「カコン」というような音がします。これは顎の関節のなかにある軟骨がずれて口の開閉時にすべってしまい、音がなっている状態です。このずれが大きくなっていくと、顎の骨が軟骨にひっかかって口が開かなくなってしまうこともあります。
悪化してさらに軟骨がすり減ると、骨と骨が直接こすれ合い「ジャリジャリ」といった音がするようになります。

 

1-2 顎の関節が痛い

口を大きく開けたときに顎の関節に痛みがでます。日常生活の中では、食べ物を口に入れるときやあくびをするときなどに痛みを感じることが多いです。症状が悪化してくると、リンゴをかぶりつくほど大きな口を開ける必要のないような「通常の食事」でも痛みが生じるようになってしまいます。ひどくなると顎を動かすたびに激痛が走り、苦痛で食事ができなくなることもあります。

 

1-3 口が開かない

痛くて口を開けることができず、人差し指と中指、薬指の3本をそろえて口の中に縦にいれられなくなります。
口を開けるときは、顎関節の骨が前のほうにすべるのが正常ですが、軟骨の位置がずれていると口を開けるときに軟骨が邪魔をして骨が動かなくなってしまいます。
口が開かない状態をそのまま放置して2か月以上経ってしまうと治療を受けても治らない可能性があるので、早めに歯医者さんに診てもらいましょう。

 

1-4 症状には「急性」と「慢性」がある

顎関節症の症状は人によって異なります。急性症状で突然口を開けられなくなる人もいれば、慢性的に顎が痛い人もいます。
顎がずれて音がでるようになると、その周りの筋肉の緊張もひどくなり口が開かなくなるケースもあります。この急性症状は1週間ほどすると治まったように感じますが、実際には顎や関節の骨の変形がみられるなど、慢性的な症状へ移行していることがほとんどです。
急性的に口が開けられなくなったといった症状が現れた場合、食事の仕方を変えるなどの対策を講じても、噛み合わせが正常に戻るわけではありません。一時的に痛みが減っただけで、慢性的な顎関節症へと進行している可能性があることを頭に入れておきましょう。

 

顎関節症を放置すると……

2-1 顎関節症は自然に治ることもある

顎関節症は絶対に治療をしないと治らないというわけではありません。実際に、放置しているだけで症状が消えたというケースもあります。顎関節症患者の3分の1は放っておいて症状がなくなったという報告もあるほどです。
しかし、全員が放置して完治したわけではありません。顎関節症は治療をしなくても大丈夫、などと誤った自己判断をしないで、歯医者さんの診断を受けるようにしましょう。
少しの痛みであれば治療を受けなくても我慢できるかもしれませんが、症状が進行してからでは自然治癒は期待できません。

 

2-2 顎関節症は重症化することもある

顎関節症の症状があらわれているにもかかわらず放置していると、悪化して会話や食事が困難になるほど重症化するおそれがあります。ひどい場合には全身に症状が広がったり、手術が必要になったりすることもあるのです。
もちろん、顎に痛みがあったからといって必ずしも重症化するわけでもありません。「かたい食べ物を食べたら顎が痛かったけど、すぐに治った」というような、一時的なごく軽い症状であれば治療を受けなくても自然に治る可能性はあるでしょう。ただし、顎関節症は基本的に治療が必要であり、適切な治療を受ければ8割の人は改善がみられるという報告があることは覚えておいてください。

 

2-3 全身や精神に悪影響を及ぼすこともある

顎関節症になると、筋肉の緊張が首の周辺にまで広がっていきます。そのため、首や肩が重く、常に凝っている状態になるでしょう。頭痛をともなう人も少なくありません。
さらに、自律神経にも影響を及ぼすおそれがあります。また、落ち込みやすくなる、だるいといった自律神経失調症の症状もあらわれやすくなります。

 

顎関節症の治療法

3-1 歯医者さんでの顎関節症の治療

顎関節症の疑いがあるときには、問診や視診でどこがどのように痛むのか、口はどのくらい開けることができるのかなどを最初に確認されます。レントゲンやMRIを用いて顎関節の変形などを調べる場合もあるでしょう。
その後、症状や状態に応じて原因を改善する治療や症状をやわらげる治療をいくつか組み合わせて治療していきます。治療方法は下記の通りです。

・認知行動療法……顎関節症の原因となる習慣やクセを自覚し、取り除く
・物理療法……痛みの起きているところを温めたり冷やしたりして症状を軽減する
・運動療法……口の開閉や顎を動かす訓練を行う
・スプリント療法……歯列を覆う装具を付け、顎関節や筋肉へかかる負担を減らす
・薬物療法……炎症を抑える薬や筋肉の緊張をゆるめる薬のほか、入眠剤や抗不安薬、抗うつ薬を服用する
・外科療法……治療を受けても改善がみられない場合には手術を検討する

 

3-2 家庭でできるセルフケア

顎関節症の発症には生活習慣が深く関係しているので、問題となる習慣やクセを洗い出して改善することが重要となります。家庭で気をつけるべき主なポイントをご紹介しましょう。

・歯を食いしばらない……無意識に歯を食いしばらないように上下の歯を触れさせない
・食事内容を見直す……かたいものは控える、食べ物は小さく切る
・口を無理に大きく開けない……特にあくびには注意
・症状にあわせた患部のケアをする……急性の痛みは冷やす、慢性の痛みは温める
・マッサージで血流を促す……顎の筋肉をマッサージ(ただし、筋肉を傷めないように強くもまない)
・寝るときの姿勢を気をつける……顎や首の筋肉に負担をかけるうつぶせ寝や高過ぎる枕は避ける
・姿勢を正す……顎が前に出るような姿勢や猫背に注意
・リラックスする……筋肉にストレスがかからないように意識的に力を抜く
・運動をする……ウォーキングや水泳などの全身運動で血行をよくする。ストレス解消の効果も得られる
・ストレッチをする……痛みが落ち着いてきたら口を大きく開ける、顎を横に動かすなどして顎まわりの筋肉をストレッチ、首や肩のストレッチも効果的

このようなセルフケアを半年ほど続ければ、9割ほどの人は治るといわれています。ただし、顎関節の状態によっては悪化させるおそれもあるので歯医者さんの指示に従って行ってください。特に顎関節に直接的な影響を及ぼすマッサージなどを自己流で行ってはいけません。

 顎関節症の症状に気づいていても、仕事が忙しいなどの理由で歯医者さんに行っていない人は多いようです。しかし、放置している期間が長いほど症状がひどくなってしまう可能性が高くなるので、早めに適切な治療を受けてください。
もちろん、日ごろから顎関節症の予防を心がけることは大切です。生活習慣の見直しなど、自分でできる対策は積極的にしていきましょう。ただし、痛みが出ているときに自己判断でセルフケアをすると悪化するおそれがあります。必ず歯医者さんの指導を受けるようにしてくださいね。

今日、求めていた歯医者さんが見つかる

監修日:2017年07月14日
飯田尚良 先生監修
経歴

1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

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