インプラント治療、1ピースと2ピース自分に合う治療法は?

インプラント治療、1ピースと2ピース自分に合う治療法は?

歯を失ってしまったら歯を補う治療が必要です。そのまま放置すると歯並びや咬み合わせが崩れてしまいます。入れ歯やブリッジなど、歯を補うための治療にもいろいろありますが、見た目の美しさや自然な使い心地で人気のインプラントに関心を持つ方も多いでしょう。ちなみに、インプラントには1ピースと2ピースがあるのをご存知ですか?後悔しないためにも、インプラントについての正しい知識を身につけ、前向きに治療に取り組むための参考にしてください。

 

この記事の目次

インプラント治療とは

1-1 インプラント治療とはどのような治療なのか

虫歯や歯周病、外傷などで歯を失ってしまったら、すぐに治療することをおすすめします。なぜなら、歯が抜けたまま放置するとその隙間に両脇の歯が倒れこみ、咬み合わせのバランスが崩れてしまうからです。また、歯並びが乱れブラッシングがしづらくなるだけでなく、顎関節に負担をかけたり頭痛や肩こりの原因になることもあります。
しかし、何らかの理由で歯を失ってしまった場合は、「歯を補う治療」をしなければなりません。歯を補う治療としては、入れ歯・ブリッジ・インプラントの3つの選択肢があります。

 

入れ歯は日本で昔から広く使われている治療法です。取り外しが可能な義歯を失った歯の代わりに使います。数本の歯を失った場合は部分入れ歯になりますが、失った歯の両脇にある健康な歯にバネをかけて使用するため、残っている天然歯への負担が大きくなります。失った歯の本数が多く総入れ歯になったときは、歯をしっかりと固定することが難しくズレや痛みが生じ、咬む力も弱くなってしまいがちです。また顎を支えにするため粘膜を傷つけたり骨が痩せたりすることもあります。

ブリッジは失った歯の両脇にある健康な天然歯を削り、橋を架けるように義歯を被せる治療法です。治療期間が短く、咬み心地も自然ですが、削られた歯の寿命は短くなるデメリットがあります。
インプラントは、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に審美性の高いセラミック製の被せものする治療です。入れ歯やブリッジと違い、周囲の健康な歯に悪影響を与えることなく歯を補うことができます。また、インプラントは骨と結合ししっかりと安定をすることで天然歯と変わらない咬み心地を再現できるため、近年希望する方が増えています。

 

1-2 インプラント治療の流れ

実際、インプラント治療はどのような手順で行われるのでしょうか?
治療は、まずカウンセリングから始まります。治療期間や方針だけでなく、費用などの説明も行われ、患者さんが前向きに治療に取り組めるような環境を作ってもらえます。その後、診断をして治療計画を立てますが、このときにインフォームドコンセントを採用し、わかりやすく説明をしてもらえたかどうかを、歯医者さん選びの参考にしてください。

 

治療方針が決まったら、それに従い外科的手術でインプラントを埋入します。インプラントがあごの骨と結合し、安定するまで少し時間が必要です。お口の中の状態にもよりますが、安定するまで1か月半から半年ほどかかります。

インプラントが安定したら人工歯を被せ一連の治療が終りますが、インプラントは装着した後の過ごし方が重要です。インプラントをいつまでもいい状態で保つために、ホームケアをしっかりと行いましょう。また、定期検診は必ず受けるようにし、どんな小さなトラブルでも早期発見、早期治療を心がけるようにしてください。

 

1-3 インプラント治療の長所

インプラント治療は人工歯根であるインプラントを顎の骨に埋入し、その上に人工歯を被せる治療法です。そのため、周囲の健康な歯に負担をかけることがありません。またインプラントは通常チタン製のため人体と親和性が高く、骨と結合し強く安定するため天然歯とかわらない咬合力を再現することができます。しかも、歯を使うときに顎の骨に力がかかるため骨が痩せることもありません。審美性も高く、周囲の歯と同じような質感で仕上がるためとても自然です。

 

1-4 インプラント治療の短所

インプラント治療は保険が適応されないため、自費診療のため費用が高額になります。価格については歯の本数や口腔内環境、部位、歯科医院によって異なるため歯医者さんと相談をしましょう。
また、インプラント埋入には外科的な手術が必要です。そのため全身疾患をお持ちの方はインプラント治療ができないケースがあります。

重度の糖尿病の方で血糖値をコントロールできていない方は、血液の循環が悪いだけでなく、免疫が低下しているため感染の危険性があります。心臓病の方は発作を起こすことがあるため主治医に相談をしなければなりません。そのほか、肝臓病や腎疾患など持病をお持ちの方は注意が必要です。

さらに歯周病や入れ歯などで顎の骨が痩せている方はインプラント治療がすぐにできない場合があります。その場合はインプラント治療ができるよう骨の量を増やす治療をしなければなりません。

 

インプラント治療が難しい症例について

2-1 なぜ骨が足らなくなるのか

インプラント手術ではインプラントと呼ばれるチタン製の人工歯根を顎の骨に埋入します。そのため充分な顎の骨の厚みが必要です。何らかの理由により骨量が足りず、すぐにはインプラント埋入の手術を受けることができない患者さんがいます。

 

では、なぜ骨が足りなくなるのでしょう?

骨の量が足りない場合、生まれつき上顎の骨が薄い、歯周病によって歯を支えるための歯槽骨が溶けてしまった、歯を失ってから治療せずに放置してしまったため顎の骨が衰え痩せてしまった、入れ歯が合わず圧迫された歯肉の下の歯槽骨が吸収されてしまった、などさまざまな原因が考えられます。

 

2-2 骨が足りないとインプラント治療はできないの?

歯医者さんで検査の結果、骨が足りないと言われてしまったら、インプラントはあきらめなければならないのでしょうか?
骨の量を補うための治療があり、インプラント治療を行う前に骨量を補うことができるため、あきらめる必要はありません。口腔内環境をしっかりと整えればインプラント治療も可能です。

骨の量を増やすためには、GBR法という治療が行われます。

 

2-3 骨組織を再生するGBR法の治療の流れ

インプラントを埋入する患部は充分な骨量が必要です。そのため骨組織が不足している場合、GBR法で骨組織を再生させます。

歯を失った場合や、歯周病などによって歯槽骨が吸収され、骨が痩せてしまうと埋入するインプラントが歯ぐき表面から露出してしまいます。
GBR法では埋入したインプラント周辺の痩せた歯槽骨部分の歯肉を剥がし、内部を自家骨または骨充填剤で充填します。骨よりも再生が早い歯肉が患部に侵入するのを特殊な膜「メンブレン」で防ぎ、骨の再生を誘導する働きをします。メンブレン設置後は歯肉を戻し、患部に強い刺激を与えないよう注意しながら数ヶ月間、骨が再生するのを待ち、その後安定したら人工の歯を装着します。

 

2-4 骨の高さが不足している場合はサイナスリフト

上顎の奥歯の上部には上顎洞という空洞があります。また上顎は下顎よりも骨が柔らかく、歯を失うと骨吸収が急速に進み、インプラント埋入するための骨量が不足し、手術が難しくなります。このように広範囲で骨が薄くなっている場合は、サイナスリフト治療を行いインプラントが埋入可能な環境を作ります。
サイナスリフトは上顎洞側の壁を横から切開し空洞に自家骨や骨充填剤を充填することで上顎の骨を作り、充分な骨の厚みを確保する治療です。

 

2-5 歯周病などで破壊された歯周辺組織をGTR法で再生

歯周病などで破壊されてしまった歯周辺組織を再生させるための組織再生誘導法です。歯周ポケット内を清潔にし、歯肉を被せ、特殊な膜で覆い、歯肉を被せる処置を行います。自然治癒によって再生するスピードよりも歯肉の再生速度が速く、歯周組織が再生されるためのスペースがなくなってしまうのを防ぐ方法です。特殊な膜は歯周組織がしっかりと再生するまで歯肉の侵入を防ぎます。

 

インプラントの種類による違い

3-1 2ピースと1ピース、どっちを選ぶ?

インプラントはどのような構造をしているかご存知でしょうか?インプラントは通常、インプラント、上部構造、アバットメントの3つのパーツから成り立っています。
インプラントは大きく2つに分わけられ、インプラントとアバットメントがスクリューと呼ばれるねじで連結しているものは2ピース、スクリューがなく、インプラントとアバットメントが切り離せない構造をしているものを1ピースと呼びます。

 

3-2 2ピースを使用する治療法

2ピースタイプのものは外科的手術の1回法、2回法どちらでも対応が可能です。
2回法では手術を2回します。1回目の手術では顎の骨にインプラントを埋入し歯ぐきを閉じます。その後、骨と結合するのを待つため3~6か月時間を置き、2回目の手術をします。2回目の手術では歯茎を切り開き、インプラントにアバットメントを結合させます。
1回法では埋め込んだインプラントにアバットメントまで装着し、ヒーリングアバットメントと呼ばれるキャップを歯ぐきから出した状態で縫合を行います。インプラントが骨と結合したらキャップを外し、人工の歯を取り付けます。手術が1回だけなので身体的、経済的負担が軽減します。

 

3-3 2ピースタイプの長所と短所

2ピースタイプのインプラントの長所は適応範囲が広いことです。全身疾患があるケースや顎の骨量が足りないケースなど、インプラントが難しい症例にも対応可能です。また前歯で審美性を求めている場合にも有効です。

日本で使われているインプラントは2ピースタイプのものがほとんどです。アバットメントを交換するため口腔内の状態に合わせた人工歯が取り付けられますし、歯の向きなどの調整もできます。万が一強い衝撃を受けてもアバットメントをつなぐスクリューが折れるため、顎の骨に埋入されているインプラントや顎の骨にまで影響を受ける可能性が低くなります。
短所は、2回手術をするので身体の負担が大きく、費用が高額になることです。また、パーツが多いため治療が複雑となり、期間が長くなることがあげられます。装着したアバットメントを固定するスクリューが緩むことがあることもデメリットといえるでしょう。

 

3-4 1ピースを使用する治療法

1ピースタイプは、スクリューで固定されているインプラントとアバットメントが一体化した構造をしています。埋入手術は1回法が行われます。2回法とは違い、手術が1回なので身体的、経済的に負担がかかりません。またパーツが少なく手順が簡潔化されているので治療期間が短いだけでなく2ピースよりも強度があります。

 

3-5 1ピースタイプの長所と短所

長所は、手術の回数は少なく費用、身体的な負担が抑えられることです。パーツが少ないため、治療期間が短くなり、スクリューが緩むことがないため、強い力にも耐えることができます。

短所としては、顎の骨の厚みが充分でなければ使用できないことでしょう。
また、アバットメントに不具合が生じた場合は、インプラントごと取り外さなければなりません。アバットメントが一体化されているため、インプラントの方向によって上部に取り付ける人工歯の方向もある程度決まってしまい微調整が難しいという短所もあります。
1ピースタイプはまだまだ日本では使用している歯医者さんが少なく、希望しても難しいケースがあるので、まずは歯科医に相談してみましょう。

 

インプラント手術を受ける前、受けた後

4-1 インプラント治療のための外科的手術のための準備

風邪の症状が出ていると術後の回復が遅れる心配があるため手術が延期になることがあります。
手洗いうがいで風邪など予防し、手術に備えて体調は万全に整えましょう。
手術に対する不安な気持ちで平常心をたもつことは難しいでしょうが、前日は充分な睡眠で体調を整えるよう心がけます。痛みや麻酔、骨に金属を埋め込むことの不安は事前に歯科医と相談し、なるべく取り除いておくことが重要です。
また、女性が気になるのは当日のメイク、服装、髪型などではないでしょうか。服装は、出血で汚れる可能性があるので汚れてもいい服装で、髪が長い場合は邪魔にならないよう束ねましょう。また、手術では顔面を消毒するため、メイクはしないようにしましょう。
常備薬がある場合は必ず事前に主治医に伝えてください。薬によっては血液が固まりにくくなったり、手術に悪影響を与えるものもあります。手術前の食事は普通にとり、食後のブラッシングはきちんと行い、お口の中を清潔に保ちましょう。

 

4-2 手術後気を付けなければならないこと

術後の出血や痛みに対して不安を持つ患者さんもいるでしょう。
痛み止めや抗生物質は用量、用法を守り、出血はあまり気にしすぎないことが大切です。ゼリー状の血の塊ができるのは異常なことではなく体が傷を治そうとしているものなので、無理に取らないようにしてください。
また出血を抑えるため、飲酒や激しい運動は避けましょう。入浴も血の巡りがよくなるため、シャワーだけにしたほうがいいでしょう。食事もしにくくなりますが、体のために栄養も大切です。柔らかいものなど、食べやすいものを食べるようしてください。患部はブラッシングのブラシが当たらないように注意し、強目のうがいも控えましょう。

 

4-3 定期メインテナンスの必要性

せっかく入れたインプラントを、いい状態で長く使うためには正しいメンテナンスが重要です。正しいブラッシングを毎日行い、定期検診を怠らないようにしましょう。定期検診では普段落としけれない歯の汚れをきれいに取り除くだけでなく、トラブルを小さいうちに見つけ、早期治療する目的もあります。歯科医院で行うメンテナンスは、レントゲン撮影や咬み合わせの確認、クリーニング、お口の中のチェック、ブラッシング指導などさまざまなメニューが用意されています。

 

審美性の高いインプラントは1ピース?2ピース?

5-1 審美的に優れているのは2ピース

奥歯と違い、前歯は笑ったり話したりするときに見えるため審美的な治療が求められます。
審美性の高いインプラントを希望する場合は2ピースタイプの方がいいでしょう。1ピースタイプはインプラントの状態で被せものの状態がほぼ決まってしまいます。審美的な細かい調整が難しいだけでなく、隣接する歯の間に隙間が空くことがあり、コンプレックスの原因となることがあります。

2ピースは骨の状態で斜めにインプラントを入れても多種多様なアバットメントと組み合わせことで、被せものの角度を自由に変えることができます。そのため、無理なく理想的な歯並びインプラントを入れることが可能です。

 

5-2 インプラントに使用する被せものによる審美性や強度の違い

インプラントに使用される被せものは5種類あります。
セラミックは陶器ですが、オールセラミックとは違い中は金属製のためアレルギーの心配があります。セラミックは汚れがつきにくく、変色しにくい素材で美しい透明感がありますがオールセラミックほどの自然な仕上がりではありません。また金属やジルコニアよりも強度が弱く、割れてしまうことがあります。以前はよく使われていましたが、現在ではあまり使われなくなりました。
セラミックの代わりによく使われるようになったのはオールセラミックです。オールセラミックは審美性が高く自然に仕上がります。また金属フリーのためアレルギーの心配がありません。以前は割れやすい特性があり、一般的には使われることはありませんでしたが、素材の改良が進み強度が増したため、奥歯以外での利用が可能になりました。世界中で広く使用されるようになったため材料費も抑えられるようになり、たくさんの人に使用されています。
その他オールセラミックよりも硬く強度があるジルコニアやセラミックとレジンを合わせた素材でできているハイブリッドセラミックなど、強度が強いものや安価なものがあります。それぞれにメリットデメリットがあり、症例や部位、患者さんの希望に合わせて選ぶことができます。

 インプラントには1ピースと2ピースがあります。一般的に使われているのは2ピースですが症例によっては1ピースを使うことも可能です。しかし日本で1ピースを取り扱う歯科医が少ないため、必ずしも希望通り治療を行えるとは限りません。
どちらの治療法を選ぶかは担当歯科医とよく相談しなければなりませんが、どちらにしても術後のメンテナンスをきちんとしなければトラブルを招きインプラントごと撤去しなければならなくなるため注意しましょう。

今日、求めていた歯医者さんが見つかる

 

 

監修日:2017年06月25日
鄭尚賢 先生監修
経歴

歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学