ちゃんと選べていますか?インプラント治療を受ける歯科医院

ちゃんと選べていますか?インプラント治療を受ける歯科医院

インプラント治療は、かつては新しい治療法として、日本ではあまり普及していませんでしたが、近ごろでは、手がける歯医者さんもかなり増えてきました。身近なものとなりつつあるインプラント治療とは、実際どのようなものなのか詳しくご紹介します。また、インプラントのメリット・デメリット、信頼できる歯科医院の選び方、インプラントの治療手順などについても、詳細にお伝えします。

この記事の目次

1章 インプラントってどんな治療法?

インプラントとは、広い意味では体内に埋め込む人工物の総称です。骨折を治療するネジや人工関節、美容整形のシリコン素材、心臓のペースメーカーなど、いずれもインプラントと呼びます。歯科口腔外科の分野においては、顎の骨に埋め込む人工歯根のことを、インプラントと呼んでいます。ここでは、歯のインプラント治療の詳細について、ご紹介します。

抜けた歯を人工歯根で補う治療法

歯は隣同士が接触することで支え合っています。そのため、もし歯が抜けたまま放置しておくと、支える力が弱くなり、空いたスペースに歯が倒れ込んできます。それにともない、次第に歯並びも悪くなってきます。さらに、噛む圧力がかからなくなると、顎の骨も痩せていってしまいます。それを回避し、抜けた歯を補う治療法がインプラント治療です。これは、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、それを土台として上に義歯を装着する治療法です。

チタン素材を使う理由

チタンは極めて珍しい特徴を持つ金属です。チタンは体との親和性が高く、骨に埋め込んでも異物としては認識されません。それだけでなく、チタンの周囲にできる新たな骨がチタンの表面に入り込んで、骨と強く一体化するという性質を持っています。そのため、インプラントに使われるチタンは、骨と結合しやすいように表面が適度に粗くなっています。

インプラントの構造について

インプラントは主に、人工歯根とアパットメント、義歯の3つのパーツからできています。人工歯根は、骨と結合するチタン製のネジで、義歯と人工歯根をつなぐパーツをアパットメントと呼びます。また、アパットメントを使わず、人工歯根と義歯をネジやセメントで直接固定するタイプもあります。

抜けた歯を補う他の治療法は?

・ブリッジ

抜けた歯の左右の歯を使って、金属などを被せて橋渡しをする治療のことをブリッジと呼びます。ブリッジを付ける際には、取り付ける歯の形を整える必要があるので、健康な歯を削らなければならないというデメリットがあります。また、左右の歯に負担がかかり、ブリッジと歯の隙間に汚れがたまりやすいので、ブリッジをかける隣の歯を損なうリスクもあります。

・入れ歯

入れ歯は、義歯に金属などの留め具を付けた構造になっていて、その留め具を左右の歯に引っ掛けて装着するものです。ブリッジと違い、引っ掛ける歯を削る必要がない点はメリットですが、金属の留め具が目立ってしまうというデメリットがあります。さらに、ブリッジほどではありませんが、左右の歯には負担がかかります。また、取り外しが可能ですが、ガタついたりしやすく、違和感が生じやすいでしょう。

費用の目安

インプラント治療の1本あたりの総額の目安は、平均するとおよそ30~40万円程度となります。医院ごとに費用は異なりますので、カウンセリングの際にしっかりと聞いておきましょう。費用が必要な項目は下記のような内容となっています。

・精密検査・診断料
・インプラントの手術料
・人工歯の費用
・メンテナンス料

2章 インプラント治療のメリットとデメリット

抜けた歯を補う治療法としてとても優れたものです。しかし、さまざまなメリットがある一方で、もちろんデメリットもあります。

インプラントのメリット

・違和感なく噛んだり話したりできる

顎の骨としっかり結合した人工歯根で支えるので、自然歯に極めて近い噛み心地で、硬い食べ物でもしっかり噛むことができます。また、入れ歯と違ってズレたりしないので、発音しにくくなるということもありません。

・隣の歯を損なうリスクが少ない

前述した通り、ブリッジや入れ歯と違うメリットの一つが、左右の歯に負担をかからないという点です。ブリッジでは、装置と歯の隙間に汚れがたまり、健康な歯を損なうリスクがありますし、入れ歯は、ガタつくと噛むたびに左右の歯を揺することになります。

・耐久性が高い

インプラント治療をして10年経過の症例で約90%以上が問題なく機能しているとスウェーデンのアデル教授(1990年)が報告しています。きちんとしたセルフケアと、歯医者さんでの定期的なクリーニングで、10年という寿命の目安よりもずっと長持ちさせることも可能です。

・長期保証が付くケースもある

インプラントメーカーやインプラント治療を行う歯医者さんによっては、10年保証などといった長期保証が付くものもあります。破損の仕方によって、保証でカバーできる範囲が規定されていますが、長期保証はインプラントの耐久性が高いからこそ可能なものです。

インプラントのデメリット

・外科手術が必要

インプラント治療は外科的な施術が必要となります。歯医者さんによっては、歯肉を切開せずにインプラントを埋め込む方法を行っているところもあります。

・骨と結合するのに時間がかかる

インプラントの手術自体はすぐに終わるものですが、チタン製の人工歯根と顎の骨がしっかりと結合するのに、およそ3~6か月程度の時間がかかります。その間は仮歯を装着して、結合が完了するのを待つことになります。

・骨を増やす処置が必要な場合がある

重度の歯周病では、歯を支える歯槽骨が痩せてしまうことがあります。また、歯が抜けた状態を長く放置していた場合にも、その下の骨が痩せていきます。こうした場合、人工歯根を埋め込むための骨の厚みが不十分になるため、インプラント治療ができないこともあります。しかし、近ごろでは痩せてしまった骨を増やす治療も可能です。

・体の疾患の状態によっては治療できない

糖尿病や腎臓、肝臓の機能障害、心臓疾患、循環器系疾患などがある場合、その状態や服用している薬などによっては、インプラント治療ができない場合もあります。また、骨粗鬆症で骨の密度が低い場合なども、人工歯根と骨が結合しにくかったり、強度を保てない可能性があるため、治療できない場合があります。

・しっかりとしたメンテナンスが必要

インプラントは耐久性が高いといっても、自然歯を超えるものではありません。実は、自然歯以上に歯周病には弱く、インプラント周囲炎にかかると、せっかく骨と結合したインプラントが抜け落ちてしまうということもあるのです。セルフケアはもとより、定期的に歯医者さんでチェックし、クリーニングを行うなど、本来の自分の歯以上に入念なケアが必要となります。

3章 インプラント治療を受けたい時の歯科口腔外科の選び方

近ごろでは、インプラント治療は珍しいものではなくなり、インプラント治療を扱う歯医者さんは増えてきています。ただし、歯医者さんによって、その技術力や治療の精度に差があるのも事実です。ここでは、インプラント治療を行う歯科医院の選び方のコツについて、ご紹介します。

歯科医療に広く精通していること

インプラント治療には幅広い知識や豊富な経験が必要となります。従って、様々な歯科分野に精通した医師が在籍していることが、歯医者さん選びの一つのポイントとなります。また近年では、インプラントセンターといわれる、インプラント治療に特化した歯医者さんも増えてきました。また、高い技術力や経験豊富なスタッフを多数揃えている歯医者さんもあります。

設備が充実していること

医師の腕前や経験はもちろん重要ですが、設備面も見逃せないポイントです。的確な診断と精密な治療を行う上で、大きな役割を果たす機器もありますし、正確な手術を行うために欠かせない機器もあります。

・独立した手術室

独立した手術室のない歯医者さんでも手術は可能です。しかし、こうした手術室を完備しているところは、幅広い外科手術にも対応でき、信頼できる歯医者さんである目安の一つとなります。

・歯科用CT

歯科用CTとは、口内を3次元的に把握できるレントゲン装置です。歯の位置関係や骨の厚み、神経組織の位置などを正確に把握することができ、インプラント治療においては、的確な診断と治療精度を格段に高めることができる機器となります。

・生体モニター

特に、内臓疾患のある方で、手術中の体の状態をリアルタイムで把握するために、欠かせない装置が生体モニターです。生体モニターは、心拍数、血圧などを、逐一チェックすることができるので、より安定した手術が可能となります。

・高い滅菌基準を満たす

インプラント手術は、歯肉の切開や顎の骨への人工歯根の埋め込みなど、一般的な外科手術と同じような施術を行うものです。独立した手術室があることはもとより、感染症対策にも十分配慮した、高い滅菌体制が整っていることも、チェックしておくべきポイントです。

新しい技術を取り入れていること

かつては、歯周病などで顎の骨が痩せている場合、インプラントを埋め込むスペースがないため、治療自体ができませんでした。しかし近年では、骨を増量するためのさまざまな方法も広まってきています。こうした新しい技術を積極的に取り入れている歯医者さんは、治療の可能性を広げてくれるだけでなく、さまざまなケースに幅広く対応できる経験も豊富だといえるでしょう。

4章 インプラント治療の流れ

1. 精密検査

残っている歯が、現在どのような状態であるのかをチェックします。歯周病の有無やその進行状況、噛み合わせの状態、内臓疾患などのカウンセリングなど、インプラント治療を行うために必要な基本情報を収集します。

2. 歯科用CTで骨の状態をチェック

インプラント治療の大前提となるのは、埋め込む部位の骨の厚みが十分にあることです。また、隣接する歯や顎の骨、神経組織の位置関係を精密に把握することで、的確な治療計画を立てることが可能となります。歯科用CTを用いて、口内の組織を3次元的に撮影し、こうした情報を収集します。

3. 人工歯根を埋め込むポジションを決める

歯科用CTなどの検査結果を元に、インプラントを埋め込む位置や角度をシミュレーションします。骨が痩せている場合には、どのような箇所に骨を増量すべきかを検討します。

4. インプラントの埋め込み手術

歯肉を切開して顎の骨にインプラントを埋め込みます。ほとんどのケースでは局所麻酔で対応可能です。歯医者さんによっては、システムを用いたシミュレーションで、インプラントを埋め込む箇所をガイドするマウスピースをあらかじめ製作することで、歯肉を切開することなくインプラントを埋め込める方法を採用しているところもあります。

5. 骨と結合するのを待つ

治療後は人工歯根のチタン素材と顎の骨が結合するのを待つ必要があります。個人差はありますが、およそ3~6か月程度の間経過を見ながら、しっかりと結合するのを待ちます。

6. 人工歯根に義歯を装着

顎の骨と人工歯根がしっかりと結合したことを確認した後、人工歯根の上に、セラミック製の義歯などを装着します。仮歯を外し完成した義歯を装着したら、インプラント治療は完了となります。近年、インプラント治療は急速に拡大し、扱っている歯医者さんも増えてきました。しかし、外科手術を伴うため、その経験と技術力には差があるというのが現状です。慎重に信頼できる執刀医のいる歯科を選ぶことが大切です。セルフケアや歯医者さんでの定期的なチェックを怠らなければ、第2の永久歯といわれるほど耐久性の高いものとなります。抜けた歯を補う治療法の選択肢の一つとして、ぜひ検討してみましょう。

 

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監修日:2017年07月10日
鄭尚賢 先生監修
経歴

歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学