顎関節症の初期症状、顎関節に炎症が起きた場合の対処法は?

顎関節症の初期症状、顎関節に炎症が起きた場合の対処法は?

口を開け閉めする際に「カクカク」したり、口の開け閉めに困難になるといった症状が出る顎関節症。特に発病初期における急性症状として、炎症による痛みが現れるケースもあります。こうした急性症状をともなう顎関節の異常を、顎関節症と区別して顎関節炎と呼ぶこともあります。顎関節症で炎症が起きてしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか?痛みや腫れへの直接的なケアから長期的な治療まで、顎関節症への対応についてご紹介しましょう。

 

この記事の目次

顎関節症の炎症ってどんなもの?

1-1 外傷や無理な動きで顎関節に炎症が起こる

顎関節症とは、頭蓋骨と下顎骨の間にある顎関節に異常が起こる病気です。組織に変形やずれが生じたり、周辺の筋肉や神経に炎症が生じます。炎症の原因としては、打撲など外的要因によるものや、歯ぎしりなどで強い力がかかることなどが挙げられます。また、ストレスや姿勢の悪さなどの生活習慣要因から、強く噛みしめる癖や片方だけで噛む癖が習慣化してしまい、その影響で顎関節に負担がかかり、炎症を生じる場合もあります。

 

1-2 顎関節の炎症は、腫れや赤みはあまりない

人体の部分に炎症が起こると

 

1)発赤(赤み)

2)腫脹(腫れ)

3)疼痛(痛み)

4)機能低下(患部で本来の働きができないこと)

 

などが現れます。しかし、顎関節に起こる炎症は、赤みや腫れが生じることが少ないことが特徴です。

 

1-3 顎関節の炎症では、痛みと機能低下が中心

赤みや腫れが現れづらいですが、炎症による痛みと機能低下は見受けられます。痛みでは口の開閉にともなって痛みが発生するケースと、常に顎周辺に疼痛を感じるケースがあります。また、機能低下では、炎症により患部の動きが悪くなったり、痛みにより口の開け閉めが難しくなる場合があります。

 

1-4 顎関節の炎症から慢性顎関節症への移行も

顎関節の炎症は、打撲などの外傷や歯ぎしりなどにより、顎関節に衝撃や負荷が加わることで起こる急性症状です。しかし、こうした急性症状による炎症を放置することは、慢性的な顎関節症へと移行してしまう原因になりかねません。急性期に正しく対処して、慢性期への移行を防ぐことが重要です。

 

顎関節の炎症が慢性顎関節症に移行?

2-1 痛みや機能低下が続くなら、慢性化を疑って

顎関節の炎症は、外傷などが原因の急性症状であれば、1〜2週間ほど安静にしておけば痛みも治まり寛解に向かうことが多いです。しかし、適切に対処しているのに痛みや機能低下が続くケースもあり、その場合は慢性の顎関節症に移行している可能性があります。

 

2-2 痛みがなくても顎関節症の可能性も

顎関節症では痛みが発生しないケースもあります。また、炎症による痛みが治ったあとも、組織の変形や顎関節の不具合が継続しているケースも少なくありません。痛みがなくなったからと軽く考えず、口の開け閉めに異常はないか、違和感やおかしな音を感じることがないかなどをチェックし、異常があるようなら早目に病院を受診しましょう。

 

2-3 顎関節症はさまざまな要因で起こる

顎関節症の慢性化の主な原因は、外傷などで起きた炎症です。しかし、顎関節症の原因はそれだけに限りません。噛み合わせの不具合や顎のずれ、歯ぎしりやストレス、全身の歪みなど、さまざまな原因によって起こります。顎関節症を治すには、その根元にある原因を突き止め、根本的な治療を受けることも大切となります。

 

自宅でできる顎関節症の炎症への対処法

3-1 痛みを抑える鎮痛薬と抗炎症薬を服用

顎関節症の炎症への対処で重要なことは、痛みをコントロールし症状の進行を抑えることです。そのためには、鎮痛薬や抗炎症薬を服用することが有効とされます。市販薬での対応も可能ですが、できれば歯医者さんに相談して適切な薬を処方してもらいましょう。

 

3-2 炎症部分を氷などで冷やし炎症の拡大を防ぐ

顎関節症では、急性期と慢性期で対応が異なります。外傷などで炎症が起こったときは、まずは患部を冷やして痛みを緩和し、炎症の拡大を防ぐことが重要です。氷のうや、ビニール袋に入れた氷、保冷剤などをタオルに包んで患部にあて、冷やしましょう。ただし、長時間冷やし続けることは関節の筋収縮の原因となるので避けてください。10分を目安に冷やしたら、口を開閉して顎関節を動かすことを、1日に数回繰り返しましょう。

 

3-3 痛みが取れたら徐々に顎の運動を

薬や冷却により急性の痛みが緩和されてきたら、顎関節を動かす運動を加えます。ここで無理な動きを加えると、症状を慢性化させてしまうことなるので注意してください。無理に動かすことは絶対に避け、可動域は少しずつ広げていくことを意識しましょう。

 

3-4 固いものやよく噛む必要がある食材は避ける

顎関節に炎症があるときは、食事の内容に気をつけ患部に負担をかけすぎないようにします。特に、固いものやよく噛む必要がある食材は避けるようにしてください。スルメやフランスパンなど、噛む必要があるものをどうしても食べたい場合は、細かく切って口に入れるなど、食べ方に工夫しましょう。

 

3-5 痛みが軽減したら、優しくマッサージ

ひどい痛みがあるときに患部を触ってはいけませんが、急性期を過ぎ痛みが軽減してきたら、マッサージを取り入れることをおすすめします。頬の上から顎関節部に指先をあて、円を描くように優しくもみほぐしてみてください。こうしたマッサージは顎関節を柔軟に保つことに役立ち、症状の慢性化を防ぎ、顎関節症を予防することにもつながります。ただし、力を入れすぎないように注意して、強く揉むのではなく、優しく柔らかいタッチを意識して行いましょう。

 

歯医者さんで行う顎関節症の炎症への対処法

4-1 症状が続くなら歯医者さんに相談を

口を十分に開けることができない、開閉にともない異音や違和感がある、痛みがあるなど、顎関節症の症状が続くようなら、まずは原因となる外傷などがあるかどうか振り返ってみましょう。外傷による一時的な痛みであれば様子を見て構いませんが、思い当たる外傷がない場合は、歯並びや生活習慣などトータルに考慮しながら原因を探ることをおすすめします。まずはかかりつけの歯医者さんに相談してみるとよいでしょう。

 

4-2 顎関節症治療はスプリント治療が一般的

顎関節所の治療で最も一般的なのは、スプリントと呼ばれる樹脂製のマウスピースを装着する治療法です。顎関節への負担軽減に働くスプリントを、上または下のいずれかの歯列に装着します。基本的に夜寝ている間のみ使用しますが、歯をくいしばる癖がある人などは、起きている間も装着をすすめられることがあります。

 

4-3 顎関節症に理学療法や行動療法の適用も

顎関節症の治療では、顎の関節を柔軟にして動きをスムーズにすることが大切です。そのため、筋肉トレーニングやマッサージなどの理学療法をすすめられることもあります。また、食いしばりや歯ぎしり、姿勢など、生活習慣が原因となる顎関節症では、心理的な要因が治療の妨げとなっているケースがあります。その場合は心療内科などと連携しての治療が必要になることもあり、状況に応じて行動療法が施されるケースもあります。

 

4-4 外科的処置が必要になるケースも

顎関節症の治療では、多くの場合スプリント治療やマッサージなどで対応します。ごくまれに、顎関節の変形した関節円板を除去するなどの外科的処置が必要となるケースもあります。手術は患部を大きく切開する必要がない関節鏡手術と、切開して行う手術があり、いずれの場合も設備の整った歯科口腔外科での対応が望ましいです。

 顎関節に打撲や歯ぎしり、食いしばりなどの強い衝撃が加わることで発生する炎症は、顎関節症の急性症状です。正しく対処すれば1〜2週間で寛解させることが可能ですが、放置してしまうと慢性の顎関節症へと移行してしまうこともあります。炎症への正しい対応を知り、適切に処置する心がけが大切です。気がかりな症状がある場合は、早めに歯医者さんに相談しましょう。

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監修日:2017年06月25日
鄭尚賢 先生監修
経歴

歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学