矯正治療中に顎関節症になったら?治療継続可能?

矯正治療中に顎関節症になったら?治療継続可能?

以前は、顎関節症の患者さんには矯正治療は難しいとされ、矯正治療中に顎関節症を発症した場合は、その都度矯正治療を中断し症状が緩和するまで待つという対処がされてきました。

しかし現在では、矯正治療で噛み合わせを整えることで、顎関節症の症状を抑えたり、予防できる可能性もあることから、顎関節症の症状があっても矯正治療を継続することもあります。ここでは、顎関節症と矯正治療の関係について解説していきます。

 

この記事の目次

矯正治療で顎関節症になる?

1-1 矯正治療と顎関節症に因果関係はない

従来は、「顎関節症の患者に矯正治療は難しい」「矯正治療により顎関節症を完治させられる」など、顎関節症と矯正治療の間には、深い関わりが示唆されてきましました。しかし、現在の研究では、矯正治療と顎関節症の発症には、直接的な関わりがないことがわかっています。

そのため、矯正治療が原因で顎関節症になったり、矯正治療ですべての顎関節症を治すことができるということはないと考えられています。

 

1-2 矯正治療の適齢期に顎関節症が起こりやすい

直接な因果関係がないとはいえ、矯正治療中の患者に、顎関節症が発症するケースはよくあります。顎関節症の発症は、10代半ばから増え始めて20〜30代にピークを迎え、比較的男性より女性に多い疾患となっています。この時期、見た目を気にして矯正治療を受ける女性はとても多く、そのため矯正治療中に顎関節症の発症が多いのではないかと考えられています。

 

1-3 まれに矯正治療のストレスで発症することも

顎関節症と矯正治療の間に直接な関連はないことが示されてはいますが、矯正治療が顎関節症の発症に影響してくる場合もあります。

顎関節症は噛み合わせの悪さや噛み癖、歯ぎしりや外傷などの要因が複雑に絡み合って発症します。矯正治療中は多少の痛みや不快感、不便などがあり、通常よりもストレスを感じる機会が増えてしまいがちです。こうした矯正治療のストレスによって起こる歯ぎしりなどが引き金となり、顎関節症になってしまうとされています。

 

1-4 矯正治療後に顎関節症が発症しても無関係

矯正治療後に顎関節症を発症し、「矯正治療のせいでは」と疑念を抱く方もいらっしゃいますが、正しい矯正治療が行われていれば、矯正治療が顎関節症の直接原因となることは少ないと考えられています。矯正治療後の顎関節症発症は、あくまで偶然のタイミングによるものである可能性が高いです。

 

1-5 誤った矯正治療でまれに顎関節症になる

顎関節症と矯正治療に直接の因果関係はありません。しかし、これはあくまで「正しい」矯正治療を受けた場合に限られます。誤った矯正治療により、噛み合わせに悪い影響を受けてしまうと、それをきっかけとして顎関節症を発症することが、まれにあります。矯正治療が正しいものであり、歯並びと噛み合わせを正常に整えることができていれば、問題が起こる可能性は低いでしょう。

 

矯正治療中に顎関節症が発症したら?

2-1 顎関節症が起きても矯正治療は継続可能

矯正治療中に顎関節症を発症した場合は、従来では矯正治療を中断するのが一般的でした。しかし、現在の考え方では顎関節症があっても矯正治療の継続できるという考えが広まりつつあります。強い痛みがあるなど顎関節症の症状がよほど重篤でない限り、矯正治療を続けることが可能です。

 

2-2 痛みがないなら経過観察となることが多い

顎関節症の症状には、口の開け閉めにともなって異音が発生する関節雑音と、口の開閉に困難が生じる開口障害、顎関節などの痛みがあります。症状が関節雑音のみで日常生活に不自由がなければ、経過観察となることも多く、矯正治療中も痛みや開口障害がない限りは、顎関節症と診断されても経過観察のみの対応となる場合があります。

 

2-3 痛みや開口障害があれば矯正装置の一時撤去も

日常生活で大きな問題とはならない関節雑音に対し、痛みや開口障害は日常生活に困難をもたらします。矯正中の顎関節症でこうした症状みられる場合は、矯正装置を一時撤去したり、矯正力を弱めるなどの対応をとることになります。顎関節症は患部の安静で良好な経過が得られることも多いので、矯正治療を一時休んだり弱めたりすることで症状が改善すれば、治療が再開されます。

 

2-4 痛み止めの処方や温熱療法、理学療法も

矯正治療中に顎関節症を発症した場合、矯正治療は継続しながらも、痛みや不快感などを軽減させるための処置をとるケースもあります。方法として、鎮痛剤の処方、患部を温めたり冷やしたりといった温熱療法、マッサージで関節の可動を補助する理学療法といったものが挙げられます。

 

2-5 症状が長引く場合は本格的な顎関節症治療を

矯正治療中の顎関節症で強い症状が長引くときは、本格的な顎関節治療を行う場合もあります。顎関節症の治療では、「スプリント治療」が一般的です。夜間に「スプリント」と呼ばれるマウスピースを装着して顎関節への負担を減らし、顎関節の状態を安定させます。ごくまれなケースになりますが、外科的処置を行う場合もあります。

 

顎関節症と矯正治療、ここが気になる

3-1 顎関節症解消のために矯正は有効?

顎関節症を治すために、歯医者さんで矯正治療をすすめられることもあるでしょうが、矯正治療で歯並びや噛み合わせを整えたからといって、顎関節症が治るとは言い切れません。顎関節症の治療にあたっては、その原因を詳しく調査し、それに合わせて適切な処置を行う必要があります。もちろん、噛み合わせや歯並びの悪さが起因する顎関節症の場合は、矯正治療によって症状を緩和することが可能です。ただし、顎の骨に関わる顎関節症を歯列矯正で治療するには、知識と経験が豊富な医師に相談する必要があるでしょう。

 

3-2 顎関節症があると矯正治療を断られる?

以前は顎関節症患者には矯正治療を施すべきではないというのが、歯科医療現場の通例でした。しかし、現在では顎関節症があっても、矯正治療を受けることができるという考え方が広まってきています。しかし、口腔内の状況やドクターの考え方によって判断が変わってくるので、まずは信頼できる歯医者さんに相談してみましょう。

 

3-3 矯正治療で顎関節症が悪化する?

「矯正治療で顎関節症になった」あるいは「矯正治療で顎関節症が悪化した」と感じる方が、一定数いることは報告されていますが、一般的には患者さんの状態に適した矯正治療が行われていれば、顎関節症の悪化と矯正治療は、直接的には関連しないとされています。偶然発症の時期が矯正治療期間と重なった可能性が高いと考えられます、不安がある場合は再度検査をしてもらいましょう。

 顎関節症は、口の開閉にともなって関節が鳴ったり、痛みが出たり、口の開閉自体が難しくなる症状が現れます。矯正治療中に顎関節症を発症した場合「矯正治療をやめるべき」と考えられてきましたが、これまでの調査・研究の結果では顎関節症の発症と矯正治療の間には、直接的な関連は認められていません。

矯正治療中に顎関節症が起きたときでも、症状の変化と口腔内状況を検討しながら矯正治療を継続できるように、信頼できる歯科口腔外科分野に詳しい歯医者さんを見つけましょう。

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監修日:2017年06月25日
鄭尚賢 先生監修
経歴

歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学