顎関節症でも、症状が軽度の場合は、特に生活に大きな支障がないので、気にしない方もいるでしょう。
しかし、軽度であっても、顎関節に何らかのズレや歪みがあるもので、長年放置しておくと、その歪みが大きくなっていく可能性もあります。
この記事では、顎関節症の主な症状や自分でできる簡単なチェック法、顎関節症の治療法などについて、詳しくご紹介いたします。
顎関節症でも、症状が軽度の場合は、特に生活に大きな支障がないので、気にしない方もいるでしょう。
しかし、軽度であっても、顎関節に何らかのズレや歪みがあるもので、長年放置しておくと、その歪みが大きくなっていく可能性もあります。
この記事では、顎関節症の主な症状や自分でできる簡単なチェック法、顎関節症の治療法などについて、詳しくご紹介いたします。
この記事の目次
顎周辺にはさまざまな疾患がありますが、特に、顎を動かしたときに、耳の下あたりの顎関節が痛むようなら、顎関節症の疑いもあります。顎関節症の症状はさまざまで、顎を動かすと音を感じたり、口が開きにくかったりという、顎そのものの違和感などの異常が出る場合もあります。
顎関節症は、特に若い女性を中心に急増している疾患です。顎に違和感があって自覚している人もいれば、頭痛や肩こりといった症状に現れる人もいます。
具体的には、顎関節のクッションとなる関節円板がズレていたり、咀嚼筋(顎を開閉する筋肉)が絶えず緊張していたり、左右の筋肉を均等に使えず歪んでいるといったケースがあります。
・顎に異音を感じる
顎を動かすときにカクカク、カックンカックンといった音がする場合には、関節円板がズレている可能性があります。また、ザラザラ、シャリシャリといった擦れる音がする場合には、顎関節が接触して擦れている可能性があります。
・口を大きく開けられない
顎関節症の症状には、異音の他に、口を大きく開けられないことも上げられます。大きくあくびをするような時以外、あまり口を大きく開けることは少ないと思いますが、あくびが出たときにどこか開きにくさを感じたり、思い切って口を開けてみると、意外なほど開かなかったりすることがあります。
・左右の開きにズレがある
左右どちらかの顎関節の関節円板がズレているような場合には、口を開けるときに、どちらか片側の顎が遅れて開くような場合もあります。左右同時に開くのではなく、左右に時間差があるので、口を開けるときに口元が斜めに歪むように見えます。
・顎の筋肉が固い
顎の筋肉が緊張状態にあることが多いと、肩こりと同様に、筋肉がこってしまうことがあります。触ってみると、しこりのように固まった感じがするものです。
・顎を動かすと痛む
関節円板がズレていて、顎を開け閉めする際に、どこか引っ掛かるような感じがあったり、痛みを感じるケースもあります。顎の痛みには、関節リウマチや顎の骨の嚢胞、親知らず周囲炎など、さまざまな原因が考えられます。
顎関節症では、耳の下の顎関節付近が痛くなり、顎を動かした時だけに感じるものです。また、左右どちらか一方だけが痛いことが多いものです。
1. 口の開き具合のチェック
口を大きく開けたときに、薬指から人差し指までの3本指が、縦に入ればOKです。2本以下であれば、顎関節症の疑いがあります。
2. 異音がないかチェック
口を大きく開け閉めした時に、カクカク、コッキンコッキン、ミシミシ、ザラザラ、シャリシャリといった異音を感じるなら、顎関節症の疑いがあります。
カクカク、コッキンコッキンという音は、関節円板がズレて引っかかりがあるときの音です。また、ミシミシ、ザラザラ、シャリシャリという音は顎関節自体が擦れている音になります。
3. 痛みのチェック
口を動かしていないときでも顎が痛い場合には、他の原因が考えられますが、顎関節症では特に顎を動かしたときに、痛みを感じるものです。関節自体が痛む場合と、咀嚼筋が痛む場合がありますが、顎関節症では主に、咀嚼筋が痛むことが多いものです。
4. 真っ直ぐ開くかチェック
口を開けるときに、左右の顎が同時に開くかどうかチェックしてみましょう。左右どちらかの関節に引っかかりが場合には、開きに左右差が出るので、口が真っ直ぐ開かないこともあります。
顎に痛みがある場合、どの科にかかったら良いか分からないケースもあります。関節が痛いのか、顎の骨が痛いのか、同じ顎といっても、痛む部位や痛み方にはいろいろあり、さまざまな疾患が考えられるからです。
こんなときには、まず歯科口腔外科に診てもらいましょう。歯科口腔外科では、口内や口周辺、顎、頬、顔面といった口の周辺の疾患を、幅広く扱っているからです。
・スプリント療法
これは、マウスピース療法とも言われている方法です。強い噛み締めや歯ぎしりといった癖がある場合、顎の筋肉がいつも緊張状態にあるといえます。マウスピースを付けることで、歯と歯の強い接触を和らげることができます。
こうした癖を治さない限り、根本的な治療とはなりませんが、現状をこれ以上悪化させない手段として、一般的に用いられる方法です。
・運動療法
運動療法とは、定められた顎の運動を行うことによって、顎の筋肉の歪みや関節円板のズレを改善する方法です。いわば、顎関節の動きを回復するストレッチといえます。顎関節症は、軽度の症状でも放置しておくと、悪化していくものです。
それは、顎が歪んだなりの使い方をして続けてからです。運動療法によって、顎本来の正しい動きに戻していくことが可能です。
・ホットパック
主に、長期間放置して、慢性的な顎関節症となっている場合に用いられる方法です。患部を温めることで、筋肉の緊張を和らげ、血流を改善し、顎の不具合を改善していきます。ただし、急性の顎関節症では、顎関節に炎症があるケースもあるので、患部を温める治療法は適切ではありません。
・認知行動療法
歯ぎしりや噛み締めといった癖がある場合には、顎の筋肉に強い負担をかけることになるので、その癖を取り除くことが根本的な治療法となります。認知行動療法とは、無意識に行ってしまう癖を、自覚させる治療法です。
たとえば、デスク回りなど、普段目につくさまざまなところに目印を貼っておき、それを見たら、歯を食いしばっていないかをチェックするという方法です。癖を自覚することで、癖を意識的に改めることができます。
・マニピュレーション法
手技で顎関節を適切に動かすことによって、顎関節の歪みを治したり、ズレてしまった関節円板を、正常な位置に戻す方法がマニピュレーション法です。
・関節腔の洗浄
関節腔の洗浄は、おもに、歯科口腔外科で扱われる外科的な治療法となります。関節腔とは、関節の潤滑剤となる関節液で満たされている部分で、関節液にたまった老廃物を取り除く手法です。外科的な治療と言っても、注射針で生理食塩水を注入して、関節腔の中を洗うというものです。
また、関節腔に圧力をかけることで、関節腔を広げて、ズレたり引っかかっている関節円板を、元の位置に戻すこことも可能です。
・関節鏡視下手術
上記のような手法でも、改善できない場合には、外科手術が必要となることもあります。関節鏡視下手術は、関節鏡という、関節のための内視鏡を用いて、関節内部を見ながら手術を行うもので、主に顎関節の癒着や、変形した関節円板を取り除く手術となります。
歯科口腔外科で扱う顎関節の疾患には、顎関節症の他にも、顎関節脱臼や顎関節強直症というものがあります。それぞれ、ご説明しましょう。
顎関節脱臼とは、簡単に言うと、顎が外れて戻らない状態です。顎関節は口を開ける動きだけではなく、前後左右にスライドするような動きもできることが特徴です。もちろん、可動できる範囲には限度がありますが、この限度を超えてしまうと、顎が戻らなくなることがあります。
特に大きなあくびをした時などに、口が閉じなくなってしまうこともあります。このような場合には、自分で関節を戻すようなことは避け、歯科口腔外科で治してもらうのが懸命です。
顎関節強直症とは、顎の関節が固まって動かなくなってしまう疾患です。顎関節の内部がくっついてしまったり、靭帯が石灰化(カルシウムが沈着すること)などによって、顎が動かせなくなります。関節リウマチが原因となったり、感染症や外傷などによって、引き起こされるもので、外科手術が必要となります。顎を開け閉めするときに、強い痛みは出ないまでも、口を大きく開けられなかったり、カクカク、シャリシャリという異音がする場合には、顎関節症の疑いがあります。
軽度の場合でも、放置しておくと、重くなったり慢性化する可能性もあるので、早めの対処が必要です。まずは、歯科口腔外科で顎関節症かどうか、診てもらいましょう。
歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学