治療開始前の口内環境はとても大事
1-1 治療を受けられる条件とは
インプラントは、どんな人でも受けられるわけではありません。ねじを埋入に耐えられる歯肉(歯槽骨)の強度が必要です。歯肉の強度によって、すぐに手術を受けられる人、歯周病や歯肉炎・骨の不足などのケアをしてから受けられる人、完全にできない人(放射線治療中、糖尿病やリウマチなどで骨粗鬆症の薬を服用しているなど)に分けられます。なかでも、ケアをしてから受けられる人については、現状の口内環境を徹底的に改善していくことが重要です。
1-2 歯周病は絶対にNG!
歯周病は細菌の感染により引き起こされる炎症性疾患です。歯と歯茎の境目(歯肉溝)に汚れ(歯垢)がたまるとそこに細菌が繁殖し、歯肉が炎症を起こして、赤くなったり腫れたりします。進行すると歯槽骨が溶けて歯がぐらつき、最後は抜歯をしなければならない事態をまねくこともあります。歯周病は天然歯でも人工歯でもお構いなしに歯槽骨を溶かします。インプラントを埋め込むための土台の強度をあげるためにも、治療の前に完治を目指しましょう。
1-3 歯茎が健康だとインプラントも長持ち!?
歯茎には硬い付着歯肉と柔らかい遊離歯肉があります。付着歯肉の有無でインプラントの寿命に差が出るという証明はされていませんが、インプラントをケアするには付着歯肉があった方が優位だと考えられています。歯周病が付着歯肉を痩せさせてしまわないように、毎日のブラッシングを丁寧にするなど口内を常に清潔に保つようにしましょう。
まだまだあります!インプラント治療前のケア
2-1 歯のない状態で長期間放置している
歯のない状態のまま長期間放置すると、他の歯が倒れたりずれたりして嚙み合わせや歯並びが悪くなります。そのままでもインプラントは埋入できないことはありませんが、状態が悪いまま埋め込むことになるのでおすすめできません。まずは、噛み合わせと歯列矯正などで歯並びを修正しましょう。
2-2 歯ぎしりのある人は噛み合わせを要確認!
歯ぎしりは、自分の体重以上の力が歯にかかっているといわれています。それが人工歯のインプラントに直接かかるとトラブルの原因になりかねません。近年のインプラントは性能の向上が著しく、インプラント自体がダメになる可能性は低いですが、人工歯が削れる「チッピング」と呼ばれる現象が起こるケースが確認されています。歯ぎしりのある方は、マウスピースの装着を検討するとよいでしょう。
2-3 歯周病にならない、させない気持ちを持つ
インプラントは治療後にメンテナンスを怠ると、歯周病によく似た症状が起こる「インプラント周囲炎」を発症することがあります。インプラント周囲炎が進行すると、最悪の場合インプラントが脱落してしまうこともあります。口の中の汚れ(歯石やプラーク)が大きな原因であり、これを避けるためには日ごろのお手入れが重要です。食後のブラッシングやデンタルリンスを使って常に清潔を保つように心がけ、定期的に歯医者さんでチェックしてもらうようにしましょう。
インプラントできない!?あきらめないで
3-1 強い歯茎が蘇る、驚きの最先端治療がある
インプラント治療を検討し歯医者さんを受診したときに、歯茎が弱かったり、顎の骨が足りないなどの理由からインプラントができないと診断された方もいるでしょう。どこの歯医者さんでも行っているわけではありませんが、歯茎を再生させる治療法で対応できる場合があります。
3-2 歯肉再生(歯肉結合組織移植)
歯周病が原因による歯茎下がりや抜歯後に歯茎がくぼんだ部分を、もとの状態に近づける再生治療のことです。上顎の口腔内から組織を採取して歯肉が痩せて不足している部分に移植し、歯肉を増やす方法です。しっかりとした硬い歯茎(角化歯肉)をつくることで、インプラントに適した骨強度の基礎を再生することができます。
3-3 骨造成(GBR骨誘導再生治療)
埋め込む土台となる骨(歯槽骨)の厚さが薄い場合、そのままインプラントをすると骨が割れたり、ぐらついたりすることがあります。それを避けるため、インプラントに耐えられる厚さにまで骨を育てるのがGBR骨誘導再生治療です。簡単に言うと、歯肉の中にある骨の薄い部分や骨がない部分に骨再生誘導薬剤を入れ、骨を再生させていく治療です。6か月~1年ほど経過して、骨が十分な厚さにな再生すれば、インプラント治療を再開できます。
3-4 サイナスリフト(上顎洞挙上術)
上あごの骨量が足りず薄い状態のため、土台として使えないときに行われる治療です。鼻の横にある副鼻腔の底の厚さが薄いと、インプラントを入れるときに上顎洞の底を突き破ってしまう場合があります。そのリスクを回避するために、上顎洞の底に骨の代わりとなる自分の骨や人工骨を流しこみ、インプラントを埋入するのに必要な骨の厚さを確保します。
インプラントは手術。施設選びも重要です
4-1 いつもの医院で治療。本当にいいのですか?
インプラント治療は比較的新しい治療法のため、施設選びは慎重にすることをおすすめします。料金が安価だから、いつもの先生だからという理由で歯科医院を決めることはせず、以下の内容を含んでいるかをしっかりと確認しましょう。チェックポイントは、次の通りです。
4-2 歯科用CT画像で詳しく説明してくれる
通常のレントゲン写真と違い、歯科用CTは3Dで解析できるため、顎の内部構造(骨の高さや厚み、神経の位置など)が細かく把握でき、精密で正確な診断が行えます。歯科用CT画像をもとにしっかりとした治療計画を立て、インフォームドコンセントをきちんとしてもらえる歯医者さんは信頼できるでしょう。
4-3 インプラント専用の手術室があるかどうか
高度口腔医療という位置づけのインプラント治療は、切開や抜歯、骨造成、埋入など外科的な処置をします。そのため通常の手術同様、徹底した衛生管理が必要です。一般の歯科治療のスペースとは別に、インプラント専用の手術室がある歯医者さんのほうが、衛生環境の意識が高いといえるでしょう。
4-4 実績が豊富かどうか
症例数やどんな症例の経験があるかについても、医院選びにとって重要な判断材料です。ホームページやパンフレットで調べ、実績数が曖昧だったり、表示していない医院は避けるようにしましょう。
4-5 アフターケアがしっかりしている
インプラント治療は、手術をしたら終わりではありません。アフターメンテナンスを怠ってしまうと、あっという間に歯周病を起こしてしまう可能性があります。そのため定期検診の態勢が整っている医院や長期の保証制度を設けている医院を選ぶようにしましょう。ただし、保証期間や保証範囲は医院によって異なります。よく下調べをして、不明な点がある場合は事前に確認しましょう。
インプラントをしたい!と思っても、口腔内や歯茎の健康状態が悪いと、治療までに時間がかかってしまいます。インプラント治療を検討するうえで大きく関わってくる「歯周病」は、進行するまでほとんど痛みがなく、想像以上に歯茎に悪影響を及ぼしていることがあります。インプラント治療に適した強く硬い歯茎を保つため、毎日のお手入れを怠らないようにしましょう。また、インプラントは豊富な実績がある歯医者さんに治療してもらうことが好ましいです。満足がいくインプラント治療をしてもらうためにも、下調べは十分に行いましょう。
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