薄い骨でも可能なインプラント治療。骨を増やして審美的な歯

薄い骨でも可能なインプラント治療。骨を増やして審美的な歯

「インプラント治療を希望しているけれど、歯科医院で検査をしたら、骨が薄いと言われてしまった」そんなときはインプラントをあきらめ、ブリッジや入れ歯で治療をするしかないのでしょうか?審美性の高いインプラント治療を行うにためには、充分な厚みの骨が必要です。しかし、症例に合わせ骨を増やすための治療を行うことでインプラントの治療が可能になります。骨が薄い方でもインプラント治療が可能になる方法について紹介します。

 

この記事の目次

骨の厚みとインプラント治療

1-1 インプラント治療の概要

インプラント治療は、インプラント体と呼ばれるチタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療法です。口腔内環境、特に顎の骨の状態によってインプラント治療が可能かどうか決まります。
例えば、生まれつき骨が薄い方、歯が抜けたまま放置してしまい骨が吸収されてしまった方、虫歯や歯周病などで骨が溶けてしまった方などは、インプラントができない場合があります。しかし、骨が薄いとインプラントをあきらめないでもすむ方法があります。骨を増やす治療法を行えばインプラントを埋入するのに充分な量まで骨を再生することが可能です。

 

1-2 骨の厚みとインプラントの関係

重度の糖尿病患者や腎臓病などの全身疾患がある方は、血液が固まりにくかったり合併症を引き起こしたりするためインプラントが難しいとされています。

また、全身疾患はなくてもインプラントが困難になるケースがあります。それは骨量が不足している場合です。インプラントは、顎の骨の中に直接チタン製のインプラント体を埋め込み、その上部に人工歯を取り付けます。そのため、骨が薄いとインプラントが十分に安定しないため、グラグラしてしまったり、抜けおちてしまう可能性があります。
また量だけでなく骨の質も大切です。骨粗しょう症のように骨密度が低い場合はインプラントをしっかりと固定することができません。骨の厚み、量ともに十分でなければインプラント治療は成功しません。

 

1-3 骨が薄い時に行う処置

骨が薄いからと言ってインプラント治療をあきらめていませんか?
歯の骨やその周辺組織を増やす治療法があります。
歯周組織とは歯肉や歯根膜、歯槽骨、セメント質の総称です。虫歯や歯周病によって歯周組織が炎症を起こすと歯を支えている顎の骨は吸収されて痩せてしまいます。一度痩せてしまった歯周組織の回復速度は歯肉の回復速度よりも遅く、本来骨があるべきスペースに歯肉が侵入し、歯周組織の回復は難しくなります。

上顎奥歯の骨の高さが足りないときはサイナスリフト法で骨を厚くします。上顎洞と呼ばれる大きな空洞が上顎の上にあるため歯を支えている骨までの高さが足りないことがあります。空洞内のインプラントを埋入する位置に骨充填材や人工骨などを移植し厚みを増やし、インプラントをしっかりと固定できる土台を作ります。
歯槽骨が痩せて骨が薄くなってしまったらGBR法で骨の再生を行います。骨の再生が必要な患部に特殊な膜を入れ自家骨や骨充填材で満たし、特殊な膜でスペースを確保します。この治療では骨の量が増えインプラントを埋め込むために必要な厚みや幅を確保できるため、インプラント治療がしやすくなります。
このほかにもさまざまな症例に合わせた治療を行うことで、インプラントを埋入するのに充分な骨の量を再生できる可能性があります。

 

骨を再生、または移植してインプラント治療ができる環境に

2-1 骨を再生や移植する治療法

骨を移植する治療でインプラントの土台となる歯槽骨を増加させることができます。移植には自家骨または人工骨を使用します。自家骨は自分の体のどこかから採取しなければなりません。

自家骨は、インプラント埋入するために削った顎の骨を集めて使用することもありますが、下顎の親知らずが生えている顎の骨、または下顎前歯の根元にあるオトガイ骨、ひざや腸骨などから採取することもあります。

インプラント埋入部分から集める方法が身体への負担が少なくすみますが、量が足りないときにはほかの部位から追加で採取することもあります。最近では医療技術が発達し、人工骨による治療の成功率も上がっているためすべて人工骨を使うケースも増えてきました。

 

2-2 ソケットプリザベーション法

ソケットプリザベーション法とは抜けてしまった歯の周辺の骨が痩せてしまうのを防ぐ治療法です。歯が抜けたのにそのまま放置すると、急激に骨が痩せていくおそれがあり、歯の周辺の骨が2~3年で半分ほどが消失、高さも1年ほどで2~4ミリ程度低くなったという症例もあります。

インプラントの長さは8~12ミリあるため、顎の骨が4ミリ低くなってしまうとインプラントの埋入が困難になります。
ソケットプリザベーションは、歯が抜けた穴に骨の材料となるコラーゲン・自家骨を移植したもの・人工骨などを入れ、骨の再生を促す治療法です。骨が増え、厚みや高さが増えるとインプラントがしやすくなります。

 

2-3 GBR法

歯が抜け痩せてしまった歯槽骨を再生させる治療がGBR法です。歯槽骨が減るとインプラントが歯肉から露出してしまうこともあります。そこで、痩せてしまっている歯槽骨部分の歯肉を切開し、自家骨や骨充填材を入れ、特殊な膜(メンブレン)で覆います。メンブレンは骨が充分に増えるまで歯肉の侵入を妨げ充分なスペースを確保します。その後歯肉を元に戻し、骨が再生するのを待ちます。

 

2-4 サイナスリフト法

上顎の奥歯の骨の上部には上顎洞という大きな空洞があり、骨の量が不足しているケースが多いです。歯が抜けると抜けた部分の骨が急速に吸収されるので、処置が遅れるほどどんどん骨量は不足します。上顎洞から歯の位置までの骨の厚みが不足しているとインプラントを埋入してもしっかりと固定することが難しくなります。そのため自家骨や人工骨を移植し、その空洞内に骨を形成し、インプラント治療の環境を整えるのがサイナスリフトです。

 

歯肉が足りない場合の処置法

3-1 歯肉を移植してインプラント治療を可能に

審美性を重視するためには歯肉の厚みも大切です。歯肉が薄いと時間が経つにつれ歯肉が痩せ、退縮してしまいます。歯肉が退縮するとその中に埋め込まれているインプラントの根元が露呈して審美性が損なわれます。歯肉が薄くなる前に、予防策として歯肉結合組織移植をインプラント埋入の前後に行えば、美しい状態を長く保つことができるでしょう。

 

3-2 歯肉結合組織移植で歯肉を増大

個人差はありますが、歯肉は年齢を重ねるごとに痩せてしまいます。それを防止するのは難しく、もともと歯肉が薄い人は歯肉が退縮しやすい傾向があるので、注意が必要です。また、奥歯の場合は歯肉が痩せてもさほど目立たちませんが、前歯は目立つため審美性が悪くなります。

 

3-3 歯肉結合移植の治療法

歯肉結合移植は将来的に歯肉が薄くなるのを予防するために行います。前歯の場合、歯肉が薄くなるとインプラントの根元が露出し審美性に欠けます。そのためインプラントの埋入時、または埋入後に型取りをする前に歯肉を厚くする処置を行います。
歯肉の薄い部分の歯肉を切り開き、上顎の口蓋側の内側から採取した歯肉を移植します。治療は麻酔を使用するため手術中は痛みを感じることはありませんが、麻酔が切れ始めると違和感があることもあります。違和感は数日間続きますが、治癒する期間には個人差があり、すぐに気にならなくなる方もいれば、10日ほど違和感を訴える方までさまざまです。

 歯周病などの病気や加齢、生まれつきなどが原因で顎の骨が薄い場合には、骨の量を増やすためにGBR法やサイナスリフト法などの治療を行います。また歯肉が痩せるとインプラントの根元が見えてしまい審美性が損なわれてしまうため、歯肉を増やす予防策もあります。美しく、自然な使いごこちを期待しインプラントを選ぶ方が増えています。インプラント治療成功のためにまずは歯医者さんに相談し、綿密な検査を行い適切な治療計画を立ててもらうことが重要です。

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監修日:2017年06月25日
鄭尚賢 先生監修
経歴

歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学