天然の歯と同じように物を噛めたり、見た目の仕上がりも美しいと評判のインプラント。しかし、その治療費が高額なことが大きなハードルとなっています。もしインプラントが医療費控除の対象になれば…。そんなことを考えている人も多いのではないでしょうか。ここでは、そんなインプラントの高額な治療費負担を軽減してくれる「医療費控除」事情についてご紹介します。これまで経済的な理由で治療できなかった人は、ひとつの解決策になるかもしれません。
この記事の目次
1.インプラントは医療費控除の対象に
1-1 医療費控除制度の対象
インプラントは1本で30〜40万円前後と、高額な費用がかかる治療です。インプラントは基本的には保険診療の対象外ですが、医療費控除制度の対象にはなりますので覚えておきましょう。
医療費控除は、支払った医療費が10万円以上になると、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。自分だけでなく家族の医療費総額が10万円以上なら利用できるので、インプラントの治療なら1本だけの治療でも対象にあたります。
ただし、1年の控除額の上限は200万円までです。費用がかさんだ場合は、すべてが控除対象ではない点に注意してください。
例えば、ほとんどの歯を失った場合に行える「オールオンフォー(All-on-4)」というインプラントの施術があります。これには300万円程度の費用がかかりますが、この場合でも、医療費控除の対象となるのは200万円までとなります。
1-2 医療費控除の対象となる費用
インプラント治療をする上で医療費控除の制度に申請できるのは、以下の費用となります。インプラント治療にまつわる費用も対象となる場合がありますので、きちんとその範囲を覚えておきましょう。
・検査費用
・診断費用
・インプラント体、被せ物にかかる費用
・手術費用
・その他調整料
・診療のために必要だった交通費
医療費控除に申請できるのは上記となります。交通費は意外に捉えられるかもしれませんが、通院の際に必要だった交通費などはきちんと記録を残しておくといいでしょう。領収書の保管はもちろんですが、領収書が発行されない場合は、乗車区間の記録などをとっておくと費用の計算に役立ちます。ただし、自家用車のガソリン代は申請から除外されますので、この点も踏まえておくようにしてください。
1-3 領収書や書類をきちんと保管して
医療費控除を申請するには、費用の金額を証明する領収書などが必要です。初診時からきちんと領収書をとっておき、確定申告をする際まで保管しておきましょう。他にも、以下の資料等が申請に必要となります。直前で慌てないように、前もって必要なものをリストにしておくと便利ですよ。
・確定申告書
・医療費の明細書
・医療費の支出を証明する領収書など
・源泉徴収票(所得があれば)
・保険給付金の控え
・認印
・通帳
医療費控除の手続きについて詳しく知りたい場合は、お近くの税務署や国税庁ホームページなどでその方法を詳しく調べてみるといいででしょう。税金にかかわることですので、歯医者さんではなく専門機関に相談するとスムーズです。
1-4 医療費控除の申告期間
医療費控除の申告ができるのは、過去5年間にわたる医療費です。過去5年間の医療費であれば控除の対象になりますので、思い当たる部分があれば、今からでも調べてみるといいでしょう。扶養家族の医療費などもあわせて申告できるので、とにかく領収書などを探してみると、経済的な負担を軽減できるかもしれません。
1-5 ローンでの支払いも対象に
治療費が高額となるインプラント治療では、デンタルローンを使って分割で支払うことも多くなります。その場合でも医療費控除の対象となるので心配いりません。
ただし、まだデンタルローンの支払いが終わってない場合、手元に領収書がないということもあるでしょう。そういった場合は、デンタルローンの契約書の写しも保管しておき、添付して申請すれば問題ありません。
2. インプラントは保険適用外?
2-1 インプラントは自由診療
医療費の負担を軽減してくれる制度としては、医療保険が一般的です。
インプラント治療は保険外診療であるため、費用は全額患者さんの負担となります。ブリッジや差し歯などと比べて費用がかさみがちなのは、保険が適用されないことが大きな理由なのです。
保険診療と違い、自由診療は歯医者さんごとに料金が変わります。使う素材や治療本数によっても大きく金額が変動するのも特徴です。
2-2 インプラントでも保険が使える?
インプラントでも、特別な理由がある場合は保険が適用されます。適用の条件は以下の通りです。
・腫瘍や顎骨子骨髄炎などの病気、事故の外傷などによって顎の骨が3分の1以上連続して失われた場合
・骨移植によって顎の骨が再建された状態にある場合
・顎の骨の3分の1以上が連続して失われている状態で、医科保険医療機関の主治医が先天性疾患と診断した場合
・顎の骨の形成不全である場合
上記に加えて、保険が適用されるには受診する医療機関が定められています。
・入院病床が20床以上ある病院内の歯科、歯科口腔外科
・上記に当てはまる病院の歯科、または歯科口腔外科で5年以上の治療経験を有し、インプラント義歯の治療経験が3年以上ある医師が常勤で2名以上配置されている医療機関
・当直体勢が整っている医療機関
・国が定める医療機器、医薬品が管理、整備されている医療機関
一般的に、歯医者さんといえば個人開業の歯医者さんを受診している患者さんが多いかもしれません。もし症状が該当していても、上記の医療機関の条件に当てはまる必要があるのできちんと頭に入れておきましょう。一般の歯医者さんでは保険が適用されないので、きちんと医療機関を調べ対象の機関を受診するようにしてください。
3.インプラントの治療費負担を和らげるには?
3-1 デンタルローンなどで分割払いに
インプラントは1本でも約30〜40万円と高額な治療費がかかります。複数本治療すれば、それだけで100万円を軽く超えてしまうことも珍しくありません。そのため、デンタルローンを用いた治療費の分割払いが多く利用されています。
デンタルローンが利用できるかどうかは歯医者さんにもよりますので、最終的には受診する歯医者さんに尋ねるようにしてください。最近は多くの歯医者さんが取り入れていますので、気軽に相談してみるといいでしょう。
4.医療費控除を受ける際の注意点
4-1 医療費控除はタイミングに注意
インプラントは治療に長い期間を要することがあります。そのため、年をまたいで治療費の支払いが必要となるケースも少なくありません。医療費控除は年単位で申請をしますので、「何年にいくら払ったのか?」ということが明確である必要があります。いつ支払ったのかはその都度記録して、医療費控除の申請時に備えておきましょう。
4-2 補てん金などに注意
インプラント治療をする際に、健康保険組合から補てんされる金額があれば、それらは医療費から差し引かなければいけません。もし、医療費控除の申請を考えている方で、健康保険組合からの補填される金額があれば、きちんと記録を残しておくようにしましょう。最終的には税金に関わることなので、くわしい差し引きの方法などは、税務署や国税庁のホームページを見たり、問い合わせたりして確認するようにしましょう。
特別な条件にあてはまらない限り、自由診療となってしまうインプラント治療。保険が使えないからと全額を負担する人が多いですが、医療費控除を利用すれば実質的な経済的負担を減らすことが可能です。
インプラント治療にのぞむにあたって、やはり費用面が一番のネックではないでしょうか。医療費控除を利用して少しでも負担を減らす努力をしましょう。
申請のためには関連書類が必要となります。領収書等はきちんと保管するようにし、スムーズに申請できるように備えておきましょう。医療機関までの交通費も対象となることも忘れないでくださいね。
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歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学