歯周病でもインプラントはできる?まずは歯周病の治療から

歯周病でもインプラントはできる?まずは歯周病の治療から

インプラントは、第2の永久歯とも呼ばれていますが、自然の歯と同様に感染症を起こすことがあります。歯周病菌が影響することもあるため、当然インプラント治療の前には、まず歯周病を治すことが大前提となります。この記事では、インプラントの前に歯周病を治すことが必要な理由や、インプラント治療が可能となる条件、歯周病が原因で痩せた歯槽骨を再生する治療などについて、詳しくご紹介します。

この記事の目次

1章 歯周病でもインプラント治療は可能?

結論から先にいうと、歯周病のある方は、まずそれを治療することが先決となります。インプラントは“インプラント周囲炎”といわれる特有の感染症になることもあるからです。ここでは、まず歯周病とは何か?次にインプラント治療とはどのようなものか?について、詳しくご紹介していきます。

歯周病とは?

歯周病は日本人が歯を失う原因の一つとなっており、40歳以上のおよそ8割もの方が、歯周病に感染しているとの調査結果もあります。口腔内には数多くの細菌が常在していますが、歯周病はその中に存在しており、菌が放つ毒素が歯に炎症を起こしたり、歯槽骨(歯を支える骨)を後退させたりするのです。放置しておくと、骨が細って、歯が揺れ動くようになり、最後には歯が抜け落ちてしまいます。

インプラント治療とは?

失った歯を補う治療法の1つが、インプラント治療です。歯が抜けた場合、隣の歯と橋渡しをして補うブリッジや、金属などの留め具で引っ掛ける入れ歯などがありますが、インプラントは、チタン製の歯根を顎の骨に埋め込んで、その上に人工歯を取り付ける治療法です。インプラントは、ブリッジや入れ歯と違って隣の歯に負担をかけず、チタン製の歯根は骨と固く結合する性質があり耐久性に優れています。自分の歯のような使用感などから、第2の永久歯とも呼ばれているほどです。

まずは歯周病の治療が先決です!

インプラントはとても耐久性に優れており、10年の保証を付けているインプラントメーカーもあります。しかし、その大きな弱点がインプラント周囲炎です。これは、歯周病菌によってインプラントを埋入した骨や周囲の組織に炎症が及ぶもので、インプラントが抜けてしまう原因にもなります。したがって、インプラント治療を行う前に、歯周病をしっかりと治しておくことが肝心なのです。

 

2章 歯周病で抜けた歯をインプラントで治す基本条件

1章でご紹介した通り、インプラント治療の前には、まず歯周病を治す必要があります。ただし、歯周病の進行度合いによっては、インプラント治療自体ができない場合もあります。ここでは、インプラント治療が可能な基本条件について、ご紹介します。

骨が十分残っていること

インプラント(人工歯根)はチタン製で、およそ3ミリから4ミリ程度の太さのネジの形状をしています。したがって、それを埋め込む顎の骨には、十分な厚みが必要となります。重度の歯周病でこの骨が後退して痩せている場合や骨粗しょう症で骨密度が著しく低下している場合には、インプラントを埋め込むのば難しくなります。このように、支える骨の厚みと密度が不十分である場合には、前もって骨を増量するための治療が必要となってきます。

重度の疾患がないこと

人工透析を必要とするような腎疾患や糖尿病といった重度の疾患をお持ちの方は、骨がもろくなっているためインプラント治療を受けることが難しいです。その他、免疫力が低下する疾患を持っていると傷の治りが鈍くなるため、治療を行えないことがあります。

 

3章 骨が痩せている場合の治療法

かつては、歯周病などによって骨が大きく痩せている場合には、インプラント治療が不可能でした。しかし近年では、技術が進歩しており、痩せた骨を増量することで、インプラント治療が可能となっています。主な骨の増量法は下記の通りです。

サイナスリフト法

主に、上顎の奥歯の骨を増す方法です。上顎の奥には、上顎洞と呼ばれる空洞があります。上顎の場合、歯茎と上顎洞の間の骨が薄く、インプラントが骨から空洞まで突き抜けてしまい、しっかりと固定できなくなることがあります。こうしたことのないよう、骨補填剤(骨を再生する特殊なカルシウム粉)を上顎洞に充たして、新たな骨を形成することで、骨の厚みを増す方法がサイナスリフト法です。

GBR法

インプラントを埋め込む際、インプラントの側面を支える骨が薄い場合には、GBR法という骨の増量法で対処できます。インプラントを埋め込んだ後に、骨の厚みを増したいところに骨補填材(骨の再製を促す材料)を施し、メンブレンという特殊な膜で覆います。およそ半年程度で骨が再生されてきます。

ボーングラフト法

歯周病で前歯を失った場合には、骨の前方の骨が減少しているケースがあります。これを補うために、自分の骨(歯槽骨や顎の骨)を使って、補強するための骨をあてがい、スクリューで固定します。補強するための骨が歯槽骨とくっついた後で、インプラント治療を行います。

 

 

4章 インプラント治療後の歯周病にも要注意!

インプラントも感染症になる!

前述した通り、インプラントは第2の永久歯と呼ばれるほど耐久性が高いものですが、残念ながら天然歯を超えるものではありません。インプラントの周囲の組織は、天然歯よりも細菌に対する抵抗力が弱くなるため、歯周病に対しては天然歯以上の細心のケアが必要となります。歯周病菌が原因となって、インプラントを支える組織や骨が炎症などで損なわれる疾患を、特にインプラント周囲炎といいます。いわば、インプラントの歯周病です。

より徹底したケアが必要です!

セルフケアにおいては、磨き残しを減らし、歯垢をためないようにする必要があります。個人個人、磨き残しやすい箇所が違うので、歯科衛生士による適切な指導を受けるようにしましょう。また、インプラントを長持ちさせるためには、自分だけでなく歯医者さんでの定期健診も必須です。インプラントは、治療後に5年や10年の保証期間を設けているケースもありますが、定期健診を続けることが条件であることがほとんどです。かかった歯医者さんの指示通りに、必要なケアを欠かさないようにしましょう。

 インプラントの施術前には、歯周病を治しておくことが大前提です。さらに、インプラントは健康歯よりも、歯周病菌の悪影響を受けやすく、セルフケアはもとより、歯医者さんでの定期的なクリーニングを欠かさないといった、一層徹底したケアが必要です。こうしたケアはインプラントの寿命だけでなく、既存の健康歯の寿命をも高めることにもつながっていきます。

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監修日:2017年07月10日
鄭尚賢 先生監修
経歴

歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学