インプラントってなに? インプラントのメリット・デメリットとは?

インプラントってなに? インプラントのメリット・デメリットとは?

「歯が抜けてしまった! どうしよう……」「歯医者さんから、入れ歯をすすめられたけどどうしたらいいか困っている」という方は、失われてしまった歯の部分に人工の歯根を埋め込むインプラント治療を検討してはいかがでしょうか? インプラントは他の歯を傷つけず、美しさ、装着感、維持力を得られるメリットがあります。ただし、問題点もいくつかみられます。ここでは、インプラントのメリット・デメリットについてまとめてみました。自分に合った治療方法の選択の参考にしてください。

 

この記事の目次

インプラント治療の流れ

1-1 精密検査と治療計画

インプラントの治療方法にはさまざまな選択肢があります。失われた歯の数はもちろんですが、骨や口腔内の状態を知ることが大切です。最初にレントゲンや歯科用CTでその人の歯や骨格を確認し、さらに病歴・現在の健康状態の検査を行い、治療方針を決めていきます。その上で、治療方法、予算と料金、通院期間などを話し合い、患者の同意を得て治療が始まります。土台となる骨がしっかりしているかどうかを判断し、造骨手術の必要性についてもこの段階で精査します。

 

1-2 1次手術

通常、インプラント治療における手術は2回に分けて行います。1次手術では歯茎を切開してアゴの骨を削り、歯の土台となるインプラント(人工歯根)を埋め込みます。

局所麻酔が使われますので痛みはほとんどありません。インプラント手術中に使用する麻酔は、手術後1~2時間で切れます。麻酔が効いている間は口内の感覚がなくなるため、頬や舌などを噛まないように注意してください。

手術後2~3日の間は、強いうがいをすると傷口のかさぶたが取れてしまう恐れがあります。また、処方される抗生剤はきちんと最後まで飲みきりましょう。

 

1-3 定着期間

1次手術の後、消毒や抜糸などのプロセスを経て、インプラントが骨としっかり結合して定着するまで、個人差はありますが、約3~6ヶ月ほど時間をあけます。この期間、治療する箇所によっては仮の歯を使用できることもあります。手術後から3週間~1か月ごとに定期検診を行います。傷の状態や口の中の状態を確認するので、必ず定期検診を受けましょう。

 

1-4 2次手術

インプラントが定着したことを確認したら、歯茎を切開してインプラントの頭を出し「アバットメント」と呼ばれる人工の歯を取り付ける支柱を装着する手術を行います。通常この状態で、歯茎が治るまで1~6週間おきます。その間、痛みなど何か問題がおきた場合は歯医者さんにきちんと伝えましょう。

 

1-5 人工歯の装着

歯茎の治療が終了した時点で歯の型取りを行い、インプラントの上にかぶせる人工歯を作っていきます。2次手術から約1~6週間後に人工歯をかぶせてインプラント治療は完了です。

しかし、ここで治療が終了というわけではありません。インプラントした箇所は歯周炎になりやすく、定期的なメンテナンスが必要となってきます。インプラントの寿命は約10年と言われていますが、適したメンテナンスを行うことで数十年問題なく使用できたという例もあります。

 

インプラントのメリット

2‐1噛む力が強い

インプラント治療は、天然歯の状態の80%近くまで噛む力が回復するといわれています。歯が折れるといったようなことも少なく、ぐらつきもなく、自分の歯と同じように何でも噛めるようになります。入れ歯のように、味覚や熱さの感覚が低下するようなこともありません。食事を楽しむことができるため、日常生活も楽しくなります。

 

2-2 見た目がきれい

見た目が天然の歯と同じようにキレイに仕上がります。失われた歯が前歯の場合、入れ歯の場合では金具が見えてしまうこともあるので、人前で笑顔になることに抵抗感を持つかたもいます。インプラントの場合はそのような抵抗感は少ないため、自然な笑顔ができるでしょう。

 

2-3 違和感がない

インプラント治療は、人工歯根を埋め込むことによって失った歯を補う治療です。そのため、入れ歯のように、合わなくて口の中が痛い、食べるときにがたつきがあるということはありません。また、噛むときに違和感がないので、よく噛むことができ全身の健康維持にも役立つでしょう。

 

2-4 周りの歯を傷つけなくて済む

インプラント治療は、歯を失った部分のみを治療します。他の治療法である歯のブリッジは、失った歯の周囲の歯を削って橋のような被せもの(支台装置)と人工歯が連結したものを入れます。ブリッジのようにインプラントは、両隣の健康な歯まで傷つけてしまうこともありません。また、かみ合わせも維持することができ、周囲の歯の健康を守ることができます。

 

2-5 あごの骨がやせない

顎の骨の役割は歯を支えることであり、歯がなくなると顎の骨はやせてしまいます。顎の骨がやせると見た目が老けて見えるようになります。インプラントを入れて顎の骨を刺激することで、骨がやせていくことを抑制できるといわれているため、インプラントを入れることは見た目の若さを維持するために役立つでしょう。

 

インプラントのデメリット

3-1 手術が必要

インプラントは骨の中に人工歯根(インプラント)を埋め込む治療です。外科手術が必要になるため、局所麻酔を使います。手術後に腫れや痛み、内出血などが生じたり、まれにではありますが、手術中に大きな神経や血管を傷つけ麻痺が残ってしまうケースもあります。顎の骨を削るドリルを正確に導きぶれないようにするサージカルガイドと呼ばれる医療機器を使用することで、より安全性の高い手術を行うことが可能です。

 

3-2 治療期間が長い

インプラントは、治療を開始してからすぐに被せ物をするわけではありません。個人差はありますが、歯科用CT検査や噛み合わせの確認、インプラントが骨と定着するのを待つ期間などを合わせ、平均3~10ヶ月かかります。忙しい方のために短期コースを用意しているところもあるので、歯医者さんに相談してみましょう。

 

3-3 治療費が高額になる可能性があります

国が定めた病気や外傷によって広範囲にあごの骨が失われた場合には、インプラント治療は保険適用になります。ただし、これは非常に限られた範囲になり、ほとんどのケースが自由診療になります。インプラント治療に使用する医療機器や材料は高価なものが多いため、治療費も高額になってしまいます。医療費控除を申請すると医療費の一部が返ってくる場合がありますので、忘れずに申請しましょう。

 

3-4 治療に制限があります

インプラント治療はすべての方にできる治療ではありません。重度の糖尿病や骨粗鬆症の方はインプラント治療をしてもインプラントと骨が結合しなかったり、歯茎や骨の手術痕がうまく治癒しない場合もあります。全身疾患を抱える方は、インプラント治療の前にかかりつけのお医者さんに相談してみましょう。あごの骨が完成していない20歳以下の人も一般的にはできないケースが多いです。

 

3-5 メンテナンスが必要です

インプラントは人工の歯のため虫歯になることはありません。しかし、インプラントの歯には自然の歯と同様に歯石が付きます。インプラントの周辺組織は歯周病になりやすい状態のため、歯石を放置すると歯周病が重症化してインプラント自体が抜けてしまうトラブルが起こることもあります。インプラントの寿命を延ばすためにも、インプラントだけでなく、周囲の歯も健康を守る必要があります。

 

インプラント治療でトラブルにならないために

4-1 インプラントの知識を持つ

インプラントの基礎知識やその他の治療についての知識を持つことで、歯医者さんからの説明が理解しやすくなります。説明をきちんと理解できるようになると、疑問や質問もしやすくなるでしょう。自分に合った治療方法の選択のためにも、正しい知識を持つように心がけ、間違った情報に流されないようにしてください。

 

4-2 自分に合った歯医者さんを選ぶ

インプラント治療を行う歯医者さんは、各医院によって大きな違いがあります。それぞれの歯医者さんが、どのようにインプラント治療に取り組んでいるのかをきちんと把握し、歯医者さん選びに活かすことが重要です。また、自分の持っている不安や疑問、質問に丁寧に応えてくれる歯医者さんを選ぶようにしてください。まずは、自分のかかりつけの歯医者さんに相談するところからはじめてみてはいかがでしょうか。

 

4-3 自分の身体のことをちゃんと伝える

先生が治療計画を正確に立てられるように、なるべく多くの情報を伝えることが大切です。過去の病歴・現在の病気や飲んでいる薬のこと、質問事項など、メモにあらかじめ書いておき、伝え漏れのないようにしておきましょう。全身疾患を持っている方はかかりつけ医に前もって相談しましょう。また、持病がある方については、かかりつけ医と歯科医師が連絡を取り合いながら治療を進めていくこともあります。

 

4-4 事前に行う検査の目的を知る

きちんとした検査を行うことは、インプラント治療のトラブルを予防することに役立ちます。歯科用CTなど、さまざまな検査が必要になりますが、口内の状態や既往歴などにより必要な検査と不要な検査が変わってきます。ひとつ一つの検査の目的を正確に把握し、不安なことやわからないことなどがあったら、その都度確認するようにしてください。

また、検査によってはすぐに結果が出ないものもあります。検査にかかる時間も考慮に入れながら治療計画を検討することが大切です。

 

4-5 自分の生活スタイルを伝える

治療にあたって通院や手術に影響がありそうな生活スタイルに思い当たることがあれば、事前に伝えるようにしましょう。海外渡航、転勤、仕事、運転が必須の業務、育児や介護をしているなどが治療方針を決定する要素となります。インプラントが原因となるトラブルを回避するためにも、自分の生活スタイルを伝え、歯医者さんと一緒に治療計画を立てましょう。

 

前歯と奥歯のインプラントのメリット・デメリット

5‐1 前歯のインプラントのメリット

失った前歯の治療には、インプラントの他にブリッジなどの方法があります。しかし、前歯は顔の表情などに影響し、噛むときの使用頻度も高いため、インプラント治療を受ける価値が大きいと言えるでしょう。

ブリッジのように周囲の歯を傷つけることもなく、自分の歯のようにしっかり噛むことができるインプラントですが、メリットばかりではありません。

 

5‐2 前歯のインプラントのデメリット

前歯は平べったい形をしています。前歯を支える骨は奥歯よりも薄いため、治療の難易度が高くなります。さらに、インプラントを埋入すると骨吸収が進行するため、見た目が悪くなる可能性も高まります。治療の前に必ず歯医者さんに相談し、十分に納得してから治療を開始しましょう。

 

5‐3 奥歯のインプラントのメリット

「奥歯がなくなっても周りの人からは気づかれないし、食べ物も他の歯で噛めるからインプラントにしなくても……」と思う方もいるのではないでしょうか。

奥歯は噛み合わせにとって重要な役割を持つ歯です。正しい噛み合わせでしっかり噛むことは、脳の血流が良くなったり、身体の免疫力がアップするなどの効果が期待できます。また、インプラントは周囲の歯を傷つけないので、周囲の歯への負担を減らす事も可能です。

 

5‐4 奥歯のインプラントのデメリット

奥歯は強い力がかかるため、失った歯と同じ本数のインプラントを埋入しなければならないケースが多いです。また、奥歯は歯磨きしにくく、汚れが溜まりやすくなります。汚れが溜まると歯周病になりやすくなるので、定期的なメンテナンスを行いましょう。

 

5‐5 インプラントの寿命は?

インプラントの寿命は、およそ10年といわれています。入れ歯が約5年、ブリッジが約7年になるので、寿命が長いと言えるのではないでしょうか。なかには数十年も同じインプラントを使い続けたという例もあるので、治療後もちゃんとメンテナンスを行い、寿命を延ばすように心がけましょう。

 インプラントには、メリット・デメリット両方あります。インプラントは、自分の歯のように噛め、残っている歯にも負担をかけず、見た目も美しく、歯を失う前に近い生活を過ごすことが可能です。しかし、インプラントは治療期間が長い、治療費が高額になるなどのデメリットもあります。自分にはどのような治療が合うのか、歯医者さんと相談し、納得のいく治療法を選択しましょう。

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監修日:2017年08月08日
髙橋貫之 先生監修
経歴

2003年 大阪歯科大学 卒業
2003年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 入学
2007年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 終了
2008年 大阪歯科大学 勤務
2016年 大阪歯科大学(歯周病学 助教)退職
2016年 本町通りデンタルクリニック 勤務