知らなかった!入れ歯のお手入れは洗浄剤選びで決まる

知らなかった!入れ歯のお手入れは洗浄剤選びで決まる

入れ歯はお手入れが不足すると「デンチャープラーク」と呼ばれる細菌のかたまりが生じて口臭を引き起こしたり、歯茎に炎症を起こす原因となります。また、細菌は口内のトラブルだけではなく、肺炎などのように体に悪影響をおよぼす場合もあります。入れ歯を清潔に保つためには、正しい入れ歯のお手入れ方法を知り、目に見えない細菌を退治してくれる入れ歯洗浄剤を上手に活用するようにしましょう。そこで今回は入れ歯のお手入れ方法や入れ歯洗浄剤について説明します。

 

この記事の目次

入れ歯生活の基本、毎日のお手入れ方法

1-1 なるほど!これが入れ歯の正しい洗浄方法だ

入れ歯のお手入れをするときは、落下による破損を防止するために、水を張った洗面器の上などでお手入れをしましょう。正しい入れ歯のお手入れ方法について流れにそって説明します。

・入れ歯ははずして洗浄する
装着したままではなく、必ず外してから洗浄します。

・水やぬるま湯で洗い流す
表面にある目立った汚れを水やぬるま湯で洗い流します。熱湯やアルコールによる消毒は入れ歯の素材であるレジン(プラスチック)の変形や変質を引き起こすことがあるので避けましょう。

・専用ブラシで入れ歯を磨く
洗い流しただけでは落ちない細かな汚れは、水で流しながら専用のブラシでやさしく丁寧に磨きます。クラスプ(金属バネ)やその周辺は汚れがたまりやすいので、特に意識をして磨くようにしましょう。ただし、クラスプは強い力がかかると変形することがあるので、取り扱いには注意してください。

・水またはぬるま湯ですすぎ洗いする
汚れを磨いたら水またはぬるま湯ですすぎ洗いします。

・入れ歯洗浄剤にひたす
水やぬるま湯をコップなどに入れたら洗浄剤を溶かして洗浄液をつくり、入れ歯全体がひたるようにします。適切な水温や時間は洗浄剤によって異なるので説明書をよく読みましょう。

・洗浄液を洗い流す
入れ歯を洗浄液から取り出したら水で洗い流します。使用した洗浄液は洗浄力が低下し、汚れが混入して不衛生なため、再利用しないでください。

 

1-2 やってはいけない入れ歯のお手入れ方法

・歯磨き粉は使わない
歯磨き粉は研磨剤を含んでいるため、歯ブラシと同じく入れ歯に傷をつけてしまい、細菌の温床となってしまうことがあります。ブラッシングだけでは落としきれないなど、どうしても汚れが気になる場合は、食器洗い用の中性洗剤を使って磨きましょう。

 

1-3 入れ歯だけじゃない!口内を清掃することも大切

入れ歯の洗浄にだけ注目してしまいがちですが、口内を清潔に保つことも入れ歯の洗浄と同じくらい大切です。汚れたままの口内では歯茎が腫れたり、肺炎などを引き起こす場合もあります。口内の清掃には次のような方法があります。

・うがい
入れ歯を洗浄剤につけている間にうがい薬などで口内を洗浄しましょう。

・口内全体を清潔にする
毛先がやわらかい歯ブラシを使って、舌や口内全体の粘膜やをやさしくこすり、清掃にしましょう。

・残っている歯を磨く
入れ歯に接している面や歯と歯の間の面など、残っている歯を歯ブラシや歯間ブラシを使って丁寧に磨きましょう。

 

知らないとこわい!入れ歯洗浄剤が使われる理由

2-1 入れ歯はカビが生えてしまう!

口内は適度な温度と湿度によってカビが生えやすいお風呂のような環境になっています。カビは入れ歯にある細かい傷などに隠れてしまうため専用ブラシで磨くだけでは落としきれません。また、口の中にはカンジダ菌というカビ(真菌)が常にいます。普段は唾液の殺菌力でカンジダ菌の増殖をおさえていますが、入れ歯にカビが生えていると口内で菌が増殖し、歯茎の痛みや入れ歯による痛みの原因になります。そのため入れ歯洗浄剤を毎日使ってカビが生えるのをおさえる必要があります。

 

2-2 口臭の原因になってしまう!

入れ歯洗浄剤で入れ歯を清潔に保たないと、口内の歯垢が入れ歯に付着し、発酵することで口臭を引き起こします。入れ歯についた細菌は乾燥することでますます落ちにくくなり、少しずつ増えながら口臭を強くしていきます。また、入れ歯を汚れたままにすると歯と同じように歯石がつき、入れ歯がざらついてより歯垢や汚れが付着しやすくなるため、洗浄剤を活用して清潔を保ちましょう。

 

2-3 虫歯を引き起こす!

残っている歯をきれいに磨いても、入れ歯に細菌が付着している状態のままにしておくと、入れ歯の細菌が残った歯に感染し虫歯を引き起こします。特に、入れ歯によって口内の唾液の流れが悪くなると、歯の再石灰化が抑制されるので、虫歯が悪化しやすくなります。

 

2-4 歯周病になりやすくなる!

入れ歯はクラスプ(金属バネ)を残った歯にひっかけて使うため、入れ歯を支える歯には大きな負担がかかります。入れ歯に付着した細菌は残っている歯を歯周病にし、ぐらつかせる原因となります。残っている歯を守るためには、毎日入れ歯洗浄剤を使って入れ歯を清潔に保つことをおすすめします。

 

入れ歯洗浄剤との上手な付き合いかた

3-1 入れ歯洗浄剤の主なはたらき

入れ歯洗浄剤としてさまざまな商品が市販されていますが、基本的に同じ目的を持っていて、共通して主に次の4つのはたらきをもっています。

・殺菌の作用
・洗浄の作用
・消臭の作用
・歯石の予防

 

3-2 入れ歯洗浄剤の成分による違い

入れ歯洗浄剤は成分によって大きく「過酸化物系」、「酵素系」、「次亜塩素酸系」の3種類にわけられます。目的を考えて自分に合ったタイプを選びましょう。

・過酸化物系
一般的な入れ歯洗浄剤で発泡作用があります。泡の力で汚れや着色を落とします。殺菌力はそれほど期待できない分、安全性が高いことが特徴です。部分入れ歯のクラスプ(金属バネ)が変色することがあるので注意しましょう。

・酵素系
酵素の力でタンパク質を分解する洗浄剤です。食べかすや細菌を取り除き、脱臭作用が期待できます。安全性は高いものの、ヤニや茶渋などの着色に対する漂白作用はほとんど期待できません。

・次亜塩素酸系
非常に強いアルカリ性成分のため洗浄剤の中では最も殺菌力が高く、着色汚れに対しても優れた漂白作用が期待できます。その反面、長時間入れ歯をつけておくと、素材として使われているレジン(プラスチック)を痛め、変色させることがあるため注意が必要です。

 

入れ歯は定期的に歯医者さんでチェックしてもらおう

4-1 日々の洗浄と3カ月に一度の定期健診がおすすめ

定期的に入れ歯を洗浄しているのに口臭が気になるときは、プラーク(歯垢)が石灰化して歯石に変化している場合があります。歯垢は自宅の歯ブラシで除去できますが、歯石は歯医者さんによる清掃が必要です。
歯石は口臭だけでなく、虫歯や歯周病などを引き起こすことがあります。毎日の入れ歯洗浄とあわせて、3カ月に一度歯医者さんで定期健診を受診し、入れ歯だけではなく残った自分の歯もケアしましょう。また、毎日欠かさずお手入れをしているのに口臭が気になる人は、間違った方法でお手入れをしている可能性があります。歯医者さんに正しいお手入れ方法を指導してもらいましょう。

 

 口内はどのような人でも細菌が多く存在している場所です。せっかく入れ歯治療を受けても、それが原因で口内の状態が悪化してしまっては元も子もありません。入れ歯洗浄剤と上手に付き合いながら正しいお手入れを継続し、口内環境を清潔に保ち健康的な毎日を送りましょう。入れ歯のお手入れに迷ったら歯医者さんからアドバイスをもらい、自分に合った洗浄剤やお手入れ方法を検討していきましょう。

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監修日:2017年06月14日
飯田尚良 先生監修
経歴

1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

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