一般的な入れ歯のように金属のバネ(クラスプ)を残存歯にひっかけて装着せず、はめこみ式の装置を使って装着する部分義歯のことを「テレスコープシステム」もしくは「テレスコープ義歯」とよびます。テレスコープシステムにはいくつかの種類があり、「コーヌスクローネ義歯」はそのうちのひとつです。見た目もよく機能性にもすぐれている特徴を持っています。今回は、コーヌスクローネ義歯の歴史や特徴、費用などを見ながら、コーヌスクローネ義歯以外のテレスコープシステムについてもご説明します。
一般的な入れ歯のように金属のバネ(クラスプ)を残存歯にひっかけて装着せず、はめこみ式の装置を使って装着する部分義歯のことを「テレスコープシステム」もしくは「テレスコープ義歯」とよびます。テレスコープシステムにはいくつかの種類があり、「コーヌスクローネ義歯」はそのうちのひとつです。見た目もよく機能性にもすぐれている特徴を持っています。今回は、コーヌスクローネ義歯の歴史や特徴、費用などを見ながら、コーヌスクローネ義歯以外のテレスコープシステムについてもご説明します。
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「コーヌスクローネ義歯」とは、口内に固定させるための維持装置に金属のバネ(クラスプ)を使用せず、はめこみ式の装置を使って装着する「テレスコープシステム」とよばれる部分義歯のひとつです。コーヌスは円錐形、クローネは冠の意味をもっています。コーヌスクローネ義歯は、歯に内冠とよばれる金属冠をかぶせ、さらにそれにぴったりとあう外冠とよばれる金属冠を、内冠の外側にかぶせて密着させる入れ歯です。日本では「茶筒式義歯(ちゃづつしきぎし)」ともよばれるように茶筒とふたのような構造になっていて、それぞれの摩擦力によって強く固定されます。噛む力を縦方向に伝えるため、歯のない部分の歯茎と残っている歯にかかる力をしっかりと支え、ものを強い力で噛むことができますが、接着しているわけではないため、取り外しも可能です。
ドイツは、歯科医療の先進国とよばれる国です。約100年前にドイツで誕生したコーヌスクローネ義歯は、日本でも1980年ごろに治療を受けられる歯医者さんが増えましたが、当時はまだ技術的に問題がありトラブルが相次いだため、10年ほどで取り扱う歯医者さんが減少していきました。その後、コーヌスクローネ義歯は改良を重ね、見た目にも機能的にもすぐれた義歯となりました。
コーヌスクローネ義歯は、義歯本体が20~70万円、残存歯にかぶせる金属冠が1本につき10~20万円ほどかかります。治療は自由診療のため全額自己負担です。
治療期間は1カ月半~2カ月程度ですが、口内の粘膜や残っている歯の治療が必要な場合は、その治療期間がさらにプラスされます。
コーヌスクローネ義歯がそれぞれの歯へ独立した内冠を装着するのに対し、並んだ歯の内冠を棒状の金属によってつないで装着するのがリーゲル・テレスコープ義歯です。かんぬきのような形をしたとめ具を用いて脱着する構造のため、高い安定性があります。ちなみにリーゲルとは、ドイツ語で「かんぬき」のことを言います。
レジリエンツ・テレスコープ義歯は、片あごに残っている歯が3本以下の場合に用いられる部分入れ歯です。総入れ歯と同じようなかたちをしているはめこみ式の部分入れ歯で、残っている歯になるべく負担をかけないように、粘膜にしっかり吸着させることで義歯を安定させる仕組みになっています。見た目は総入れ歯ですが、総入れ歯とは比較にならないほど吸着力が強く、安定してものを噛むことができます。
一般的な部分入れ歯ではクラスプと呼ばれる金属のバネが見えるため、大きく口を開けたり、笑顔を見せたりすることに抵抗を覚える人も多いですが、クラスプを使用しないコーヌスクローネ義歯は、口を開けても義歯だということに気づかれないほど、自然で美しい仕上がりになります。
コーヌスクローネ義歯は、内冠と外冠の摩擦力によって安定性を保っています。ガタつきやゆるみも少なく外れにくいため、自然な噛み心地が期待でき、天然の歯と同じように食事や会話を楽しむことができます。
保険適用の義歯は安価ではありますが、口内環境の変化や義歯の劣化の影響で作り直さなければいけない場合があります。コーヌスクローネ義歯は自由診療のため高額になりますが、取り外して修理できるため、調整や修理を繰り返しながら長期にわたって使い続けることができます。
コーヌスクローネ義歯を装着すると残存歯が連結して強く固定されるため、1本1本にかかる力を分散して負担を軽減できます。また、残っている歯が歯周病でグラグラしている場合も、連結して固定されることで歯への負担が軽減するので、結果的に歯の寿命を延ばせるとされています。
コーヌスクローネ義歯は残っている健康な歯を支えとして使い、支えの歯に金属をかぶせて固定する方式のため、外科的治療を必要としません。インプラント治療では、歯の欠損箇所に人工歯根(インプラント)を埋め込むために歯茎を切開をするなど外科的治療(手術)が必要です。
歯を失うと少しずつあごの骨が痩せ細ります。コーヌスクローネ義歯は残っている健康な歯を利用するため、あごの骨が痩せている場合でも柔軟に対応できます。インプラント治療はインプラントを埋め込み固定できる骨量を確保しなくてはならないため、加齢によってあごの骨量が少なくなると治療を受けられない場合があります。
通常インプラント治療ではインプラントの埋め込み手術跡が回復するまでの数カ月間について、不要な力がかからないよう歯のない状態で過ごさなくてはなりません。しかし、コーヌスクローネ義歯は、そのときの状態に合わせてセラミックなどでできた仮歯(かりば)を使用できるため、治療中でも噛める状態が維持できます。また、仮歯を使うことで歯がない状態がなくなるので、治療期間中の見た目に対する抵抗感も少なくなるでしょう。
日本ではまだそれほどなじみがありませんが、コーヌスクローネ義歯はドイツですでに100年以上の歴史がある義歯です。自由診療のため費用は高価であり、治療に高度な技術が必要なためすべての歯医者さんで対応しているわけではありませんが、見た目も使い勝手もよいので義歯を検討するときの有力な選択肢のひとつとなるでしょう。コーヌスクローネ義歯の治療を行っているかどうかは歯医者さんに確認し、費用や治療法について相談し、ご自身が納得したうえで治療を進めるようにしてください。
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1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る