金具を使わない目立たない入れ歯、ノンクラスプデンチャーとは

金具を使わない目立たない入れ歯、ノンクラスプデンチャーとは

「部分入れ歯をつけたとき、入れ歯の金具が口内で気になってしまう」「金具が見えないようにと気にしまい、大きな口を開けて話せない・笑えない」「入れ歯であることをほかの人に気付かれたくない」など、部分入れ歯に対してマイナスイメージがあり、使用を迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方に知っていただきたいのが、金属のバネ(クラスプ)を使わない、装着していても気づかれにくい入れ歯(デンチャー)「ノンクラスプデンチャー」です。日本ではまだまだ認知度が高くありませんが、一般的な部分入れ歯に抵抗がある方におすすめの「ノンクラスプデンチャー」についてご紹介いたします。

この記事の目次

入れ歯に抵抗がある方におすすめ「ノンクラスプデンチャー」の魅力

1-1 金具がないので「見た目」が美しい!

一般的な部分入れ歯は、金属のバネを残っている歯にかけて固定するため、どうしても金具が目立ってしまいます。そのため、見た目が気になってしまい、大きく口を開けられないと悩む方が多くいらっしゃいます。ノンクラスプデンチャーの特徴は、金属のバネではなく歯茎と同じ色をした樹脂で入れ歯を固定することです。歯茎と同じ色で作られているため、入れ歯を使用していることを周囲から気付かれにくく、大きく口を開けたり笑ったりしても気になりません。ノンクラスプデンチャーの使用は、活動的な生活を送るうえで役立つでしょう。またノンクラスプデンチャーは、柔らかくしなりのある材質で入れ歯を固定するため、しっかりと噛んでもほかの歯への負担が少ないという利点もあります。

 

1-2 薄くて軽く快適!

ノンクラスプデンチャーは一般的な部分入れ歯に比べて薄くて軽い素材で作られているため、装着時の違和感が少なくなります。また、使用する材質によって次のような違いがあります。

 

・スーパーポリアミド樹脂製(ナイロン系)
入れ歯がとても柔らかい樹脂で作られているため、破折がしにくいという特徴があります。また、たわみがあるため歯の出っ張り(アンダーカット)に左右されにくく、適応範囲が広いこともメリットです。ただし、特殊な樹脂を使っているため修理がしにくく、歯肉が痩せてしまったり入れ歯が破損してしまった場合には基本的に入れ歯を作りなおす必要があります。

・ポリカーボネイト樹脂製
一般的な入れ歯(アクリルレジン)と比べて約2倍の硬度と約8倍の耐衝撃性があり、歯肉が痩せたり破損した場合でも修理が可能です。ただし、厚みが必要になるためたわみが少なく、スーパーポリアミド樹脂製よりも適応範囲は狭くなります。

 

1-3 金属を使っていないから金属アレルギーの方も使用可能

一般的な部分入れ歯は、動かないように固定するクラスプに金属を使用しているため、金属アレルギーがある方は使えない場合があります。しかし、ノンクラスプデンチャーは金具を使用しないため、金属アレルギーを持つ方でも装着することができます。ただし、入れ歯が安定しない場合は、入れ歯が沈み込まないように「レスト」と呼ばれる非常に小さな金属の装置が必要になる場合があります。

 

1-4 インプラント治療を受けられない人にもおすすめ

インプラント治療を希望しても、糖尿病や骨粗鬆症、リュウマチなどの理由で治療を受けることができない場合があります。ノンクラスプデンチャーはインプラント治療と同じような見た目に回復できるため、インプラントの治療が受けられないと診断された方には、おすすめと言えるでしょう。また、インプラント治療には長い期間がかかるため、ノンクラスプデンチャーを使って、ほかの人にインプラント治療を受けていることがわからないようにする場合もあります。

 

ノンクラスプデンチャーの注意点

2-1 保険診療では作ることができない

ノンクラスプデンチャーは自費診療(保険外診療)であり、診療費用はすべて自己負担となるため、クラスプと呼ばれる金属バネで固定する一般的な入れ歯よりも費用が高価になります。治療の際は歯医者さんから十分に説明をしてもらい、費用面についてもしっかりと納得したうえで治療を受けましょう。

 

2-2 誰でも治療が受けられるわけではない

ノンクラスプデンチャーは、アンダーカットと呼ばれる歯の出っ張りに入れ歯の床をひっかけて入れ歯を固定します。そのため、出っ張りが少ない場合や、歯の欠損が多い場合、奥歯がまったくない場合など、状態によってはノンクラスプデンチャーを作ることができないこともあります。

 

2-3 樹脂部分が磨り減り入れ歯が不安定になることがある

ノンクラスプデンチャーは樹脂部分で入れ歯を支えるため、取り外しを繰り返しているとアンダーカットへひっかける樹脂部分が磨り減り、入れ歯がゆるく不安定になる場合があります。

 

2-4 使用する材質によっては修理や調整がしにくい

ノンクラスプデンチャーは、材質によっては修理や調整が難しく、定期的に作りなおす必要があります。ただし、「ポリカーボネイト樹脂」でできたノンクラスプデンチャーは、一般的なアクリルレジン製の入れ歯に比べて硬く、裏打ち(リライニング、リベース)と呼ばれる調整や修理ができます。

 

ノンクラスプデンチャーができるまで

3-1 残っている歯の検査と治療を受ける

ノンクラスプデンチャーは残っている歯に樹脂製のフックをかけて固定します。そのため、フックをかける歯が安定していない場合は入れ歯を装着できません。残っている歯は事前に検査して、問題があるようなら治療を受けるようにしましょう。

 

3-2 上あごと下あごの型取りをする

「印象剤」と呼ばれる粘土のようなもので、上あごと下あごの精密な歯型を取ります。印象剤にはさまざまな種類があり、歯医者さんによって使用している材料が異なる場合があります。アレルギーなどが気になる方は、歯医者さんに確認しましょう。

 

3-3 噛み合わせの確認をする

歯型用のワックスを使い、上あごと下あごが噛み合う位置を確認するための歯型を取ります。この型をもとに噛み合わせの高さを調整します。一般的には型取りと別の日に行われますが、作られるノンクラスプデンチャーが小さいサイズの場合は、型取りの日にまとめて取れる場合もあるので、事前に歯医者さんに相談しましょう。

 

3-4 歯の形態などの確認をする

噛み合わせの確認から約1週間後に、ろうなどを使った人工歯を試適(口の中に仮付け)しながら大きさ、形、色や噛み合わせなどがあっているかどうか確認し、最適な状態になるまで研磨するなどの調整を繰り返します。

 

3-5 ノンクラスプデンチャーの完成

試適で調整した人工歯を参考に作ったノンクラスプデンチャーを実際に装着し、装着感や使用感を確認しながら、しっかり噛める状態に最終調整して完成です。最初は締め付けを感じる場合もありますが、通常は少しずつ口の中になじんでいきます。

 ノンクラスプデンチャーは従来の部分入れ歯のイメージを大きく変えてくれるでしょう。これまでに部分入れ歯を使用していて、周囲からの視線が気になってしまったり、装着時に違和感があったり、悩みを抱えていた方は、ノンクラスプデンチャーを使うことで緩和できる可能性があります。ただし、残っている歯の状態によっては治療ができない場合があり、自費診療のため治療費が高額になります。事前に歯医者さんに相談し、費用面や治療内容のことを十分に理解をしてから治療を受けるようにしましょう。

今日、求めていた歯医者さんが見つかる

 

監修日:2017年06月08日
飯田尚良 先生監修
経歴

1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

医院情報
住所:東京都中央区銀座1-14-9 銀座スワロービル2F
電話:03-3563-8000