上下の違いは? 顎の骨の骨折の治療法やリハビリについていろいろ

上下の違いは? 顎の骨の骨折の治療法やリハビリについていろいろ

顎骨(がっこつ)の骨折には主に、下あご、上あご、歯槽骨(歯を支える骨)の骨折が上げられます。軽症の場合には経過観察が主となりますが、顎間固定(上下のあごを動かないように保定する治療)が必要なケースでは、およそ2~6週間の治療期間を要するものです。さらに、治療後には筋肉の衰えなどによるあごの不具合もあるので、リハビリを要します。この記事では、顎骨の骨折について、上あご、下あご、歯槽骨の骨折のケースをはじめ、その一般的な治療法、治療の予後に見られる障害やリハビリなどについて、詳しくご紹介いたします。

 

この記事の目次

1章 あごの骨折にはどんなケースがある?

事故などで顔面を強打した際などにあごの骨が折れてしまうことがあります。あごの骨の部位としては、大きく分けて、上あご、下あご、歯槽骨(歯を支える骨)の三つになります。事故による骨折では、お口の中や外の外傷や歯の外傷を伴っていることが多く、これらすべてが歯科口腔外科で扱う診療内容となります。

 

もっとも多く見られる下あごの骨折

骨折には、事故などによって衝撃を受け骨折する外傷性骨折と、骨の組織自体が炎症や腫瘍などによって壊れる病的骨折があります。あごの骨の骨折は、外傷性骨折が多く、特に上あごよりも下あごの骨が折れるケースが多いものです。症状の特徴としては、一般的な外傷性骨折と同じく、患部の内出血やはれ、変形が見られます。もちろん痛みもあります。これに加えて、口の開閉が困難になる、またはかみ合わせがズレてしまうのも、下あごの骨折の特徴です。

 

重い損傷もありえる上あごの骨折

上あごの骨は、目頭の付近から端に沿ってほおの前面、そして上の歯につながるように広がる骨となります。外傷では、鼻の付近への衝撃や、前歯や下あご側からの衝撃などによって骨折するケースが多く見られます。また、上あごの骨折では、軟組織の外傷や歯の脱臼、破折などを伴うことが多いものです。さらに、上あごに隣接している鼻骨、頬(きょう)骨、口蓋(こうがい)骨、頭蓋底(脳を下から支える骨)の骨折を併発することもあり、特に眼球運動の障害や意識障害、髄液漏れが見られる頭蓋底の骨折では、脳神経外科で扱うべき重い損傷となります。

 

歯がグラグラする歯槽骨の骨折

歯があごの方向にめり込むような衝撃などを受けた場合には、歯を支える骨となる歯槽骨が骨折することもあります。歯槽骨が折れると、歯が支えを失い、近接する2本以上の歯がグラグラと同時に揺れるような症状が見られます。

 

顎骨折の可能性がある症状

重度の骨折では顔の変形も見られるので、見た目でも骨折が分かるものですが、後になってあごの骨折が分かることもあります。軽度の骨折では緊急手術の必要はなく、遅くとも10日以内に処置を受ければ問題ありません。ただし、もし骨折があった場合、そのまま放置してしまうと、骨折部がズレたまま固まってしまう、もしくは骨がくっつかない状態が続くリスクがあります。骨折がある場合には、かみ合わせや口の開閉に違和感があるものなので、すぐに歯科口腔外科で診てもらうべきです。

・歯のかみ合わせにズレや違和感がある
・口が開閉しにくい
・顔面のはれが続く
・内出血がある
・知覚のまひがある

 

2章 あごの骨折での主な治療法

あごの骨折は歯科口腔外科で!

あごの骨折では、歯の外傷や口内の軟組織の損傷を伴っていることが多いものです。歯科口腔外科は、歯の外傷はもちろんあごの骨折にも幅広く対応できるので、あご周辺の外傷では、まず歯科口腔外科に診てもらうことをおすすめします。

 

上あご骨折の治療法

顔の変形や、口の開閉やかみ合わせの障害が見られない場合には、経過観察を主として、基本的に特別な治療を必要としないこともあります。障害が見られる場合には、顎間の固定による保存療法を第一にします。顎間の固定とは、アーチバーと呼ばれる金属のプレートを上下のあごに装着し、さらに上下のアーチバーをワイヤで固定するものです。骨折部位のズレが大きく、このような保存療法で改善が見込めない場合は、骨折箇所をチタンプレートで固定する外科手術を行います。ただし、前述した通り、頭蓋底の骨折を伴っている場合には、脳神経外科での治療がまず優先されます。

 

下あご骨折の治療法

下あごの骨折も上あごと同様に、顔の変形や、かみ合わせ、口の開閉などの違和感といった症状がない場合には、経過観察を主体にします。骨折している部分のズレが大きければ、外科手術によって骨折部位のズレを戻すことが基本となります。これまでは顎間固定が基本治療でしたが、折れた骨をつなぎ、早期に通常の生活に戻れるようにするために手術を行うことが望ましいものとされています。

 

歯槽骨骨折の治療法

歯槽骨の骨折は、上あごや下あごの骨折と比べると重症度は低いものといえます。ただし、歯に衝撃を受けて、歯の脱臼(歯が歯茎から剥がれてしまうこと)や歯の嵌入(歯がめり込んでしまうこと)を伴うので早期の処置が必要です。治療では、歯槽骨が再生するまで矯正治療のようにワイヤを歯に固定します。

 

 

3章 あごの骨折の予後やリハビリについて

あごの骨折はその程度にもよりますが、手足の骨折などと同様に、顎間固定の装置やプレートを外した後もしばらくは不具合が続き、あごを正常に動かせるようにするためにリハビリが必要となる場合もあります。ここでは、あごの骨折治療の予後に考えられる不具合や、リハビリの内容についてご紹介します。

 

顎骨折の予後の不具合

 

・口を大きく開けられない

下あごの骨折では、治療後の顎関節の不具合が起こることもあります。よくあるケースとしては、口を大きく開けられない状態です。ほとんど開けられない場合や、開いても指1本程度しか開かないということもあります。こうした場合には、リハビリが必要となります。

 

・顎関節の不具合

口を開閉したときに、顎関節がカクカク鳴るなど異音を感じることもあります。折れた部位によって、予後の不具合はさまざまですが、顎関節の関節円板(関節のクッション)がズレている可能性もあります。

 

顎骨折後のリハビリ

顎間固定による骨折の治療では、少なくともおよそ2~6週間は口を開けられない状態が続きます。手足の関節と同様に、あごの筋肉も使わない状態が続くと固くなり、動きが悪くなるものです。顎骨骨折後のリハビリは主に使わなくなっていた顎骨の筋肉を動かすもので、口を開ける訓練をおこなう、もしくは開口器という装置を使って口を開ける訓練をサポートします。

 

 

4章 骨折に伴うさまざまな外傷は?

顎骨の骨折の場合、周辺組織にダメージを受けているケースが多く、歯の損傷や口内の軟組織の外傷を伴っているものです。2章でご紹介した通り、歯科口腔外科はこれらをトータルで診療できるものですが、一般的に考えられる骨折に伴った外傷について、ご紹介しておきましょう。

 

歯の損傷

 

・打撲
歯の打撲は、歯に衝撃があったものの、後述する脱臼や破折、嵌入(かんにゅう)に至らない軽症です。歯と歯茎をつなぐ歯根膜が打撲の衝撃によって炎症を起こしている状態で、安静にしていれば自然に治癒できます。

 

・脱臼
歯の脱臼は、歯と歯茎をつないでいる歯根膜が断裂している状態です。部分的に断裂していれば、歯がグラグラと動揺しますし、歯根膜がすべて断裂すれば、歯が抜け落ちることになります。抜け落ちた歯を牛乳や生理食塩水に保存し速やかに処置を行えば、再植できる可能性が高いものです。

 

・破折
歯の破折とは、歯が途中から折れるか、ヒビが入ってしまう状態です。レジンなどで修復できますが、歯髄(歯の神経や血管組織)に及ぶ破折では、歯髄の除去や抜歯が必要となることもあります。

 

・嵌入
歯の嵌入は、歯が顎骨の方向にめり込んでしまっている状態です。歯の位置を戻して固定することで治療できますが、顎骨や歯槽骨の骨折を伴っていることもあります。

 

お口周辺の裂傷

顎の骨折では、唇や歯茎などのお口周辺の軟組織に裂傷があるなど、外傷を伴っていることが多いものです。傷の大きさによっては縫合が必要となり、感染症を予防するため抗菌剤を服用する必要もあります。また、傷口が土で汚れている場合には、破傷風を予防する処置が必要となることもあります。

 

 顎骨が骨折する場合には外からの衝撃によるケースが多く、その場合は当然、歯やその周辺の軟組織の損傷も伴います。外傷というと、整形外科がすぐに思い浮かぶものですが、歯や口内の軟組織、および顎骨の骨折をトータルで診療できる分野は、歯科口腔外科です。特に、歯がすべて脱臼して抜け落ちてしまった場合には、早期の処置によって歯を元通りにすることも可能です。お口周辺の外傷は、まず歯科口腔外科でトータルな診療ができることを念頭に置き、もしもの時のために、住まい周辺の歯科口腔外科をあらかじめ知っておくことが肝心です。

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監修日:2017年09月24日
遠藤三樹夫 先生監修
経歴・プロフィール

出身校:大阪大学
血液型:O型
誕生日:1956/11/09
出身地:大阪府
趣味・特技:料理