口内や舌などが癌になったらと、想像するだけでも、ちょっと怖いものです。他の癌と比べると発生率は低いものですが、食べたり話したりする重要な部分なので、不安になる方も多いと思います。
この記事では、口腔癌とはどのようなものなのか、発生する部位や、その特徴、早期に歯科口腔外科に診てもらった方が良い症状、そして、口腔癌の治療法などについて、詳しくご紹介します。
口内や舌などが癌になったらと、想像するだけでも、ちょっと怖いものです。他の癌と比べると発生率は低いものですが、食べたり話したりする重要な部分なので、不安になる方も多いと思います。
この記事では、口腔癌とはどのようなものなのか、発生する部位や、その特徴、早期に歯科口腔外科に診てもらった方が良い症状、そして、口腔癌の治療法などについて、詳しくご紹介します。
この記事の目次
口腔癌とは、口の中やその周辺にできる悪性腫瘍の総称で、歯科口腔外科で扱う診療分野の1つでもあります。口内にできるがんというと、少し怖い気もするでしょうが、体にできる癌全体を含めると、口内でのがんの発生率はおよそ1%から3%程度となります。
発生する部位によって、呼び方が変わりますが、口腔癌には下記に示すものなどがあります。
・舌癌
舌にできる癌を特に舌癌と呼びます。口腔癌の中でも、舌が癌になるケースが最も多く、口腔癌のおよそ40%を占めるものとなります。
・歯肉癌
歯茎にできる癌が歯肉癌です。口内でできる癌の中では、およそ18%程度で、上顎よりも下顎の歯肉が、癌になるケースが多いものです。
・口底癌
口底とは、舌の下にある下顎部分です。ここにできる癌を口底癌といいます。癌が広がると、周囲の歯肉や舌に転移しやすい特徴があります。
・頬粘膜癌
頬の裏側や唇の裏側の粘膜部分などにできる癌を、頬粘膜癌といいます。全口腔癌の中では、およそ10%程度を占めるものとなります。
・口蓋癌
口蓋とは、上顎の天井部分を指し、ここにできる癌を口蓋癌といいます。舌癌や歯肉癌と比べると、発生率は少ないものですが、癌を見落としやすい部位となっています。
・口唇癌
唇にできる癌が口唇癌です。日本人の口腔癌全体の中では、およそ1%程度の発生率で、唇は癌になりにくい部位といえます。しかし、欧米では口腔癌全体のおよそ25%から40%を占めています。
癌は発生する組織によって、大きく3種類あります。造血器でできる癌と、体の表面組織(上皮)にできる癌、筋肉や骨にできる癌(肉腫)になります。造血器でできる癌には、白血病や悪性リンパ腫、骨髄腫などがあります。体の表面組織(上皮)でできる癌には、肺がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、乳がん、そして口腔癌もその1つです。口腔癌では口内の表面にできるものが多く、見てすぐにそれと分かるという特徴があります。また、肉腫としては、骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫などがあります。
前述した通り、体内で発症するすべての癌の中で、口腔癌はわずか1%から3%程度です。発症率が低いので、あまり神経質になる必要はありませんが、気になるところがあれば、念のため、歯科口腔外科で診察してもらうのが得策です。
口腔がんの初期症状は、口内炎と似ているものです。口内炎は、自然に治ってきますが、口腔癌の場合は、自然に治癒しないものです。2週間以上治らないような口内炎があるなら、歯科口腔外科で診てもらうべきです。また、口内の表面が白くなっている箇所がある場合など、癌の初期段階とも考えられます。口腔癌が疑われる症状は下記のとおりです。
・治りにくい口内炎がある
・口内に固いしこりがある
・口内に出血を繰り返す箇所がある
・唇や口内にピリピリしたしびれや痛みがある
・口内に白や赤くなっている部分がある
・首のリンパ節が長く腫れている
口腔癌の基本的な治療は、腫瘍の摘出、放射線治療、化学療法の3つが主流となっています。良性腫瘍の場合には、腫瘍を摘出する手術が主体ですが、癌は浸潤していると、きれいに切除できないこともあり、転移している可能性もあるので、放射線治療や化学療法を組み合わせる場合もあります。
外科手術は、癌に冒された病巣を切除する手術です。浸潤する性質がある癌は、周囲の組織に入り込んでいるので、癌細胞と正常な組織も含めた安全域といわれる部分を、取り除く手術になります。もちろん、切除する箇所は部位によって異なりますが、お口の中を切除するので、手術後に咀嚼障害(食べ物を噛む障害)、嚥下障害(飲み込む時の障害)、そして、見た目の変形といった後遺症が残ることもあります。また、取り除く範囲が広い場合には、形成外科による修復が必要となることもあります。
放射線治療は、病巣部に放射線を当てることで、癌を小さくしたり、死滅させる方法です。特に、初期のがんで、病巣が小さい場合には、放射線の照射だけで除去することも可能です。
化学療法は抗がん剤などを投与して、癌の勢力を弱める治療です。化学療法を用いるのは、3つのケースがあります。外科手術では切除できない場合や、手術前に腫瘍の活動を抑える場合、手術後に転移の可能性のあるがんを死滅させる場合があります。
口腔癌に限らず、癌は早期発見と早期治療が肝心です。口腔癌の初期のステージⅠであれば、5年生存率がおよそ9割程度と高いものなので、早期発見が第一です。口腔癌は口内を見て分かるものがほとんどなので、その多くは、歯科の治療中に見つかることが多いものです。従って、定期的に歯のチェックを行っていれば、発見される確率も高くなります。また、口腔癌の検診もあります。
口内の組織の表面が、黒っぽく変色する癌を、悪性黒色腫といいます。主に、口蓋(上顎の上部)や上顎の歯肉に発生することが多いものです。悪性黒色腫は、リンパや血液を通じて、体の各所により転移しやすい性質があります。
悪性リンパ種は口内だけでなく、体の各所にも見られる造血器にできる種類の癌です。リンパ節から発生するものと、そうでないものとがありますが、口腔内にできる悪性リンパ腫は、主にリンパ節外でできるものです。悪性リンパ腫は、歯肉や顎の骨、鼻腔とつながる上顎の空洞(上顎洞)などに見られます。
悪性唾液腺腫瘍は、唾液腺が通じる管(耳下腺、顎下腺、舌下腺など)にできる腫瘍です。発生する部位によって症状がことなりますが、主に、痛みやしびれ、神経の麻痺を引き起こします。
口腔癌は、口の中にできるだけに、内蔵の癌などと異質な怖さがあると思います。病巣を切除するとなれば、食事や発話に支障をきたさないか心配ですし、もちろん、他のがんと同様に、浸潤や転移が怖いものです。
他のすべてのがんと比べると、発生率は1%と低いものですが、口腔内をきれいにしているにも関わらず1~2週間経ってもなかなか治らない口内炎、微熱を伴い何度も繰り返す口内炎、何もしていないのに歯茎から出血が出る場合や口の中のしこりがある場合、あるいは口の中でしびれが続くような場合には早めに歯科口腔外科で診てもらいましょう。
歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学