歯周病菌の除去方法や先進治療を知れば歯周病は怖くない!

歯周病菌の除去方法や先進治療を知れば歯周病は怖くない!

歯周病は、歯をなくす理由の第1位と言われています。歯周病の原因となるのが歯周病菌です。一生を健康な歯で過ごすためにも、歯を失う大きなリスクをもたらす、この歯周病菌について、詳しく知っておく必要があります。

 

そして、歯周病が重度に達するまでに、どのような症状が現れるかを知り、できるだけ症状が重くならないうちに、歯周病菌を減らすことに努めるべきです。セルフケアを含め、一般的な治療から先進的な治療法まで、歯周病菌に対処する方法について、詳説いたします。

 

この記事の目次

1.歯周病菌とは何?その種類や影響を知ろう

歯周病は歯周病菌がもたらすもの、ということは知られています。しかし、そもそも歯周病菌とはどんなものなのでしょうか?また、どんな悪影響があるのか、歯周病菌にも種類があるのについても、ここでご説明しましょう。

 

1-1 歯周病菌とは何なのか?

歯の表面は薄い皮膜に覆われていますが、これは唾液中の糖タンパクが作る皮膜です。この皮膜の糖分を使って、虫歯菌が増殖し、ネバネバした物質を作り出し、そこを住処とします。

さらに、その住処に様々な細菌が侵入して、細菌の塊が生まれます。これが、プラーク(歯垢)と言われるものです。プラークには、善玉菌も悪玉菌もありますが、特に、歯周病の原因菌となる悪玉菌が歯周病菌です。

 

1-2 歯周病菌のもたらす毒素

歯周病菌は、リポポリサッカライド(LPS)という物質を放出し、これが、歯肉や歯槽骨といった歯周組織にダメージを与える毒素となります。また、この毒素は歯周組織だけにとどまらず、血流で全身を巡り、心疾患や脳卒中などとの関連性もあると報告されています。

 

1-3 軽い歯肉炎をもたらす歯肉縁上プラーク

歯周病菌は分かっているだけで10種類以上あると言われ、棲みつく場所によっても種類が変わってきます。歯と歯茎の境目の歯垢は、歯肉縁上プラークと呼ばれ、ここに棲みつく歯周病菌は、軽度の歯周病となる歯肉炎を引き起こします。

 

1-4 重度の歯肉炎をもたらす歯肉縁下プラーク

歯と歯茎の間の、歯周ポケットにたまったプラークを、歯肉縁下プラークと呼びます。歯周病菌は酸素を嫌うので、空気に触れにくい、歯周ポケットの奥深くや、プラークが固形の塊となった歯石内部を好んで増殖します。

 

2.軽度から重度まで、歯周病菌がもたらす10の症状

歯周病菌の毒素が引き起こす歯周病は、症状が進行すると、最終的には歯を失う結果となります。その最悪の結果に至らないためにも、軽度から重度まで、歯周病のさまざまな症状をぜひ知っておきましょう。

 

2-1 軽度の症状

歯茎の腫れ

歯茎の腫れは、歯周病のもっとも軽度な症状の現れです。歯周病菌の侵入を防ぐために、免疫細胞を含む血液が集まってきて、通常はピンク色の歯茎が、赤く腫れてくるのです。

 

歯茎からの出血

歯周病菌の侵入を防ぐために集まってきた血液が、腫れを引き起こし、やがて出血を招きます。ブラッシングやデンタルフロスの刺激で、すぐに出血するようなら、歯周病の進行を疑ってみるべきでしょう。

 

2-2 中度の症状

歯石の付着

放置しておくと、歯周病が急激に悪化する可能性が高くなるのが、歯石の付着といえます。プラークは菌の塊のようなものですが、これに唾液や血液などが混じり、固まってしまったものが歯石です。酸素を嫌う歯周病菌の、格好の住処となります。

 

歯茎が後退する

歯周病が最も怖いところは、歯を支える土台となる歯槽骨を溶かしてしまう点です。歯茎は骨を覆うように形成されていますが、その骨が溶けることに伴って、歯茎も後退していきます。

 

食事中に歯がしみる

歯は大きく分けて、表面のエナメル質とその内側の象牙質、および血液や神経が通う歯髄で構成されています。歯茎に覆われた部分は象牙質になっており、歯茎が後退すると、この象牙質がむき出しになるので、食事のときの刺激で歯がしみるようになります。

 

歯茎からの膿と口臭や痛み

歯槽骨が溶けてくると、歯と歯茎の間に隙間が生じてきます。これが歯周ポケットと言われるものです。ここには、プラークが溜まりやすく、酸素を嫌う歯周病菌も増殖しやすくなります。歯周病菌と血液の免疫細胞が、常に戦っている状態となり、痛みが生じて膿を排出し、口臭も気になるようになります。

 

2-3 重度の症状

歯がグラつく

歯を支える歯槽骨が、歯周病菌の毒素に冒されて後退すると、歯茎が後退するばかりではなく、やがて歯を支える土台が弱くなり、歯がグラつくようになります。

 

咀嚼時の痛み

歯が動くほどに歯槽骨が溶けたまま放置しておくと、グラつきがどんどん大きくなり、固いものが噛めなくなってきます。そして、噛むたびに、痛みが出るようになります。

 

歯並びの変化

歯槽骨が溶けて後退し、歯がグラグラしてくるということは、歯の位置自体も動きやすくなっている状態です。従って、放っておくと、歯並び自体も変わり、倒れこんだり、重なりあったりと乱杭状態になってきます。

 

神経が死に最後に歯が抜ける

虫歯の場合は歯に穴が開くことで、歯髄に細菌が入り込んで、神経が死んでしまうことにつながります。一方、歯周病は歯槽骨が溶けることで、歯の根に細菌が入り、放置しておくと、神経が死んでしまう結果となります。最悪の結果として、歯を完全に失うことになります。

 

3.歯周病菌とたたかう日々の基本と治療法

歯周病菌を一度完全に取り除いたら、その後一生、歯周病とは無縁になるということはありません。いつもプラークを除去し、歯石が付いたら、定期的に歯科医で取り除くことが、歯周病とたたかう基本です。

 

3-1 プラークを毎日取り除くこと

善玉菌も悪玉菌も含め、口内の菌の塊を形成しているプラーク。この中には、歯周病菌がいつも存在します。プラークは日々生まれるものなので、これを毎日しっかりと取り除くことが肝心です。毎日のブラッシングは、自分でできる予防であり、治療でもあるといえます。

 

3-2 歯周病菌の温床となる歯石を除去

プラークが固形化したものが歯石ですが、歯石の表面は軽石のようになっており、酸素を嫌う歯周病菌が増殖しやすくなります。定期的に、歯科医にスケーリング(歯石の除去)をしてもらい、歯石をそのままにしないことが大切です。

 

3-3 深いところにある歯石も除去

歯石は歯の表面だけでなく、歯周ポケットを通じて、歯と歯茎の間に生じることもあります。超音波振動や細い器具を使ったディープスケーリングという歯石の除去処置は、歯周ポケットが4ミリ以内の深さであれば、対応可能です。

 

3-4 重度の歯石には歯肉剥離掻爬術

歯周ポケット内の5ミリ以上の深さに歯石がある場合には、歯茎の隙間から歯石を除去するのが困難となります。その際には、歯茎を切開して、歯石を取り除きます。これが、歯肉剥離掻爬術(しにくはくりそうはじゅつ)です。

 

4.歯周病菌を抑える先進の治療方法

日々のブラッシングによるプラークの除去をしつつ、歯周病菌とのたたかいに期待が持てる先進の治療方法もあります。

 

4-1 専用マウスピース「3DS」を使った治療

自分の歯型に合わせた専用のマウスピースを作り、そこに薬を入れて、歯周病を殺菌する方法で、3DS(Dental Drug Delivery System)と呼ばれています。

 

4-2 良い菌を増殖させるプロバイオティクス

抗生物質で細菌を死滅させるのではなく、善玉菌を増やして、歯周病菌の勢力を弱める治療法もあります。これがプロバイオティクスです。タブレットを舐めることで、善玉菌を活性化します。

 

4-3 ファンギゾンシロップによるブラッシング

もともとは、消化管の真菌感染に使用する薬ですが、歯周病菌にも有効であると言われています。歯磨き後に、ファンギゾンシロップを口に含んで、口内に行き渡らせ、およそ30分うがいをせず、そのまま飲み込みます。

 

4-4 歯槽骨の再生療法

歯周病菌によって、歯槽骨が後退している場合には、歯槽骨を再生する治療法もあります。減退した骨に、エドムゲインという特殊なタンパク質を使うことで、骨を再生させます。ただし、骨が全体的に後退してしまった場合には、新たに骨を再生することはできません。

 
プラークは毎日発生し、その中に歯周病菌も存在します。従って、毎日しっかりとプラークを取り除くことが、ケアの基本です。歯周病菌がもたらす症状を頭に入れておけば、歯茎の腫れや出血といった、軽度の異変にも、すばやく対処できるはずです。

また、先進の治療方法も試す価値ありです。歯のグラつきや噛むと痛いといった症状など、重い自覚症状に至る前に、“先手必勝”で歯周病菌とたたかっていきましょう。
 

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監修日:2017年12月11日
伊丹太郎 先生監修
プロフィール

目指したきっかけ:医療には関心あったが、やはり一番は両親の教育が大きかったのではないかと思う。
やりがい:大学のときは他の職種とは違う特殊性に惹かれていたのですが、実際歯科医になってからはお礼を言われる部分です。