口内の疾患は、粘膜の表面に見られるものが多く、見た目で異常がすぐ分かるので、一般の歯医者さんで偶然発見されることも少なくありません。また、舌であれば、普段から鏡で見ていれば、自分でも異常を発見しやすい部位といえます。
この記事では、まず特に舌が黒くなる病変で考えられる疾患についてご紹介し、赤や白といった色の異常などを引き起こすさまざまな疾患や、健康的な舌の状態などについても、詳しくまとめました。
口内の疾患は、粘膜の表面に見られるものが多く、見た目で異常がすぐ分かるので、一般の歯医者さんで偶然発見されることも少なくありません。また、舌であれば、普段から鏡で見ていれば、自分でも異常を発見しやすい部位といえます。
この記事では、まず特に舌が黒くなる病変で考えられる疾患についてご紹介し、赤や白といった色の異常などを引き起こすさまざまな疾患や、健康的な舌の状態などについても、詳しくまとめました。
この記事の目次
一口に、舌が黒くなるといっても、さまざまな原因があります。深刻な疾患ではないケースが多いですが、中には、悪性腫瘍によって舌が黒くなることもあるので、注意が必要です。舌が黒くなるさまざまな原因について見ていきましょう。
黒毛舌とは、舌の表面のひだの部分が黒くなることです。黒い毛が舌に生えているように見えるのでそう呼ばれています。これは抗生剤の長期服用や唾液の減少、体の抵抗力の低下などによって、引き起こされます。あるいは、口腔内を不潔にしていると起こることもあります。
口腔内の細菌のコントロール状態が悪くなり、菌交代現象として黒色色素をつくりだす嫌気性菌や真菌類が増殖したことで発症します。
肌にシミができるのと同じく、舌や口内にメラニン色素が沈着して、黒くなることがあります。ホルモンバランスの影響などによるもので、単なるメラニン色素の沈着であれば、肌のシミと同様に、病気ではありませんが、副腎皮質の機能が低下するアジソン病の可能性もあります。
舌の内出血によって、舌の一部が黒くなることもあります。俗にいう血豆で、表面が腫れて、赤黒いできもののような感じになります。黒毛舌やメラニン色素の沈着とは、見た目が違うのですぐに分かりますし、多くの場合、舌を噛んでしまうなどの外傷が原因です。
ワインやイカスミ、ブルーベリーなど色の濃い飲食物で舌が黒くなったり、サプリメントの鉄分とお茶などに含まれるタンニンが結合して、黒くなることがあります。どちらも一時的なもので、舌のブラッシングなどで、すぐに落とすことができます。
血管腫によって、舌の裏の血管付近が黒ずんで見えることがあります。血管腫とは、血管に似た細胞が異常に増殖している良性のできものです。口内では、舌をはじめ、唇の裏側や頬の粘膜などにも見られます。
舌が黒い症状で、もっとも気をつけなければならないのが悪性黒色腫です。別名メラノーマと呼ばれ、メラニン色素を多く含みますが、メラニンが沈着したシミとは違い、炭のように真っ黒になります。主に、歯茎や口蓋(上顎の裏部分)にできるものですが、舌の奥や側面などにも現れます。口内に強い黒色の部分があるなら、すぐに歯科口腔外科で診てもらうべきです。
舌のトラブルは、どの診療科で診てもらうべきか迷うところですが、口内のさまざまなトラブルは、まず歯科口腔外科で診療してもらいましょう。歯科口腔外科は、口内やお口の周辺、顎、頬、顔面などの疾患を幅広く扱っており、的確な診断が可能です。
舌が黒くなる原因は、黒毛舌によるものが多いものです。メラニンの沈着や血豆などとは見た目も違うので、視診でもすぐに分かります。黒毛舌は、フロリードゲルという薬剤を口に含むことで治療しますが、原因が服用中の抗生物質によるものであれば、薬を見直す必要があります。
血管腫は良性のものなので、症状が進行することが少なく、経過観察を行う形になります。もし血管腫が大きい場合には、外科手術で切除することが基本ですが、レーザーを使って取り除く方法もあります。
悪性黒色腫は癌の一種であり、他の癌と同様に、異常増殖、浸潤(近接した組織に広がること)、転移(血管やリンパ管を通じて離れた部分に広がること)という特徴があります。特に、悪性黒色腫は転移する可能性が高く、転移が見られる場合には、患部の外科手術による切除とともに、放射線治療や化学療法なども併用されます。
飲食物の着色の場合は、舌のブラッシングによって、舌の汚れを落とすことができます。舌専用のブラシや、舌専用のクリーナーなどもあります。
黒くなる以外にも、白や赤など舌の見た目の色などに、さまざまな異常をもたらす疾患があります。ここでは、主に色や模様に特徴のある舌の疾患について、ご紹介しましょう。
舌に白い斑点ができる皮膚病の一種が白斑症です。原因ははっきりと分かっていませんが、遺伝や免疫疾患によって起こるといわれ、別名で白なまずとも呼ばれています。
白板症は、舌の側面などの粘膜が、白く角質化して固くなり、こすっても剥がれないもので、舌以外に、頬粘膜や歯肉などにも見られます。癌化のリスクがあるので、精査した上で切除したり、経過観察が長期に渡って必要になったりします。
主に、舌や歯茎にできる疾患が紅板症です。患部の表面は、鮮やかな赤色でビロード状で、表面は平滑な病変です。境界は明瞭なものが多くみられます。また、多くの症例で刺激痛が認められます。癌化するリスクは白板症よりも高く、およそ50%程度の割合で、癌になるといわれています。口内炎や外傷などによる紅斑にも似ているので、的確な診断が必要です。
病変は白く、白斑症と似ていますが、白斑が徐々に広がって、編み目状になったりレース状になる様子が見られます。また、白くなった粘膜は角化し、その周囲が赤くなり、潰瘍(粘膜のえぐれ)ができたり、接触痛も出てきます。
カンジダ菌が原因となる疾患ですが、白い苔状で、主に舌や頬などに発症します。白い苔はこすると剥がれますが、進行すると剥がれにくくなったり、剥がすと出血が見られたりするようになります。
淡い紅色の周囲を白く縁取るような病変が進行し、次第に地図のような模様が広がるのが、地図状舌です。原因は、ビタミンB群の不足やストレスなどが上げられていますが、はっきり特定されていません。自覚症状はほとんどなく、少ししみる程度です。数週間で自然に治ることもあれば、数年間続くこともあります。
さて、疾患がなく健康的な舌とはどんな見た目でしょう。おそらく、誰もがきれいなピンク色の舌を想像すると思いますが、それは違います。健康的な舌は、その表面を白い舌苔(苔状の付着物)が薄く覆って、白みがかって見えるものなのです。詳しく見ていきましょう。
ピンク色の舌は、きれいに見えますが、舌の健康状態としては、望ましくないものです。実は、ピンク色の状態は、紅舌(こうぜつ)と言われ、お口の中が熱っぽく感じたり、酸っぱい感じの口臭をもたらします。舌の表面の新陳代謝が悪い高齢者の方にも、ピンク色の舌が見られるものです。
舌苔というと口臭の大敵のように思わていますが、健康的な舌には、舌先1センチくらいのところから、奥に向かって白い舌苔が薄く付着しているものです。舌の新陳代謝が正常に行われている証拠でもあります。ただし、舌苔が厚く舌を覆っているような場合には、味覚が変わったり、口臭の大きな原因にもなります。
舌が黄色く見えるケースもあります。黄色みがかって見える舌は、主に舌苔が黄色いことによるものです。歯周病がある人や、喫煙習慣のある人は黄色い舌苔になるもので、口内環境が良好とはいえません。
この記事では、特に舌の色に関連する疾患についてご紹介しました。特に、黒い色が強く口蓋にも見られた場合には悪性黒色腫の疑いもありますし、白く角化する白板症や、赤くビロード状になる紅板症は、癌化するリスクもあるので注意が必要です。
ここでは、色の異変を中心にまとめましたが、しこりができたり、潰瘍やびらん(粘膜の軽度なえぐれ)ができたり、水疱のように膨らんだりとさまざまな異変もあります。気になる舌の異常があれば、すぐに歯科口腔外科で診てもらいましょう。
【お口の粘膜異常、外傷などの相談・治療ができる歯医者さんを予約】
歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学