歯の役割ってなに?
1‐1 乳歯と永久歯
乳歯は生後6~7か月ごろから生え始め、上下10本ずつ合わせて20本が2~3年の間で生えそろいます。乳歯には食べ物を噛む、言葉を正しく発音する、顔の表情に影響を与えるという機能の他に、永久歯が生えるための目印という機能もあります。乳歯は永久歯に比べ石灰度が低く虫歯になりやすい傾向があるので、虫歯などで歯を抜いてしまうと永久歯は生えてくる場所が分からず、歯並びの悪さを招く原因になります。
1‐2 永久歯ってなに?
永久歯は、乳歯が抜けてしまった後に生えてくる歯です。永久歯の数は、親知らずも含め上下合わせて32本あります。個人差はありますが、6~7歳ごろから乳歯が抜け始め、それから6~7年かけて永久歯へと生えかわります。永久歯には、中切歯、側切歯、犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯の8種類あります。永久歯は生えかわることなく、一生使用します。
1‐3 永久歯の生える順番は?
永久歯の生える順番には個人差がありますが、目安として
1)中切歯、第一大臼歯
2)下の側切歯、上の中切歯、上の側切歯
3)犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯
4)第二大臼歯
の流れで生えてきます。その後、永久歯28本が生えそろった18歳ごろから25歳ごろに第三大臼歯(親知らず、智歯)が生えてきます。この第三大臼歯は、生えてこない人やきちんと生えてこない人もいて、乳歯が生えていなかった一番奥に生えてきます。
1‐4 乳歯と永久歯の関係
乳歯は、永久歯が生えてくるころに歯根が永久歯に吸収され、自然に抜けていきます。このように乳歯と永久歯が混在する時期を混合歯列期といいます。この時期は、乳歯が抜けていないのに永久歯が生えてきてしまったり、乳歯が抜けたのに永久歯が生えてこなかったりなど、さまざまなトラブルが生じやすい時期です。この時期の歯の状態を健康に保つことは、正常な永久歯の形成のために重要といえます。
1‐5 永久歯の役割
永久歯の主な役割としてあげられるのは「噛む」ことです。噛むことには、消化吸収の効率を良くしたり、脳に刺激を与える役割があります。また、顔の美しさに関係したり、言葉の発音を助ける役割も持っています。
親知らずって?
2-1 親知らずとは?
親知らずとは、18歳~25歳ごろに生えてくる第三大臼歯です。別名智歯ともいわれます。大臼歯の中でも一番奥に生えてきます。親が知らないうちに生えてくるという意味から、親知らずとも呼ばれています。親知らずは必ずしも生えてくるわけではなく、遺伝などの理由で生えてこない人もいます。
2-2 親知らずの歴史
親知らずが正常にまっすぐ生えてきて、かみ合わせにも問題なく、痛みなどもない場合は、毎日の歯のブラッシングを怠らないように努め、虫歯や歯周病にならないように気をつけましょう。また、このまま抜かずにいても問題がないか、トラブルが起こる前に一度歯医者さんに相談しておきましょう。
2-3 トラブルの多い親知らず
親知らずは、奥歯のさらにその奥に生えてきます。その生えてくる場所から様々なトラブルを引き起こします。親知らずがまっすぐ正常に生えず斜めに生えている場合は、歯のブラッシングがちゃんと届かず、虫歯や歯周病になったり、隣の歯根を吸収してしまうこともあります。また、親知らずが生えていないようにみえても、骨の奥で横向きに生えているケースもあります。
2-4 親知らずが20代で生えてきたときのケア
20代で生えてきた場合でも、親知らずがまっすぐ正常に生えていてかみ合わせにも問題なく、痛みなどもなければ、日々のお手入れに注意し虫歯や歯周病にならないように気をつけましょう。また、このまま抜かなくても良いのか、一度歯医者さんに相談しておきましょう。
2-5 親知らずが30代で生えてきた時のケア
親知らずは30代でも生えることがあり、生え方によって30歳ごろにはじめて生えていたことに気づく場合もあります。30代になると抜歯による歯周病のリスクも高くなるので、毎日の歯磨きはもちろん、虫歯や歯周病などになっていないか、歯医者さんで定期的に検査してもらいましょう。
正しい親知らずと永久歯の生える位置
3-1 親知らずは真ん中から8番目の歯です
永久歯は全部で32本、歯の種類は全部で8種類あります。親知らずは真ん中から数えて、8番目の歯です。ごくまれに、親知らずの下から永久歯が生えてくる場合もあるので、歯医者さんできちんと診てもらうことが大切です。
3-2 正しい親知らずと永久歯の本数
一般的な歯の本数は、永久歯が32本(親知らずを抜くと28本)、乳歯は20本あります。近年の食習慣の変化で柔らかい食べ物を食べる割合が増えたことで顎があまり発達しないことも多く、32本入るスペースが確保できない人もいます。
3-3 抜歯の必要がない親知らずについて
親知らずは一番後ろの永久歯です。第二大臼歯の後ろ側のスペースにまっすぐ適した大きさで生ええてきた場合は、通常痛みなどのトラブルはなく親知らずが永久歯としてきちんと機能します。
3-4 永久歯が足りない場合がある?
生えてくるべき永久歯が足りない状態を先天性欠如と呼びます。最近は増加傾向にあり、通常生えているはずの永久歯がないため、乳歯がうまく抜けず長期間残ってしまったり歯並びに不具合が起こったりします。
3-5 逆に永久歯が多すぎる場合もある
反対に、28本より多く歯が生えてくる「永久歯過多」になる場合もあります。この場合、ここに親知らずが4本生えてくるかたちになってしまうので、さらにスペースが足りなくなってしまいトラブルが起きやすくなってしまいます。
親知らずを抜歯した方が良いケース
4-1 親知らずが虫歯になっている
親知らずが斜めに生えてきた場合、その形状から歯磨きがしにくくなるため、隣の歯や親知らず自身に虫歯が起こりやすい傾向があります。ひどい虫歯の場合は治療してもまた虫歯を繰り返すケースも多く、治療の難易度が高い虫歯になります。
4‐2 親知らずの一部が生えているが、これ以上生える見込みがない
親知らずが中途半端に生えていて歯の一部だけが見えている場合、食べ物のカスが詰まりやすく、不潔になりがちです。不潔な状態になると歯肉に炎症が生じ、歯周炎となり痛みや腫れを繰り返すことが増えてきます。
4-3 親知らずが横向きに埋まっていて、隣の歯に影響がある
親知らずが横向きに埋まっている場合は、隣の歯(第二大臼歯)の根っこを吸収してしまうケースや、歯並びに影響するケースがあります。また、歯周病や、歯肉炎が起きる原因となる可能性もあります。
4-4 親知らずの周りに嚢胞がある
レントゲン撮影をしたとき、骨に埋まっている親知らずの周りに黒い影がうつることがあります。これは嚢胞(のうほう)と呼ばれるもので、一般的には症状がなく歯医者さんでレントゲンを撮ってもらったときに初めて指摘されるケースが多いです。しかしこれが大きくなると、感染などのトラブルが起きやすくなります。
4-5 親知らずに噛み合う相手がいない
歯は互いに噛み合う相手がいないと、どんどん伸びていきます。噛み合う相手がいない親知らずが伸びてくると、頬の粘膜を傷つけたり、噛むときに歯茎にあたり痛みが生じる場合があります。
親知らずを抜かなくて良い場合
5-1 親知らずが、上下噛み合っている
親知らずが上下正常に噛み合っている状態で、さらに虫歯や歯周病でもなく、きちんとまっすぐに生えている場合であれば、抜歯しなくて問題ありません。正常に生えている親知らずは歯磨きもしやすいので、毎日のケアを怠らなければトラブルが起こる可能性も少ないでしょう。
5-2 親知らずが顎の骨の中深くに埋まっている
親知らずが顎の骨の深くに埋まっている状態で、周りの骨や歯に影響していない場合は、抜かなくても問題ないでしょう。また、親知らずが深い位置に埋もれている場合の抜歯は非常に難しく、あごの骨の中の大きな神経や血管を傷つける可能性があるため注意が必要です。
5-3 親知らずの隣の歯にひどい虫歯がある
親知らずの隣の歯がひどい虫歯になっている場合や重症の歯周病になっている場合は、親知らずがなくなると奥歯の本数が足りなくなり、食べ物を噛むことができなくなってしまいます。虫歯になった歯を抜き、親知らずを残すことがあります。
5-4 親知らずをブリッジの支点に使用している
ブリッジとは、歯がなんらかの理由で失われてしまったときに失った周囲の歯を削って橋のような被せもの(支台装置)と人工歯が連結したものを入れる治療です。親知らずの隣の歯を抜歯して、ブリッジの支台として親知らずを使用している場合は抜くことはできません。
5-5 親知らずを移植する
どこかの歯が悪くなり、抜歯が必要となったとき、親知らずをそこへ移植することができます。親知らずの移植は、自分の歯なので拒絶反応がなく、自然な噛みごこちが得られます。しかし、必ずしも移植できるとは限らないので、治療を検討する場合は歯医者さんに相談しましょう。
親知らずは永久歯のため、一度抜いたら二度と生えてきません。そのため、抜歯には抵抗がある方も多いでしょう。親知らずの生え方や生えてきた場所によっては抜歯は必ずしも必要ではなく、むしろ、抜歯することでトラブルが起こることもあります。
また、抜歯の後遺症として下歯槽神経の麻痺が残る場合があるので、事前説明をきちんとしてもらい、リスクについても十分納得したうえで抜歯をしてもらいましょう。インフォームドコンセントを重視している歯医者さんであれば、抜歯に関しての事前説明にはほとんどのケースで応じてもらえます。親知らずを抜歯した方がいいか迷っている方は、まずは歯医者さんで相談してみましょう。
【今日、求めていた歯医者さんが見つかる】
監修日:2017年08月08日
髙橋貫之 先生監修
経歴
2003年 大阪歯科大学 卒業
2003年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 入学
2007年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 終了
2008年 大阪歯科大学 勤務
2016年 大阪歯科大学(歯周病学 助教)退職
2016年 本町通りデンタルクリニック 勤務