親知らずのまわりに膿が…!?歯茎の炎症を抑えるための知識を総まとめ

親知らずのまわりに膿が…!?歯茎の炎症を抑えるための知識を総まとめ

多くの人が、人生の中で「親知らずの抜歯」を経験しています。おかしな生え方をした親知らずは、さまざまなトラブルの要因になるからです。

◆斜めに傾いた状態で生えてきた…
◆一部が歯茎に覆(おお)われたまま…

多くの人は、親知らずに何らかの問題を抱えています。現代人は顎(あご)が小さくなってきていて、親知らずがまっすぐ生えるだけのスペースがないのです。
さて、「斜めの親知らず」「歯茎に埋もれた親知らず」は歯茎の炎症を引き起こすことがあります。悪化すると、周囲が大きく腫れたり、膿が出てきたりします。この記事では、「親知らずの周囲から膿が出てくる」という症状を扱っています。

 

この記事の目次

1.炎症・膿・虫歯…!斜めの親知らずはトラブルの原因に!?

顎(あご)のスペース不足により、現代人の親知らずがまっすぐ生えてくることは少なくなりました。斜めに生えてきたり、ほとんど真横を向いていたりします。
親知らずが傾いて生えてくるとき、多くは隣の歯(第二大臼歯)の方向に傾きます。

「隣接面に汚れが溜まりやすくなる」「歯茎が腫れやすくなる」などの問題が生じます。傾いた歯があると、「歯がきれいに並んでいる状態」ではなくなります。結果、歯ブラシの届きにくい部分が出てきて、衛生管理が難しくなるのです。
特に管理が大変なのは、「親知らずの一部が歯茎に覆われている場合」です。歯茎の裏側をブラッシングすることはできませんから、どうしても汚れが溜まっていきます。

 

1-1 歯垢は、細菌の塊(かたまり)

うまく歯磨きできない箇所には、どんどん歯垢が溜まっていきます。歯垢は細菌の塊(かたまり)なので、口の中に「細菌の巣」ができたようなものです。
ときどき、歯垢を「食べかす」と勘違いしている人がいますが、実際には違います。歯垢は約80%が水分で、残り20%が有機質です。そして、歯垢に含まれる有機質のほとんどは「細菌」と「細菌の分泌物」になります。そのため、事実上は「歯垢=細菌の塊(かたまり)」と表現して差し支えないのです。

 

1-2 細菌が歯茎に感染~智歯周囲炎

さて、親知らずの周りで細菌が増え続けると、どうなるでしょうか? 増え続けた細菌が、とうとう歯茎に感染します。歯茎が赤く腫れる「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」を発症するのです。
通常は「歯茎が腫れて痛む」といった症状にとどまりますが、長期化すると、親知らずの周囲から膿が出てくる…などの症状をきたします。このような「親知らず周辺の炎症」を「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」と呼びます。

 

2.腫れ・膿が出たらどうなる? 智歯周囲炎の治療法

親知らずのまわりに「腫れ・膿」などの症状が出てきた場合、どのような治療をおこなうのでしょうか? ここからは、智歯周囲炎の治療法を解説したいと思います。

 

2-1 対症療法~抗生物質の服用

細菌感染による炎症なので、抗生物質の服用で炎症を抑えることができます。口の中に棲む複数の菌による感染症なので、幅広い菌に作用する「ペニシリン系」「セフェム系」の抗生物質を使うのが一般的です。
ただ、抗生物質による消炎は、あくまでも対症療法に過ぎません。抗生物質で炎症を抑えても、高い確率で智歯周囲炎は再発します。歯垢が溜まり、細菌を増殖させる要因がなくなっていないからです。もちろん、歯垢が溜まる要因は「斜めに生えた親知らず」です。

 

2-2 根本治療~親知らずの抜歯

そこで、いったんは抗生物質で炎症を抑え、患部が落ち着いたところで親知らずを抜歯する…というのが一般的な治療方針になります。炎症がひどいと麻酔も効きづらいので、「まずは炎症を抑えてから抜歯する」という順番です。
斜めの親知らずが存在する限り、智歯周囲炎は再発する傾向にあります。炎症の再発を防止するためには、原因歯(親知らず)を抜歯するしかありません。

 

3.なぜ、親知らずを抜歯するのか…?

基本的に「斜めに生えた親知らず」「一部が歯茎に覆われた親知らず」は、抜歯の対象になります。斜めの親知らずは智歯周囲炎に加えて、次のようなトラブルを引き起こす原因になるからです。

 

3-1 隣接する歯を巻きこんで虫歯になる

親知らずと隣接するのは第二大臼歯です。親知らずが不自然に傾いていると、「親知らずと第二大臼歯の隣接面」がきちんと磨けなくなり、2本まとめて虫歯になる例が出てきます。親知らず1本を抜歯すれば済んだのに、2本まとめて虫歯になる…というのは、大きな問題です。

 

 

3-2 全体の歯並びを乱す

また、歯は自分が向いている方向に生えますから、斜めの親知らずは斜めに伸びます。傾いた親知らずは、大半が第二大臼歯の方向に傾きます。そのため、第二大臼歯をグイグイ押すようにして生えてくることがあるのです。
歯は強く押されると移動しますから、強く押された第二大臼歯は手前に移動します。手前に移動した第二大臼歯は、さらに手前の歯を押すことになるでしょう。こうして、連鎖的に全体の歯並びが崩れていくのです。

 

3-3 第二大臼歯の寿命を縮める

親知らずが「横向きに近い角度」で生えてきた場合、第二大臼歯の寿命を縮める恐れがあります。親知らずが第二大臼歯の歯根(歯の根っこ)を圧迫するからです。歯根は、強く圧迫されると溶けて短くなっていきます。その結果、第二大臼歯の根がだんだん短くなってしまうのです。これを「歯根吸収」と言います。
歯根の短くなった歯は、寿命が縮む傾向にあります。歯が抜けやすくなるからです。親知らずが第二大臼歯の根本を圧迫している場合、早めに抜歯しなければなりません。親知らず周辺の炎症―智歯周囲炎を放置すると、歯茎が腫れて膿を持つことがあります。さらに悪化すると、顔が左右非対称になるほど大きく腫れることも…。親知らずのまわりが腫れている…と気づいたら、なるべく早く歯医者さんを受診して、原因歯を抜歯するようにしてください。

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監修日:2017年12月11日
貝塚浩二 先生監修
経歴

1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年 (医)友歯会ユー歯科 箱根、横浜、青山、身延の診療所に勤務
1984年~1994年 アクアデルレイ ダイビングショップ 非常勤スタッフ
1985年 コージ歯科 開業
1996年 日本大学松戸歯学部生化学教室研究生
~2002年 歯学博士
2014年 昭和大学  客員講師
現在に至る