親知らずの抜歯は一般の歯科でも扱っていますが、場合によっては歯科口腔外科で扱うべきものもあります。抜歯をするのが難しい、いわゆる難抜歯のケースがそれにあたります。抜歯の難易度は、上顎か下顎かによっても異なりますし、まっすぐ生えているのか、横向きに生えているのか、完全に生えているのか、などによっても変わってきます。
この記事では、まず上顎の親知らずについてご紹介した上で、さまざまな難抜歯のケースや親知らずを抜くべき理由、抜かなくても良い親知らずなどに関して詳しくお伝えいたします。
親知らずの抜歯は一般の歯科でも扱っていますが、場合によっては歯科口腔外科で扱うべきものもあります。抜歯をするのが難しい、いわゆる難抜歯のケースがそれにあたります。抜歯の難易度は、上顎か下顎かによっても異なりますし、まっすぐ生えているのか、横向きに生えているのか、完全に生えているのか、などによっても変わってきます。
この記事では、まず上顎の親知らずについてご紹介した上で、さまざまな難抜歯のケースや親知らずを抜くべき理由、抜かなくても良い親知らずなどに関して詳しくお伝えいたします。
この記事の目次
親知らずの抜歯は、上顎か下顎か、あるいは生える方向や顎の骨に埋没している程度によっても、難易度が変わります。一般的に、解剖学的な骨格の形態の差などから、上顎の親知らずは下顎と比べると抜きやすいことが多いです。
とはいえ、ほぼ埋伏している場合は意外に操作がしづらいために時間がかかることもあり、上顎洞に大きく穿孔したりすると即時閉鎖術をせねばいけないケースなどもあり、一概に下顎より簡単だといいきれるものではありません。
下顎と比較すると上顎の方が骨が緻密ではないため、麻酔液が浸透しやすく、その結果麻酔が効きやすいです。また下顎の親知らずが生える位置は、後方の骨が顎の関節方向に立ち上がっていて(いわゆるエラの部分)、後ろ方向に歯を抜く空間的余裕がありませんが、上顎の親知らずが生える位置は、上顎結節と呼ばれる上顎の骨の最後方で、そこより後ろには骨がないため、後ろ方向に倒して抜きやすいのです。
また、上顎では下顎の親知らずを抜歯する際に注意すべき知覚神経との近接などのリスクもありません。 ただし、上顎の親知らずでもほとんど歯茎に隠れていて、抜く際に切開が必要なケースでは、頬骨が邪魔になって極めて術野が見えづらく、抜歯の器具や後の歯茎の縫合の器具が操作しにくくて、意外に時間がかかってしまうこともあります。
上顎洞は、鼻の両サイドから奥へと広がる上顎の空洞で、鼻腔に通じている最大の空洞です。上の親知らずは、この上顎洞に近いため、抜歯する際に骨が欠けて、抜歯した穴がこの空洞につながってしまう場合があります。これを上顎洞穿孔といいます。欠けた骨は新たに再生され、自然に穴が塞がってきますが、上顎洞内に細菌が侵入して、上顎洞炎という炎症を引き起こす場合もあります。
上顎の親知らずをはじめ、難易度の低い抜歯は一般の歯科でも行っていますが、難易度の高い抜歯の手術は、主に歯科口腔外科で扱います。また、難易度の低い親知らずの抜歯であっても、歯科口腔外科であれば、例えば血が止まらないとか、上顎洞に穿孔してしまった、歯根の先端が折れて残ってしまった…などの色々な偶発的な事故に対しても、より整った環境や器具、またそのような状況に対する対処の経験値で、より心配のない施術が受けられるでしょう。
親知らずで抜歯が難しくなるケースとしては、歯が完全に生えていない埋伏歯や、下顎の親知らずです。歯科口腔外科が得意とする難抜歯のケースを、具体的にご紹介しましょう。
下顎の親知らずは、下歯槽神経に近接していたり、神経が絡まっていたりするケースがあります。下歯槽神経とは、下唇や顎の知覚神経で、これを傷つけると下唇や下顎の感覚が鈍くなったりすることもあります。知覚神経なので、顎が麻痺するようなことはありませんが、このようなケースは、主に歯科口腔外科で扱うものとなります。歯科用CTを完備している歯科口腔外科であれば、神経組織の3次元的な位置関係を正確に把握できるので、より精度の高い抜歯が可能です。
顎の骨に埋まった歯を、埋伏歯といいます。親知らずは、埋伏歯になるケースが多く、さらに大きく斜めに傾いていたり、真横に向いていたりするものを水平埋伏歯といいます。水平埋伏歯の抜歯では、歯の生えている方向に沿って抜こうとすると、手前の歯(第2大臼歯)が邪魔になって、素直に抜けてはくれません。まず歯肉を切開し、歯を切断して分割しながら抜くような手術を行います。
歯肉から露出せず、顎の骨の中に完全に埋まっている状態を、完全埋伏歯といいます。このような親知らずの場合には、歯肉の切開だけでなく、顎の骨を削る必要もあります。従って、水平埋伏歯で部分的に露出しているケースよりも、抜歯の難易度が高くなります。ただし、骨の奥深くに埋まっている場合には、あえて抜歯しなくても良いケースもあります。
抜いた方が良い親知らずは、さまざまなトラブルを引き起こしているもの、あるいは、将来的にトラブルをもたらす可能性があるものです。ここでは、親知らずを抜くべき具体的な理由について詳しく説明します。
親知らずは、第2大臼歯(親知らず以外で一番奥の歯)よりもさらに後ろに生えてくるため、歯ブラシが届きにくく、歯垢や歯石がたまりやすくなります。また、中途半端に生えていて、歯肉が親知らずの一部を覆っている場合には、歯肉の間に汚れや食べかすがたまりやすくなります。こうした箇所が、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。
親知らずは、生え方によっては食べかすなどの汚れがたまり、歯垢がつきやすくなります。歯垢は口内の細菌の固まりで、その中には悪臭を放つガスを発生する菌も存在します。親知らず周辺が不衛生になれば、こうした菌が増殖しやすくなり、口臭の原因にもなってしまいます。
親知らずの周辺に、歯周病菌が増殖すると、親知らずの歯周病である智歯周囲炎にもかかりやすくなります。慢性的な炎症や出血、腫れや痛みを引き起こし、周囲に膿がたまれば、強い口臭の原因にもなります。
日本人は顎のアーチが狭いので、28本の永久歯でもきれいに並ぶには、スペースが足りないケースが多いものです。これに加えて、上下4本の親知らずが生えると、歯のスペースがさらに狭くなり、既存の歯列を圧迫して、歯並びが悪くなる可能性があります。
特に、水平埋伏歯の場合は、第2大臼歯を前方に押すような方向に生えてくるので、この歯を痛めるリスクも出てきます。歯は強く継続的に圧迫されると、歯根の吸収(歯根が細って減少すること)が起こります。親知らずに圧迫されると、第2大臼歯の歯根が吸収され、歯が弱くなったり、最悪の場合には歯を失う可能性もあります。
トラブルを引き起こしている、あるいは、引き起こす可能性が高い親知らずについては、抜歯が推奨されます。しかし、抜かなくても良い親知らずもあります。顎のアーチが広く、親知らずが健全に生え、さらに歯として機能しているのであれば、無理に抜く必要はありません。そのあたりの見極めも、歯科口腔外科で判断してくれます。抜く必要のない親知らずの条件は、以下の3点です。
第2大臼歯を圧迫することなく、まっすぐに生えていることが、抜歯をしなくてもよい一つの条件となります。歯列を圧迫しないのであれば、第2大臼歯の歯根吸収や、歯列の乱れなどが、将来的に起こりにくいと考えられるからです。
歯肉が半分覆いかぶさっていたりすることなく、完全に生えていることも条件の一つです。歯肉が被さっていなければ、そこに汚れがたまりにくく、セルフケアもしやすくなるので、虫歯や歯周病にかかるリスクも少なくなります。
上記2つの条件を満たした上で、上下の親知らずがしっかりと噛み合っているならば、いうことなしです。歯としてきちんと機能しているのであれば、あえて抜歯する必要はありません。
上顎の親知らずの抜歯は、下顎と比べると比較的難易度が低いといわれていますが、場合によっては上顎洞炎などになるリスクなどもあり、決して下顎よりも簡単であるともいいきれません。そのため、一般の歯科でも抜歯ができることもありますが、より心配のない抜歯を行うために、やはり歯科口腔外科を受診した方が良いでしょう。
トラブルを引き起こしていたり、将来的に起こしかねない親知らずは抜くべきですが、問題がなければ抜く必要がありません。そのあたりの判断も、歯科口腔外科でしてもらうようにしましょう。
出身校:大阪大学
血液型:O型
誕生日:1956/11/09
出身地:大阪府
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