痛くない親知らずは抜かなくても良い?その判断基準とリスク

痛くない親知らずは抜かなくても良い?その判断基準とリスク

親知らずは18歳ごろになると歯の一番奥に生えてくる歯です。この親知らずについて、特に痛くない場合でも抜いた方がよいとされる説も耳にします。噛み合わせなどに問題がなければ無理に抜く必要はありませんが、場合によっては痛くない場合でも抜いた方がよいケースも存在するのです。

親知らずには生え方がいろいろあり、そのケースによって対処法を考える必要があります。痛くない状態の親知らずを抜かなくてもよいケース、また抜いた方がよいケースとはどのようなものでしょうか。

この記事の目次

1.親知らずのケースによります

1-1 生え方や噛み合わせで変わる

親知らずが痛くない状態でも抜いた方がよいかそうでないかは、親知らずの状態によります。生え方や噛み合わせの状態によって、それぞれ考えるべきなのです。

親知らずは本来、上顎と下顎に合計4本生えてくるものですが、人によってはすべて生えそろっていない、半分だけ頭が出ている、横向きに生えているなど、さまざまなケースが見られます。状態によっては歯磨きがうまくできずに汚れがたまってしまったり、虫歯や歯周病の原因になってしまったりすることがあるのです。

また、親知らずによって噛み合わせや歯並びのバランスが悪くなっている場合も、将来的に歯や顎などのトラブルになるかもしれません。

今は特に問題がなくても、将来的に虫歯や歯周病、噛み合わせのトラブルが起こるリスクが高まる可能性が考えられます。痛くない状態でも、親知らずの生え方や噛み合わせの状態によっては抜くことをおすすめするケースがあるのです。

自分の親知らずは抜いた方がよいのか、それとも抜く必要がないのかは医師に相談してみましょう。レントゲンやCTなどの検査を受け、親知らずがどのような状態になっているかを詳しく見た上で判断してもらえます。

2.親知らずを抜かなくてもよいケース

2-1 まっすぐ生えている

親知らずがすべてまっすぐな状態で生えている場合は、親知らずをわざわざ抜く必要はないでしょう。きれいな歯並びの状態なら歯磨きするときにも磨きにくいことはあまりなく、汚れをきれいに取り除くことができます。日頃のケアをしっかり行える状態でまっすぐ生えている親知らずなら、特に問題はないといえます。

2-2 親知らずが歯として機能している

親知らずがしっかりと生えていて、上下の噛み合わせもしっかりとしている場合、歯の機能にも問題がないと考えられます。そのため、上下の親知らずがしっかりと噛み合わさっている方も、親知らずを抜く必要はありません。

また前歯などの部分で噛み合わせが十分でない方の場合、親知らずをはじめとした奥歯の噛み合わせによってバランスを保っていることもあるため、親知らずを抜くと逆に噛み合わせを乱してしまう可能性もあります。

2-3 抜くことにより神経が傷つく恐れがあるとき

親知らずの根が奥深くまで達している場合、抜かなくてもよいというよりは、抜くと逆に危険というケースもあります。歯の周辺には重要な神経や血管が張りめぐらされています。特に下顎の親知らず付近には、下顎管と呼ばれる太い神経や血管が通った管があり、傷つけると顎のしびれが残ったり、大量に出血したりといった事態に陥ってしまうのです。

親知らずの根が奥深くまであるなどの場合、抜くことによって下顎管を傷つけてしまう可能性が高くなり、大きなリスクを伴うため、親知らずを抜くのは避けた方がよいでしょう。

3.痛くなくても抜いたほうがよいケース

3-1 親知らずが横向きに生えている

親知らずがまっすぐ生えているのではなく、横向きなどに傾いて生えている方は抜くことをおすすめします。傾いて生えている親知らずの手前の歯が問題なく機能していても、汚れがたまりやすくなってしまい、手前の歯にまで影響を及ぼすこともあるのです。

また手前の歯を押したような状態で生えている親知らずも、歯並びをくずす原因となります。正常な歯並びを保つためにも抜いた方がよいでしょう。

3-2 親知らずが歯周病の原因となっている

親知らずの生え方がまっすぐではなかったり、また途中まで生えて一部が歯茎の中に埋まっていたりといったケースでは、歯磨きでのケアがしにくくなるだけではなく、親知らずと歯茎の間に食べかすなどがたまりやすくなります。

その結果、親知らず付近に歯周病が発生するケースも多いのです。このように、親知らずが歯周病の原因となっている場合は抜いた方がよいでしょう。親知らずが原因の歯周病は、特に智歯周囲炎と呼ばれます。このような診断名が存在するほど、親知らずが歯周病の原因となるケースは多いのです。

3-3 噛み合っていない場合

上下の親知らずがしっかりと噛み合っておらず、歯としての機能を果たしていない場合も、親知らずを抜いておくことをおすすめします。特に生え方が不十分だったり、傾いていたりなどといった状態の場合、その部分でうまく噛むことができずに、噛んだときの力のバランスがくずれてしまいます。

その結果、顎に負担をかけて顎の形自体がゆがみ、歯並びが悪くなる原因にもなります。また顔の形も変わってしまうことがあるのです。

4.抜くのであれば早いほうがよい

4-1 歯周病への悪化を防ぐ

親知らずは、状態によっては常に歯周病のリスクにさらされているといってもよいでしょう。そのままにしておいて将来的に歯周病が悪化した場合、親知らずの抜歯を含めて治療が難しくなるのです。また歯周病が進めば麻酔の効きが悪くなり、治療中に激しい痛みを感じることにもなってしまいます。

さらに、親知らずを残した状態で歯周病を治療できたとしても、また再発する可能性は大いにあるのです。リスク因子を少しでも早く減らすためにも、抜いた方がいい方は早めに対処するのがおすすめです。

4-2 回復力が若い年齢のほうが高い

年齢が若ければ若いほど傷や炎症が治るのも早くなります。親知らずを抜く治療は歯茎に大きな穴を作ってしまうため、この穴ができるだけ早くふさがる方が痛みや腫れなども回復しやすく、さらに細菌感染などのリスクが少なくて済むわけです。もし親知らずに問題があるようなら、できるだけ若い年齢のうちに抜いておく方が、後々のトラブルを回避できる可能性が高くなります。

4-3 神経へのリスクが少ない

前の章で触れたとおり、親知らずの周辺には太い神経や血管が通っている下顎管があります。親知らずの根が深く張ってしまった状態では、親知らずを抜いたときに下顎管を傷つけてしまう危険があるため、抜歯は避けるべきです。

しかし、まだ親知らずの根が発達しきっていない若い年齢の場合は、その分下顎管を傷つけるリスクが少なくなり、より安全に親知らずを抜くことができるのです。歯が成長しきってしまうのは20歳くらいですから、それまでに抜いておくのも1つの方法です。

4-4 痛みや腫れが少ない

傾いて生えている親知らずの場合、そのまま抜くことが難しくなりますから、歯を割って取り出したり骨を削ったりする必要があります。歯が成長しきった成人ではもちろん歯や骨が硬く丈夫になっていますから、こうした手術を行うのが困難になり、強い痛みや腫れが起こる場合があるのです。まだ歯の成長途中の20歳前くらいの年齢であれば歯や骨が比較的柔らかいため、手術もしやすくなります。その結果、大きな痛みや腫れを最小限に抑えることができ、手術も簡単に終えられるのです。親知らずはまっすぐ正常に生えているなら特に問題はない歯ですが、人によってさまざまな状態があり、生え方や噛み合わせがイレギュラーになっているケースも多く見受けられます。その状態が歯周病や噛み合わせのズレを引き起こす可能性が高いため、親知らずは抜いておいた方がよい場合が多いのです。

また、年齢が早いうちに抜いておけば後々のリスクを回避することにもつながります。その他、矯正治療を行っている場合にも、せっかく整えた歯並びを後戻りさせる原因になりますし、妊娠中に親知らずのトラブルが起きてもすぐに抜くことができなくなるといった問題も出てきます。

親知らずが残せるならよいですが、痛くない状態でも生え方や噛み合わせに問題があるようなら、早めに親知らずの対処を行っておきましょう。

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監修日:2016年08月09日
飯田尚良 先生監修
経歴

1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

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