親知らずは生え方によって抜歯の方法が異なります。この記事では、その方法について詳しく紹介し、抜歯するべきかどうかの判断基準も併せてお伝えしていきます。
自分の親知らずはどの部類なのか、まずは歯医者さんで適切な診断を行ってもらい、十分なプランのもとで治療を進めてもらいましょう。
親知らずは生え方によって抜歯の方法が異なります。この記事では、その方法について詳しく紹介し、抜歯するべきかどうかの判断基準も併せてお伝えしていきます。
自分の親知らずはどの部類なのか、まずは歯医者さんで適切な診断を行ってもらい、十分なプランのもとで治療を進めてもらいましょう。
この記事の目次
親知らずの抜き方は生え方によって時間や使う器具、方法などが大きく変わってきます。また、痛みに対する耐性や精神力など、患者さんの気持ちや恐怖心によって、一気に処置する場合や、少しずつ慎重に行う場合など。100人居れば100通りの抜き方があるのが現状です。
しかし、ある程度処置する内容を把握しておくことで、抜歯に対する心構えもだいぶ変わってくることでしょう。まずは、一番基本的な、まっすぐに生えている親知らずの抜き方についてご説明していきましょう。
まっすぐ生えた親知らずの抜き方は、他の歯とさほど変わりがありません。一番シンプルで比較的簡単に処置が終わります。親知らずが生えている歯茎に麻酔を打ち麻酔が効いたら抜きます。
抜歯をする前には必ずレントゲンを撮ります。なぜなら、親知らずがどのような状態で生えているのかを必ず確認する必要があるからです。一見まっすぐ生えているように見える親知らずでも、根元の部分が曲がっている可能性もありますし、下側の親知らずの場合、神経に近い部分に生えている可能性があるので、まっすぐ生えている親知らずでも抜歯前には必ずレントゲン撮影をして、目視できないところまでチェックする必要があるのです。
親知らずの抜歯の際に使用する麻酔には2種類あります。表面麻酔と部分麻酔です。
表面麻酔とは歯茎の表面部分に行う麻酔です。ガーゼなどで歯茎に塗って使用し、鈍化させることで表面麻酔は部分麻酔による痛みを軽減させるのが目的です。
一般的に言われている麻酔は、部分麻酔を指します。親知らずが生えている個所の歯茎に直接針をさします。最近では細い針を使用したり、麻酔液を人肌に温めたりすることで痛みを和らげる処置を行っています。
まっすぐ生えている親知らずであれば、抜歯の際はへーベルと呼ばれるドライバーに似た外観の器具を使います。このへーベルを歯と骨の隙間に差し込み、てこの原理を使って歯を脱臼させて抜きます。このへーベルもさまざまな種類があるので、親知らずの状態によって使い分けをします。
抜歯が終わったらガーゼを噛んで止血し、休息をとります。血が止まって、体調不良も起こさなければ全ての行程が終了です。なかには、医師の判断により歯茎を糸で縫い合わせるケースがあります。
糸は自然に溶けてなくなるものとそうでないものがあり、溶けない糸で縫合した場合は約1週間後に抜糸をします。また、抜歯後の口の中の状態や傷口の状態によっては、数日後に消毒をする場合もあります。
続いて、斜めに生えてしまった親知らずの抜き方についてご紹介していきましょう。実は、親知らずはまっすぐ生えてくることは稀で、そのほとんどが斜めに生えていたり、先端がほんの少し顔を出し残りの大部分が歯茎に埋まってしまっている状態なので、まっすぐ生えている親知らずより少しだけ時間がかかってしまいます。
十分な空きスペースがない場所に親知らずが生えてくると、隣の奥歯にぶつかるような形で斜めに生えてきます。一度斜めに生えてしまった親知らずが再びまっすぐな状態になることはありません。
また、斜めに生えているのでどうしても歯ブラシが全てに届かないので、汚れが溜まりやすくなり、虫歯や歯肉炎にかかりやすくなります。このような親知らずを抜く場合は、まっすぐ生えた親知らずより多少時間はかかりますが、それほど難しい処置ではありません。
斜めに生えた親知らずは、生え方によっては全体が見えないために歯茎を切開する必要があるケースも。その際はメスを使って歯茎を切開します。切開と聞くとどうしても恐怖心が出てきてしまいますが、処置の間は麻酔が効いていますので痛みを感じることはありません。麻酔が切れたあと痛みが出た場合は、処方される鎮痛剤を服用するようにしましょう。
親知らずがまっすぐ生えていない場合に、抜く際に横の歯が邪魔をしてしまうケースもあります。その際は歯を削るなどして分解します。歯を削って細かくして少しずつ取りだしていくのです。この時も少し振動などを感じる場合がありますが、麻酔が効いているので痛みはまったくありません。
横の歯が邪魔で抜けなかった部分を取り除いたら、残りの歯をへーベルを使って抜歯します。ここまできたらあと一息です。医師は、歯の神経を傷つけないように、注意深く処置を行ってくれます。ここまでで、だいたい、30分から1時間弱の時間を要するのが一般的です。
抜歯後は切開した歯茎を縫合し、ガーゼを噛んで止血します。血が止まり、気分も悪くなければ、帰宅です。
また、翌日に傷の状態の経過観察と消毒で受診する必要があります。また、鎮痛剤の他にも抗生物質等のお薬が処方されますので、それらはきちんと飲みきるようにしましょう。
横向きに生えている親知らずは歯磨きが非常に難しいので、虫歯や歯周病になりやすくなってしまいます。また、横向きに生えている親知らずが隣の歯を押してしまうので、歯並びにも大きく影響が出てしまいます。
歯や口の中に影響がなければ放置していてもかまいませんが、痛みがあったり歯並びが気になるようであれば、思い切って抜歯することをオススメします。ここでは、横向きに生えた親知らずの抜歯の流れをご紹介していきましょう。
親知らずは、全ての歯が生え揃った後に生えてきます。そのため、生えるスペースがなくなってしまい、その結果横向きに生えてしまうことがあります。水平に生える生え方にも2パターンあり、骨の中に全ての歯が埋まってしまっている状態と、ほんの少し一部分だけ出てきている状態です。この場合は抜歯するのに少し手間がかかってきます。
横向きに生えてしまった親知らずは、大部分が歯茎に埋まってしまっているため、歯茎を切開する必要があります。歯茎を切開して、中に埋まっている歯の状態を確認してから処置をする必要があるのです。
横向きに生えてしまった親知らずは横の歯を押している状態なので、まっすぐに抜くことができません。そのため、必要に応じて歯を分割する必要が出てきます。歯を細かく砕いて、少しずつ取り除いていきます。
細かく砕いた歯を取り除いたら、最後に残っている歯を抜歯します。奥の歯は、神経部分や血管の近くに生えている場合が多いので、それらを傷つけないように、慎重に抜歯していきます。
抜歯後の流れはまっすぐに生えた親知らずや斜めに生えた親知らずと同様、傷口を縫い合わせた後ガーゼを噛んで止血して、問題がなければ終了です。歯茎を切開しているので、翌日に傷口の消毒および確認、抜糸が必要な場合は約1週間後に抜糸が必要です。
横向きの歯を抜歯した際は強い痛みが2日から3日続きますので、処方されたお薬をしっかりと飲むようにし、あまりに痛みが続くようなら医師に相談しましょう。
親知らずにもさまざまなタイプがあり、親知らずが生えたからといって必ずしも全て抜かなければいけないわけではありません。タイプによっては抜かずにそのままにしておいても問題がない親知らずもあります。
次に、タイプ別、抜くべき親知らずと、抜かなくてもいい親知らずをご紹介していきます。仮に抜かなくてもいい親知らずでも、口の中の状態は変わっていきます。しっかりと毎日のケアを行い、定期健診は必ず受けるようにしましょう。
・まっすぐ生えていない親知らず
横向きや斜めに生えている親知らずは歯並びにも影響し、ブラッシングがきちんとできずに、歯周病や虫歯を引き起こすリスクが、高くなってしまいます。
・虫歯になってしまっている親知らず
親知らずが虫歯になっている場合は、虫歯の治療をするのではなく、抜歯をしてしまったほうがいいでしょう
・親知らずが腫れたり痛みがある場合
親知らずが炎症を起こして腫れてしまったり、痛みがある場合は、確実な治療は抜歯のみです。
では、抜かなくてもいい親知らずとはどのような親知らずなのでしょうか。一般的に、他の歯や歯並びなどに影響がない場合はそのまま抜かずに置いておくケースが多いようです。
・まっすぐ生えてきている親知らず
・歯磨きをしっかりできている親知らず
・骨の中に埋まっており出てくる可能性が低い場合
このような場合は、将来矯正や義歯の土台として利用することができる場合があるので、抜かなくてもいい場合があります。しかし、これも医師がレントゲン等で歯の状態を詳しく観察して判断することですので、自己判断はやめましょう。
親知らずを抜歯する前にしっかりと事前準備をしておきましょう。当日の体や気持ちの負担がずいぶんとかわってきますし、処置中のトラブル回避のためにも必要です。この章では、抜歯の前に特に気をつけておきたいことを3つ紹介していきます。
抜歯をする際に使用する麻酔は肝臓で分解されます。前日に飲酒をしてしまうと、肝臓に負荷がかかり過ぎてしまいます。前日に飲酒するのは控えるようにしましょう。
抜歯は心身にストレスをかける処置ですので、体調はしっかりと整えておきましょう。睡眠は十分にとるようにして、前日の激しい運動は避けましょう。また、女性は生理の日と重ならないように気をつけましょう。
丁寧に歯磨きをして口の中は清潔にしておきましょう。口の中をキレイにする事で、抜歯後に感染症を起こすリスクがグッと低くなります。また、ブラッシングで歯茎が引き締まった状態だと、傷の治りが早くなる効果も期待できます。抜歯の前にはしっかりと歯磨きをしておきましょう。抜歯はすすめられてもなかなか決断に躊躇してしまうことがありますが、詳しい方法がわかれば、恐怖心も大幅に軽減されるのではないでしょうか。しっかり医師と相談して、快適なデンタルライフを送りましょう。
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る