インプラント治療後のMRI検査は本当に危険なの?

「インプラント治療後のMRI検査は危険では!?」と不安に思っている方はいらっしゃいませんか。インプラント治療では、顎の骨にチタンやチタン合金製のネジを埋め込むため、検査に悪影響を及ぼすのではないかと心配される方が多いでしょう。実際には、インプラント治療後もMRI検査は問題なく受けられますし、検査結果に悪影響を及ぼすこともほとんどありません。この記事ではインプラント治療を検討されている方が少しでも安心して治療を受けられるよう、MRIをはじめとした各種検査とインプラントとの関係について詳しくお伝えしていきます。ぜひ治療時の参考にしてください。

 

この記事の目次

インプラント治療の方法とは

1-1 インプラント治療の方法と治療の流れ

虫歯や歯周病などにより失った歯の機能を取り戻すため、顎の骨にチタンやチタン合金製のネジを埋め込み、その上に人口歯を被せる治療をインプラント治療といいます。インプラントは、天然の歯と見間違うほど自然で、しっかりと噛めることから近年では人気の治療法の1つになっています。
治療の主な流れは以下の通りです。
1.初診時のカウンセリング
インプラント治療に対する患者さんの要望や疑問を確認します。
2.検査・診察
口内環境を調べるために、診察とレントゲン・CTなどの各種検査を行います。
3.治療計画と説明
患者さんごとに立てた治療計画を元に、詳しい治療方針の説明を行います。
4.インプラント手術
患者さんが治療方針に同意した場合には、人口歯の土台となるインプラント(人口歯根)を埋め込む手術を行います。
※手術は1度に行う場合と、2度に分けて行う場合があります。
5.被せ物の製作・装着
口内の型どりを行い、インプラントの上に装着する人口歯を製作、装着します。
6.メンテナンス
インプラントの状態や噛み合わせ、骨の状態や歯ぐきの炎症の有無などを定期的に調べます。
またインプラントを長く快適に使うために、虫歯や歯周病の予防処置として、クリーニングも行います。

 

インプラントと各種検査について

2-1 インプラントとMRI検査

MRIは磁力を利用して画像を撮影する検査です。MRI検査で金属類がNGである理由は2つあります。1つは、金属類がMRIの磁力で引き寄せられ、装置を破損させる恐れがあること、もう1つは金属類がMRIの画像にアーチファクトというノイズを発生させることです。

しかし近年、歯科インプラントに使われる主な素材は非磁性体であるチタンやチタン合金となっており、MRIの磁力による影響を受けることはありません。インプラント治療後のMRI検査は、ほとんどのケースで問題なく受けられることが分かっています。

 

2-2 注意が必要なケース

人口歯をマグネット(磁石)で装着しているインプラントに限っては、少し注意が必要です。マグネットが磁力による影響を受けるとともに、MRI検査時の画像にも乱れを起こす恐れがあるからです。

マグネットタイプのインプラントの多くは、上から被せた人口歯にマグネットが付いているため、簡単に取り外すことができます。ただし、土台になっているインプラントの先にマグネットが付いているケースでは、歯医者さんにしか取り外せない場合があります。自分のインプラントがどのようなタイプなのか、マグネットを使っているのかどうかが不明な方は、MRI検査を受ける前に必ず治療を行った歯医者さんに確認しましょう。

 

2-3 インプラントとCT検査

CT検査とは、ぐるりと360度、あらゆる方向からX線を照射することで、体の内部がどうなっているかを撮影する検査です。CTを撮る時にアクセサリーなどの金属類を外すよう指示されるのは、金属がX線を通しにくく、光が乱反射したような像が写り、体内をきちんと撮影できないからです。これは、銀歯のような口内の詰め物や被せ物でも同様です。

ただしインプラントに使用されているチタンはX線を吸収しにくいため、画像が大きく乱れることはありません。そのためCT検査でインプラントが特に大きな影響を及ぼすことはないでしょう。マグネット式のインプラントについては、診断に影響が出るほどではありませんが、画像が乱れる可能性があります。マグネット部分を取り外したうえで検査を受けることをおすすめします。

 

2-4 インプラントとその他、各種検査

歯医者さんでは、インプラント治療後にも、インプラントや、周りの歯、骨の状態を調べるためレントゲン検査を行っています。MRIやCT検査はもちろん、レントゲン検査にも大きな影響はないとされています。またPET検査やエコー検査などの各種検査も手術前と同じように問題なく受けられるでしょう。

 

インプラントに対する不安や疑問

3-1 よく聞くインプラントの噂、本当?

「インプラント手術は危険で、手術の痛みもひどいらしい」「異物を体内に埋め込むのだから、拒否反応が出るに違いない」など、ちまたにはインプラントの悪い噂があふれていますが、実際のところを知りたい方も多いでしょう。

まずインプラント手術についてですが、外科手術なのでリスクがゼロというわけにはいきませんが、手術の規模としては親知らずの抜歯とそう変わらないものになります。また手術の痛みに関しては、術中は麻酔で、術後は痛み止めで十分抑えられる程度のものです。異物を埋め込む拒否反応についてですが、インプラントには、生体親和性が高いチタンが使われており、骨と自然に結合し、体の一部としてしっかり機能してくれることが分かっています。その安全性は、人工関節の材料として多くの方に利用されていることからも明らかでしょう。

そうはいっても、やはりインプラントの埋め込み手術は顎の骨を削る必要があり、内部の神経や血管を傷つけないよう精密で慎重な手術を行わなくてはなりません。インプラントを含め、幅広い知識と技術を持つ歯医者さんで治療を受けることをおすすめします。これからインプラント治療を受けたいと思っている方や、インプラント治療に対する疑問や不安をお持ちの方は、認定にも資格の更新にも厳しい条件を課している、日本口腔インプラント学会の専門医や指導医に相談してみてはいかがでしょうか。

 

3-2 「歯科インプラント」と正確に伝えるようにしましょう

インプラント治療を受ける患者さんの増加とともに、歯科インプラントを理由にMRI検査を断られることは、ほとんどなくなりました。もしインプラントを理由にMRI検査を断られたら、治療を行った歯医者さんにすぐ相談をしましょう。

自分のインプラントの素材や術式について確認できるとともに、必要があれば、MRI検査に問題がないことを書面にしてもらうこともできるからです。またMRI検査の前に、検査技師に体内にインプラントがあるかどうかを尋ねられたら、歯科インプラントであることを必ず申告してください。インプラントとだけ申告すると、心臓ペースメーカーや人工内耳と勘違いされることがあり、その2つはMRIを断られる可能性があるからです。

 歯科インプラントの普及とともに、近年では、MRI検査を含め一般的な検査を断られることは減りつつあります。しかしマグネット式のアタッチメントを使用している場合など、注意が必要なケースもあります。検査を受ける前には、インプラントの素材などについて、あらかじめ治療を受けた歯医者さんに確認しておくようにしましょう。また、MRIやCT検査の前には、担当医師や検査技師に「歯科インプラント」を使用していることを申告し、あわせて使用素材についても申告するようにしてください。

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監修日:2017年06月25日
鄭尚賢 先生監修
経歴

歯科医歴:11年
出身校:東京歯科大学