えっ、外れちゃった?あらかじめ知っておきたい!インプラントが外れる4つの原因と対処法

「インプラントが外れる」といっても、その理由はさまざまです。ここでは「インプラントを入れて数か月で外れる」「インプラントを入れて数年後に外れる」「インプラントの土台が外れる」「インプラントの被せ物が外れる」といった4つのケースをとりあげ、それぞれの原因と対処法をご紹介していきます。
インプラントがすでに外れてしまっている人はもちろん、これからインプラントを入れる予定の人も予防のために知っておきましょう。

 

この記事の目次

インプラントを入れて数か月で外れるケース

1-1 インプラントが骨に結合していない

インプラントを埋め込んでから2~3か月以内など短期間のうちに外れたり抜けたりしてしまう場合には、人工歯根が骨にうまく固定していない可能性が高いでしょう。
インプラントは今はネジ釘のように顎の骨にねじ込むタイプがほとんどですが、ネジの嵌合力で固定されるのは初期の段階だけです。その後にインプラントの表面の構造と周囲の骨が結合して骨性癒着し、しっかりと固定されるようになります(これをオステオインテグレーションと言います) それにはある程度の期間が必要になってきます。
しかし、なんらかの原因で骨にうまく固定がされないと抜けてしまうのです。

 

1-2 原因:骨の状態や技術の問題

インプラントを埋めた部分の骨の状態や手術の技術、衛生上の問題に原因があると考えられます。インプラント手術を行う前にCTスキャンなどで骨量や骨密度を調べなければなりませんが、その検査を怠ってしまうと骨の状態によってはインプラントが固定されない事態が起こり得るのです。
インプラント手術は本来、外科の知識や経験が豊富なインプラント専門医、もしくは歯科口腔外科専門医が行うものでした。
しかし、インプラントが普及するにつれて外科に関する知識や経験の乏しい一般の歯医者さんが通常の診療室でインプラント手術を行うケースが増えてきたのも要因と考えていいでしょう。
技術や経験がともなわない歯医者さんが施術をすると、インプラントが骨と正常に結合しないことが多いのです。

 

1-3 対処法:手術のやり直しを検討

手術をしたにもかかわらずインプラントが顎の骨にくっつかなくて外れてしまった場合には、もう一度手術を受けて埋め直す必要があります。その際、もし歯医者さんのスキルに問題があると感じたならインプラント専門医や口腔外科専門医のいる歯医者さんを改めて探してみても構いません。

 

インプラントを入れて数年で外れるケース

2-1 「インプラント周囲炎」になってしまった

インプラントを埋め込む手術を受けてから数年以上たってから外れてしまう場合には、インプラント周囲炎になっている可能性が高いでしょう。歯周病で歯が抜け落ちるように、埋め込んだ位置の顎の骨が溶けてしまい、インプラントも抜けてしまうことがあるのです。

 

2-2 原因:歯周病菌により骨が弱まる

インプラント周辺の組織に歯垢などの汚れがたまった状態が続くと、歯周病菌が増えてしまいます。そのうえで免疫力が低下すると歯周病菌がますます活発になっていきます。
歯周病菌が増殖していくと歯肉がはがれ、骨の強度も落ちてきます。インプラントが結合している部分が弱まってしまうので、グラグラと不安定になってきます。インプラントは骨に結合しているのでそう簡単には外れませんが、この状態が長く続くと最終的に抜けてしまうでしょう。

 

2-3 対処法:インプラント周囲炎の治療が先決

インプラント体が根元から抜けてしまえば、そのまま元に戻すことは不可能です。歯周病菌が入り込んでインプラント周囲炎を起こしている状態ですから、まずはこの病気を治療しなければなりません。
炎症をきちんとおさえ、インプラントをしっかりと固定できるだけの健康な骨を維持していきましょう。インプラント周囲炎が原因でインプラントが外れてしまうのを防ぐためには、口の中を清潔に保つセルフケアを日常的にしっかりと行うだけでなく、歯医者さんで定期的なメンテナンスやクリーニングを受ける必要があります。

 

インプラントの土台が外れるケース

3-1 インプラントを固定しているネジがゆるんだ

インプラント体と被せ物の間には、アバットメントと呼ばれる土台があります。アバットメントとインプラント体はネジで固定されているのですが、そのネジがまれにゆるんでしまうことがあるのです。ネジがゆるめば当然インプラントはグラグラし、外れることもあるでしょう。

 

3-2 原因:過度な負担がかかっている

かみ合わせが悪くてインプラント部分に余計な力がかかっていると、インプラント体と土台をつないでいるネジはゆるみやすくなります。特に一番奥の歯をインプラントにしていると、ネジのゆるみにより外れることが多いといわれています。

 

3-3 対処法:ネジをしめ直す

ゆるんだネジをしめ直せば、元に戻るでしょう。被せ物を一度外し、ゆるんだネジをしめ直す処置が行われます。この時、インプラント治療を行った歯医者さん以外に行くのはあまりおススメできません。場合によっては別の医院では使っていないインプラントだからと対応してもらえない可能性があります。
現在インプラントのメーカーは国内外に多くあって、それぞれのメーカーのインプラントのパーツには独自の工夫と規格があり、相互の互換性がない場合が多いです。そのために別の医院に行っても同じメーカーのインプラントを使っているとは限らず、他社のパーツでは対応出来ないことが多いからです。

 

インプラントの被せ物が外れるケース

4-1 外れやすいセメントを使用している

インプラント体に問題がなくても、被せ物が外れてしまうことがあります。インプラントは被せ物の下が複雑な構造になっているうえ、土台のネジがゆるんだ場合などに備えて外しやすいセメントを使って被せているので、被せ物が外れてしまうことは少なくありません。
ただし、1度や2度ではなく、何度もくり返し外れる場合にはセメントの問題以外にも根本的な異常があると考えたほうがいいでしょう。
インプラントの上部構造は、原則的にはネジで留めていたり、仮留め用のセメントで必要な時には外せるようにしてあるのが通常です。

 

4-2 原因:かみ合わせのバランスが悪い

天然の歯に被せ物をする際には、外れないようにしっかりとした硬めのセメントを用います。しかし、インプラントの場合にはやわらかいセメントを使うのが一般的です。先ほどお伝えしたとおり、被せ物をあえて外しやすくしておいたほうがメンテナンスしやすいからです。
インプラントは虫歯になる心配がないので、虫歯菌が侵入しないようにきっちりと被せる必要がないのも理由のひとつといえるでしょう。
また、天然の歯は非常にわずかではありますが力がかかると動いていくものですから、かみ合わせがずれていくことはよくあります。かみ合わせが悪くなるとインプラント部分に余計な刺激が加わって外れやすくなるのです。
天然の歯であれば、こういった場合に削れるので過剰な力を吸収できます。しかし、インプラントの被せ物は削れにくいセラミックなどでできているので余分な力が加わると外れるような仕組みになっているのです。
ほかにも、土台となっているインプラント体そのものに問題が生じている可能性もあります。

 

4-3 対処法:被せ物を戻す

外れてしまった被せ物はそのまま戻す処置が行われるのが一般的です。
定期的なメンテナンスをきちんと受けていればかみ合わせの状態もチェックするので、このようなトラブルは防げるはずです。インプラント体や被せ物が外れるのには、原因が必ずあるはずです。なにが原因で外れてしまったのかをきちんと見極めてから対処をしてもらいましょう。
インプラントは一度埋め込んだら終わりではありません。定期的なメンテナンスを受けるなど、管理を続けることが重要です。外れてしまうといったトラブルを防ぐためにも、インプラントの治療を受けた後には歯医者さんにきちんと通院してくださいね。

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監修日:2017年12月12日
遠藤三樹夫 先生監修
経歴・プロフィール

出身校:大阪大学
血液型:O型
誕生日:1956/11/09
出身地:大阪府
趣味・特技:料理