使い勝手のよい義歯は吸着力が高いため、外す際に苦労する人も少なくないでしょう。しかし、外れないからと強く引っ張ると、唇や口内を傷つけてしまう場合があります。義歯にまだあまり慣れていない人にこそ、わかりやすい義歯の外し方について知っておく必要があるので、詳しく理解しておきましょう。また、外れやすい場合の対策や義歯調整についても解説していきます。
使い勝手のよい義歯は吸着力が高いため、外す際に苦労する人も少なくないでしょう。しかし、外れないからと強く引っ張ると、唇や口内を傷つけてしまう場合があります。義歯にまだあまり慣れていない人にこそ、わかりやすい義歯の外し方について知っておく必要があるので、詳しく理解しておきましょう。また、外れやすい場合の対策や義歯調整についても解説していきます。
この記事の目次
上あごの総義歯(そうぎし)を外す場合、下あごと違い口を大きく開けて外すことが困難です。上あごの総義歯は、口内の空間が広くなるようにしてから取り出すと外しやすくなります。下あごの義歯を先に外すと取り外しがスムーズになるでしょう。
総義歯の場合、入れ歯と歯茎・上あごの間に空気を入れてから外すと無理なく外せます。前歯を指でつまみ、前歯側を手前に出して奥歯の方を浮かせるように動かすことがポイントです。下あごは斜め上へ、上あごは斜め下に引き出すとスムーズに外せます。
また、総義歯は横幅が大きいので、まっすぐに引き出すと口角を傷つけてしまう恐れがあるので注意が必要です。引き出す際は斜めに出すと口角を傷つけることがないでしょう。
上の部分床義歯(ぶぶんしょうぎし)なら、人差し指の爪をクラスプ(歯にかけるフック型の金具)にかけ上から下に、下の部分入れ歯なら親指の爪をかけて下から上にゆっくりと引き出します。金具がふたつある場合は、必ず同時に動かしましょう。どちらか一方だけを外そうとするとスムーズに外しにくくなります。
前歯を持ち口内に入れます。義歯床(ぎししょう:入れ歯の土台の部分)の中央部分を親指で押さえ、上あごの粘膜に吸着させます。
口内のスペースが広い方がスムーズに装着しやすいので、外すときとは反対に上あごの入れ歯から先に装着します。
U字型の左右を両手で持ち、総入れ歯を口内に入れます。両方の人差し指を奥歯にあて、下あごの粘膜に沿って押さえれば装着できます。
クラスプを持って口に入れます。クラスプを鉤歯(こうし:金具をひっかける残存歯)に沿わせ、入れ歯全体を指で支えながら押し込みます。
総入れ歯、部分入れ歯ともに、安定した位置に収まったことを確認してから噛み合わせましょう。
義歯の着脱に慣れてくると、舌を使っての着脱や、歯で噛み合わせながら装着をしてしまうこともあるでしょう。しかし、間違った着脱法を続けると義歯自体を傷つけてしまうだけでなく、口内の健康に悪い影響を与えることがあります。部分入れ歯の場合、クラスプの歪みの原因や鉤歯の損傷、虫歯の温床の原因になってしまいます。総入れ歯の場合は、入れ歯の摩擦によってあごの粘膜を傷つけてしまうこともあります。また、舌を使っての義歯の着脱に慣れてしまうと、口を開けたときなどに突然落下してしまう危険性もあるため注意が必要です。
密着性の高い義歯を外しにくいからといって無理やり引っ張ってはいけません。無理に引っ張ると口内や口角を傷つけてしまうだけでなく、クラスプのゆがみや入れ歯の変形などを招いてしまう場合があります。うまく外れないときは無理やり引っ張ろうとするのではなく、焦らずゆっくりと取り外しましょう。
入れ歯を装着する際、吸着力を高めるための入れ歯安定剤を使用することもあるでしょう。その場合でも基本の着脱方法は同じです。外したあとは、義歯自体の洗浄とともに、義歯や口内に安定剤が残らないように確実に取り除きましょう。義歯に安定剤が残ってしまうと口臭や入れ歯の変色につながります。入れ歯についた安定剤は乾いたガーゼで優しく拭きとり、口内に残った安定剤はよくゆすいで落とすか、落ちない場合はティッシュなどで拭き取りましょう。
食事の後には義歯の洗浄と歯磨きを習慣化するようにしましょう。うまく外せないからといって洗浄を怠ってしまうと、口内の細菌が繁殖し虫歯や歯周病、口内炎の悪化など、さまざまな口腔トラブルの原因になります。食後の洗浄、歯磨きを習慣化することで口内を清潔に保ち、口内の健康を維持をしましょう。
義歯の外し方は、慣れてくれば自然とスムーズに行えるようになってくるはずです。しかし、いつまでたっても外すのに苦労する、またはさらに外しにくくなったという場合は義歯が口に合っていない可能性があります。痛みが出てきたり、舌を噛みやすくなったなどの問題がある場合は、歯医者さんに相談しましょう。
義歯が外れやすいのは、以下のような理由が考えられます。次のような症状が現れた場合は、歯医者さんでの調整をおすすめします。
・人工歯がすり減り、噛み合わせが悪くなった
・口に合わない義歯を使用して、歯肉がフラビーガム(慢性的な刺激により、粘膜がブヨブヨした状態になること)を起こしている
・義歯の後ろ(のどに近い部分)の密着度が弱く、空気が入りやすい
どんなにぴったり合った義歯を作っても、加齢により歯茎やあごの骨が痩せてくるため、不具合は出てくるものです。外れにくい、または外れやすいなどの問題や痛みが出る前に、定期的な検査と調整によって症状を防ぎましょう。定期検診の間隔は、3カ月に1度がおすすめです。
義歯は使用者の口に合っていれば、特別な外し方は必要ありません。上記のポイントを理解しておけば着脱する回数に比例して取り外しに慣れてきます。しかし、いつまでもスムーズに外せない場合や反対に外れやすくなったという場合は、義歯の変形や残存歯が虫歯になったなどのトラブルが起こっている可能性があります。義歯の着脱で困っていることがある場合は、定期検診のときに歯医者さんにアドバイスをもらい、必要な調整を繰り返していきましょう。
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1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る