わかりやすい!義歯ライフをよりよくする、義歯洗浄の基本

虫歯やけがなどで歯を失ってしまったとしても、義歯治療を行えばしっかり噛んで食べることができるようになります。義歯を長く愛用するためには、天然の歯と同じように毎日洗浄することが大切です。もし義歯の洗浄をしないでいると、プラーク(歯垢)がつくことで、細菌やカビが発生しやすくなり、さまざまなトラブルを引き起こします。トラブルやストレスのない快適な毎日を送るために、あらためて義歯を洗浄する必要性や正しい方法を知りましょう。

 

この記事の目次

洗浄する前に知っておこう!義歯の注意点

1-1 義歯床(ぎししょう)は臭いが吸収されやすく傷つきやすい

入れ歯の大部分を占める義歯床(上あごや歯茎などに接する入れ歯の土台)は、合成樹脂でつくられることが多いため、水分を吸収しやすく汚れや臭いがつきやすいという性質を持っています。また、傷もつきやすいため取り扱いには注意が必要です。

 

1-2 クラスプ(金属のバネ)には細菌が繁殖しやすい

義歯を装着しているときは、口内の自浄作用が働きにくくなります。そのため、義歯と粘膜との隙間やクラスプとよばれる金属の維持装置に食べカスなどの汚れが溜まりやすくなり、細菌も繁殖しやすくなります。

 

1-3 人工歯(じんこうし)にもプラークや歯石がつく

義歯に使われる歯(人工歯)も、天然の歯と同じくプラークがつきます。磨き残したプラークはやがて歯石となり、歯石がつくと義歯の表面がザラザラになり汚れがつきやすくなるため、汚れの中にいる細菌が繁殖して口臭が発生します。プラークは丁寧な歯磨きで取り除けますが、歯石は歯医者さんに除去してもらう必要があります。

 

どうなる?洗浄をしない義歯のトラブル

 

2-1 歯周病を引き起こす

義歯の洗浄が不十分の場合、たとえ歯は健康であっても洗い残した汚れに繁殖した細菌が歯周病を引き起こすことがあります。部分入れ歯では、残っている歯にクラスプ(金属のバネ)をひっかけて固定するため支えとなる歯への負担が大きく、さらに義歯に付着した細菌が歯茎の隙間に入りこむことで歯周病となり、残っている歯がぐらつき不安定になる可能性があるので注意が必要です。

 

2-2 虫歯を引き起こす

口内の唾液の流れが義歯によって悪くなると、歯の再石灰化(再生すること)がしにくくなります。健康な歯であっても、義歯に付着した細菌が感染すれば虫歯になることがあります。虫歯を予防するためには、義歯のお手入れだけではなく通常の歯磨きも行い、口内を清潔に保つことが必要です。

 

2-3 義歯や口内にカビが発生する

口内にはカンジダ菌と呼ばれるカビが常に存在しています。口内はカビにとって、湿度、温度ともに快適な環境です。義歯の細部まで丁寧に洗浄していないと、何らかの理由で自浄作用が弱くなったときに人工歯の細かな凹凸や傷に入り込んだカビがさらに繁殖し、歯茎や義歯の痛みを引き起こすことがあります。

 

2-4 口臭トラブルに悩まされる

お手入れが不十分な義歯には口内の歯垢が過剰に付着し、歯垢が発酵して口臭を引き起こすことがあります。義歯についた細菌は乾燥することでますます落ちにくくなり、少しずつ増えながらより強い口臭を引き起こします。また、入れ歯を汚れたままにすると歯と同じように歯石がつき、入れ歯がざらついてより歯垢や汚れが付着しやすくなるため注意が必要です。

 

日課にしよう!義歯の洗浄と歯磨き

3-1 基本は3ステップ!おすすめの義歯洗浄方法

義歯の基本的な洗浄方法は、「簡単磨き」「洗浄剤」「仕上げ磨き」の3ステップです。簡単磨きは毎食後行い、就寝前など1日に1度は洗浄剤を使用して、そのあとに仕上げ磨きを行いましょう。

・簡単磨き
流水で食べもののカスやヌルヌル(プラーク)を取り除き、義歯専用ブラシを使って丁寧に磨きます。同じタイミングで、食後の歯磨きも一緒に行いましょう。

・義歯洗浄剤に浸ける
義歯洗浄剤とは、洗浄、殺菌、消臭のいずれかの作用をもつ義歯専用の洗浄剤のことです。浸けておくことで目に見えない細菌などが義歯から浮き、義歯をお手入れがしやすくなります。洗浄剤は作用によっていくつかの種類に分類されるため、自分の目的に合ったものを選んでください。また、洗浄剤を使用するときに熱湯を使うと義歯を変形させてしまう恐れがあります。水かぬるま湯を使いましょう。
気をつけないといけないのが、洗浄剤での完全な殺菌は不可能だということ。一晩中など長時間浸けておくと生き残ったバイ菌が繁殖して液が濁ります。義歯を清潔に保つためにも、必ず丁寧な歯磨きと並行して使用するようにしましょう。

・仕上げ磨き
洗浄剤によって浮いた汚れを、義歯専用ブラシで磨いて取り除きます。また、炎症を起こさないようにするためにも、洗浄剤の成分は念入りに洗い流しましょう。

 

3-2 義歯専用ブラシを使って丁寧に磨こう

義歯専用ブラシは一般的な歯ブラシよりもやわらかい毛でできており、柄が太く握りやすく、磨きやすさを考慮したつくりになっています。義歯専用ブラシで、表面のヌルヌルとした汚れをしっかり取り除きましょう。ヌルヌルとした汚れはデンチャープラーク(義歯に付着する歯垢)という、体に悪影響をおよぼす細菌のかたまりです。粘着性が高いため、洗い流しただけでは落ちにくい特徴があります。
また、一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれているため、義歯を傷つける恐れがあります。使用しないようにしましょう。

 

3-3 義歯用洗浄剤は使ったほうがいい?

義歯洗浄剤には殺菌、消臭作用があるため、細菌の繁殖をおさえる働きが期待できます。また、着色汚れが気になる場合にも有効です。ただし、洗浄剤に浸けただけでは十分な洗浄とは言えません。あくまでも洗浄の補助と考え、洗浄剤に浸けることで浮いてきた目に見えない細菌や汚れを、ブラッシングしながら水で洗い流しましょう。

 

3-4 義歯だけじゃだめ!残っている歯もしっかり洗浄

部分入れ歯の場合、残っている歯や歯茎を清潔に保つことがとても大切です。食後、義歯を外したときの歯磨きを日課にしましょう。クラスプ(金属のバネ)をひっかける歯や義歯に接している面は、虫歯や歯周病になりやすいため、特に注意が必要です。

 

3-5 義歯を洗浄するときの注意点

・通常の歯磨き粉には研磨剤が含まれています。そのため、義歯に使うと細かな傷がつき、表面がざらざらになるため汚れが付着しやすくなってしまいます。義歯の洗浄時に通常の歯磨き粉を使わないようにしてください。義歯専用の歯磨き粉があるので、そちらを使うようにしましょう。
・義歯は衝撃に弱く、洗面台や床のような固いところに落とすとひびが入ってしまうケースも少なくありません。洗浄するときは、固いものに直接ぶつからないように注意しましょう。対策として、洗浄時には水の入った洗面器を下に置くことをおすすめします。
・小さな義歯であっても、口内に装着したまま洗浄するときちんと汚れが落とせません。義歯は必ず口内から外して洗浄するようにしましょう。

 

実は怖い、義歯性口内炎(ぎしせいこうないえん)

4-1 義歯性口内炎とは?

義歯性口内炎とは、義歯を使っている人が発症する口内炎で、特に高齢者がかかりやすい炎症です。発症すると義歯の下に、通常の口内炎と同じような出血や痛みの症状を引き起こします。

 

4-2 合わなくなった義歯は要注意!

義歯性口内炎を発症する大きな原因は、義歯が合っていないことが挙げられます。合わない義歯は、口内の粘膜を強く圧迫して損傷させ、そこが炎症を起こして口内炎になります。また、義歯と歯茎が接触する部分にプラーク(歯垢)がたまり、どんな人の口内にでも常に存在するカビ菌(カンジダ菌)が増殖することでも口内炎を発症します。義歯が口に合わなくなったと感じ出したら、歯医者さんに相談しましょう。

 入れ歯は、使っているうちに汚れやプラークが付着します。しかし、毎日の洗浄で汚れや食べかすを取り除いておけば、歯周病や虫歯、口臭や義歯性口内炎など、義歯に関わるトラブルやストレスは少なくなります。自己流で行ってきた義歯洗浄に疑問や不安を感じている方は、歯医者さんに相談し正しい洗浄方法などアドバイスをもらいながら、よりよい義歯ライフを送りましょう。

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監修日:2017年06月08日
飯田尚良 先生監修
経歴

1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

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