1章 親知らずを放置した場合のリスクは?
日本人は顎が小さくアーチが狭いために、出っ歯や乱杭歯など、日本人特有の不正咬合を持つ人が多い傾向があります。
アーチが狭いことで、顎の成長がある程度止まってから生えてくる親知らずにとって、スムーズに生えるためのスペースがなく、さまざまな問題を引き起こしがちになります。親知らずを放置した場合に、引き起こされる問題について、詳しく見ていきましょう。
親知らずを放置することで考えられるリスク
・虫歯や歯周病
親知らず(第三大臼歯)が生えてきた場合、部分的にかぶさった歯肉の隙間や、その手前の第二大臼歯との境目などに、歯垢や食べかすがたまりやすく、細菌が増殖して、親知らず周辺の歯も、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。
一般的に、もっとも早く失われる傾向が強いのは、奥歯(第二大臼歯)です。ブラッシングが届きにくく、セルフケアが不十分になることで虫歯や歯周病のリスクがさらに増大してしまいます。
・親知らず周囲炎
顎が小さい日本人は、親知らずが真っ直ぐきれいに生えるスペースが少ないため、水平に生えたり斜めに生えたりするケースも多くなります。
完全に露出せず、歯肉が被さるような状態になり、その歯肉と親知らずの間に細菌が増殖しやすくなって、親知らずの周囲に炎症を引き起こします。これを親知らず周囲炎といいます。
繰り返し発症しやすく、抜歯後の痛みが長引く原因になることもあります。
・口臭の悪化
歯ブラシが届きにくいことでセルフケアが不十分になることがあります。そのため親知らずの周囲が不衛生になることで、細菌がたまり、細菌から有臭なガスが発生したり、炎症を起こして膿がたまることが多くなり、慢性的な口臭を引き起こしやすくなります。
・顎骨炎
親知らずの虫歯や親知らず周囲炎が進行することなどによって、顎骨炎を引き起こすケースもあります。細菌が歯髄(歯の神経や血管の組織)に達して、さらに、その下の顎の骨にまで、炎症が広がると、顎骨炎に至ります。
重症化すると、顎の筋肉組織、さらには感染が全身に広がって、最悪の場合は多臓器不全などを引き起こす敗血症に至る危険もあります。
・奥歯の噛合せの乱れ
親知らずが、水平や斜めに成長すると、隣りにある第二大臼歯を押すような形になり奥歯の噛合せを乱します。噛合わせの乱れから身体への不調に発展することもあるため、軽視してはいけません。
・第二大臼歯の歯根吸収
親知らずによって、第ニ大臼歯が圧迫されると、歯根吸収が起こる可能性もあります。歯に強い圧力が継続的にかかると、歯の根が痩せていくリスクがあり、これを歯根吸収といいます。
2章 すぐに抜歯した方が良いケースとは?
ここでご紹介するのは、すぐに抜くべき典型的な親知らずの例ですが、自己判断をせず、歯科口腔外科で抜くべきか、残すべきかを的確に診断してもらうことが懸命です。
3章でご紹介しますが、わざわざ抜かなくても良い親知らずもあるからです。
放置してはいけない親知らずの典型例
・顎のスペースが狭いケース
親知らずが生えかけていて、現状では大きな実害がない状態でも、顎のスペースが狭い場合は、親知らずの成長とともに、1章でご紹介したようなトラブルが生じるリスクが高まるものです。明らかに親知らずの生えるスペースがない場合は、早目に抜歯をするのが良いでしょう。
・斜めや横向きに生えているケース
親知らずが斜めや横向きに生えてしまっている場合には、その後、自然に方向を立て直して真っ直ぐ伸びていく可能性は少ないと見られます。第二大臼歯の歯根吸収などを招くので、できるだけ早く抜いた方が良いケースとなります。
・すでに虫歯や歯周病になっているケース
奥歯が不衛生になりがちで、すでに虫歯や歯周病、親知らず周囲炎を引き起こしているような場合には、早急に抜歯を検討すべきものとなります。部分的にかぶさった歯肉の下や、第二大臼歯との境目が虫歯になるリスクが高くなります。
ただし、第二大臼歯の虫歯が重症のケースでは、親知らずを残して第二大臼歯を抜く「歯牙移植」という選択肢もあります。
3章 放置しても問題のない親知らずもある?
親知らずは、そのすべてが害を及ぼすものではありません。親知らずが健全に生える十分なスペースがある場合には、新たに加わる奥歯をわざわざ抜く必要がないこともあります。ただし、残すべきかも自己判断はせず、歯科口腔外科にその判断を任せましょう。
健康歯のように生えている場合
他の健康歯と同様に、きちんと生えている場合や、きちんと生える可能性が高い場合には、わざわざ抜く必要はありません。永久歯28本に加えて、新たな永久歯が4本が加わることはデメリットではなく、むしろメリットだと考えられます。
下記のような親知らずは、わざわざ抜歯する必要がないものです。ただし、日本人の場合、親知らずがきれいに生えることは稀なケースといえます。
・真っ直ぐに生えている
・正常に歯冠が露出している
・第二大臼歯を圧迫していない
・上下の親知らずが正常に噛み合っている
顎骨深くにとどまり実害がない場合
親知らずが成長しないまま、顎骨の深くにとどまっているケースもあります。成長して顎の骨から露出し、隣の歯を押したりといったリスクがないものであれば、早急に取り除く必要はありません。
矯正や歯科検診でレントゲンを撮った際に、歯茎に埋まった親知らずが発見されることがあるでしょう。医師が抜くべきか判断してもらい、問題がなさそうであればしばらく様子を見てみましょう。
将来的に利用できる可能性がある場合
前述したように、第二大臼歯に重度の虫歯があり、親知らずよりも、第二大臼歯の寿命が短いと思われる場合には、親知らずをあえて放置しておくこともあります。
親知らずを欠損した臼歯に移植することで有効活用ができるのです。
4章 親知らずに違和感を感じたら歯科口腔外科へ!
親知らずの抜歯は、一般歯科でも行っていますが、これまでお話してきた通り、早急に抜くべきものと、様子を見るべきもの、残すべきものという的確な判断が必要になります。その正確な診断を受けるためにも、親知らずに違和感を感じたら、なるべく早く歯科口腔外科で診てもらうことが賢明です。
歯科口腔外科とは?
歯科口腔外科とは、歯科と口腔外科分野を扱う歯医者さんです。一般歯科は、虫歯や歯周病、補綴治療や入れ歯など、歯の治療を主体とする分野です。
一方、口腔外科は、口内や口周辺、頬、顎、顔面などお口周りの幅広い部位を扱い、その外傷や炎症、腫瘍、ウイルス性疾患など、口腔内の粘膜部分に関わるさまざまな疾患を扱う分野です。
親知らずの難しい抜歯をはじめとして、外科手術を行うことが可能です。
なぜ歯科ではなく歯科口腔外科が良いの?
親知らずの抜歯は、歯の状態はもとより、顎の状態も含めて、抜くべきか否か、総合的な判断が求められるものです。口内の疾患に幅広い知識と技術のある、歯科口腔外科であれば、抜歯の可否を、より的確に判断できます。
まずは、歯科口腔外科でCT撮影やレントゲン撮影をしてもらい、ベストな対処法を検討してもらいましょう。
歯科口腔外科で処置すべき難抜歯は?
親知らずの抜歯は、一般歯科でも扱っていますが、難しい抜歯となると、歯科口腔外科分野で扱うべきものとなります。
たとえば、下顎の親知らずが顎の骨の神経に近い場合や、真横に生えていて摘出するのが難しい場合、顎の骨に埋まっている場合などがそれにあたります。親知らずが健全に生えるケースもありますが、顎の小さい日本人の場合はとてもレアなケースです。従って、親知らずは将来的に何らかの弊害が生じるものと考え、もし親知らずが生え始めたら、できるだけ早く歯科口腔外科で診察してもらうことが大切です。
将来的に弊害を及ぼす可能性が認められるなら、親知らずが大きく成長する前に、抜歯するのが望ましいものです。できるだけ若いうちに対処する方が、傷の治りも早く、難しい抜歯になることも少なくなります。
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監修日:2017年12月12日
遠藤三樹夫 先生監修
経歴・プロフィール
出身校:大阪大学
血液型:O型
誕生日:1956/11/09
出身地:大阪府
趣味・特技:料理