1.口内炎の市販薬の種類や特徴、作用・副作用について
1-1.口内炎の薬は 「炎症を抑える」ものが一般的
口内炎は、唇、舌、頰の内側、歯茎といった粘膜に炎症が起こっている状態です。
そのため、口内炎の薬は炎症を抑える効果があるものが一般的です。
炎症を抑える薬は、口内炎の治療に有効なステロイド系(※)と、副作用が出にくい非ステロイド系(※)の2つに分類されます。
※ステロイド系と非ステロイド系とは?
「ステロイド」とは、私たちの体にある「副腎皮質(ふくじんひしつ)」という器官から分泌されるホルモンのひとつです。
「ステロイド系」には、副腎皮質から分泌されるそのホルモン(ステロイドホルモン)を基にしてつくられた成分が含まれています。
一方の「非ステロイド系」には、ステロイドホルモンを基にしてつくられた成分は含まれていません。
また、ステロイドには炎症を抑えたり体の免疫を弱めたりする作用があります。
口内炎に対してステロイド成分が含まれている薬を使用することは、高い症状改善効果が期待できます。
その一方で、ステロイドを長期間使い続けたり用法用量を守らずに使用したりすると、口内の感染症、ヒリヒリ感や発疹といった副作用が出ることがあります。
口内炎の市販薬におけるステロイドは、主に塗り薬に配合されていることが多いです。
市販薬に多量のステロイドが含まれていることはありませんが、長期間使用を続けたり、必要以上に塗ったりせず、用法用量を守って正しく使用しましょう。
1-2.口内炎の市販薬の種類や特徴、作用・副作用など
薬局やドラッグストアで市販されている口内炎の薬には、さまざまな種類があります。
それぞれの特徴や主な作用と副作用を知り、自分に合ったタイプの薬を見つけましょう。
なお、ここで紹介している作用や副作用は一般的な例です。製品によっては含まれている成分や成分の量に違いがあります。
そのため、下記以外の作用や副作用があることも考えられます。
詳しくは、それぞれの製品または同封の説明書に記載されている説明書きや注意事項を確認してください。
また、決められた用法用量はきちんと守り、正しく使用してください。
塗り薬
【特徴】
指先や綿棒で適量の軟膏剤(なんこうざい)をとり、患部を覆うように塗ります。
軟膏が長い時間患部にとどまるため、作用が持続するという特徴があります。
【主な作用と副作用】
患部に直接的に作用し、炎症を抑えてくれます。
ただし、発疹(ほっしん=小さい吹き出物ができること)・発赤(ほっせき=患部が赤くなること)・かゆみといった副作用が出ることがあります。
また、歯槽膿漏や歯肉炎、あるいは感染症による口内炎などの場合、逆に症状を悪化させてしまうものもあります。
心当たりのある方は、主治医の先生や薬剤師に相談し、効能や使用上の注意を守って使用しましょう。
貼り薬
【特徴】
丸い形をしたパッチ剤です。患部に直接貼りつけて使用します。
パッチが患部を覆うため、食べ物や水分が患部に直接当たるのを防ぐことができます。
【主な作用と副作用】
患部に貼ることで直接的に作用し、炎症を抑えてくれます。
ただし、発疹・発赤・かゆみといった副作用が出ることもあります。
以前薬によってアレルギー症状が出たことがある方や、症状が慢性的な方、患部がパッチよりも広い方などは、使用する前に薬剤師に相談することをおすすめします。
スプレータイプ
【特徴】
患部に噴射して使用します。
口内の奥にある口内炎にも届きやすいことや、患部に触れずに使用できることができます。
味や噴射の勢いなどをお好みで選びましょう。
【主な作用と副作用】
患部に吹きかけることで直接作用し、炎症を抑えてくれます。
口内炎のほか、喉の痛みや腫れといった症状に効果的なものもあります。
ただし、発疹・発赤・かゆみといった副作用や、刺激を感じる、胃の不快感を招くといった副作用が出ることもあります。
長期間の使用は避けましょう。
また、口内の“ただれ”がひどい方や、現在何らかの疾患があり病院にかかっている方は、使用する前に主治医の先生や薬剤師に相談しましょう。
飲み薬
【特徴】
定められた量の錠剤を、水またはぬるま湯で服用します。
塗り薬や貼り薬と併用することで早期回復が期待できます。
【主な作用と副作用】
トラネキサム酸が配合されている飲み薬が一般的です。
トラネキサム酸には炎症を抑えたり、粘膜の機能を正常に働かせたりする働きがあります。
しかし、発疹・発赤・かゆみ、あるいは、めまいや吐き気といった副作用が出ることがあります。
妊娠中の方や高血圧の方、以前薬によってアレルギー症状が出たことがある方などは、使用前に主治医の先生または薬剤師に相談しましょう。
うがい薬
【特徴】
通常のうがいと同じ要領で口内を清潔にします。
メントールやアルコール成分が含まれているものは刺激があるため、避けた方が良いでしょう。
【主な作用と副作用】
殺菌消毒液が入ったうがい薬は、口内環境を清潔にしてくれます。
口内炎の改善効果や予防効果が期待できます。
上記で紹介している薬と並行して行うと良いでしょう。
ただし、発疹・発赤・かゆみ、そのほか口内の荒れといった副作用が出ることがあります。
以前薬によってアレルギー症状が出たことがある方、口内の“ただれ”がひどい方、甲状腺機能障害を持っている方などは、使用前に主治医の先生や薬剤師に相談しましょう。
1-3.即効性を重視するなら、患部に直接働きかける薬がおすすめ
痛くてつらい口内炎は、できるだけ早く治すことが望まれます。
即効性を重視するなら、塗り薬や貼り薬、スプレータイプなど、患部に直接働きかける薬がおすすめです。
2.口内炎ができた箇所別におすすめの市販薬を紹介
口内炎ができた箇所によっては、市販薬が使いやすかったり使いにくかったりします。
口内炎ができた箇所別に、使いやすい市販薬を一覧にまとめました。
口内炎の箇所 |
おすすめの薬のタイプ |
口の奥や喉 |
スプレー、飲み薬 |
舌裏、舌側面 |
飲み薬、貼り薬、スプレー |
歯茎、舌先、頰 |
塗り薬、貼り薬、スプレー |
唇の裏や口角 |
塗り薬、飲み薬、スプレー |
その他(患部に触れたくない・大きさが1cm以下等) |
飲み薬、スプレー、貼り薬 |
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
2-1.口の奥や喉の口内炎には直接手を触れないスプレータイプ
スプレータイプの口内炎の薬は、塗り薬や貼り薬の使用が難しい「喉の口内炎(※)」におすすめです。
つらいと思ったときに、場所を選ばずに使えます。
また、患部や手を汚さずに使用できるメリットもあります。
スッキリとしたミント味、子ども向けのフルーツ味といったバリエーションも豊富です。
※喉の口内炎とは?
口内炎は唇や舌、歯茎といった口の中にできるイメージがありますが、喉の粘膜が炎症を起こすことで、口内炎と同じような症状が現れることがあります。風邪ではないのに喉の粘膜が炎症を起こし、腫れや痛みといった症状を伴う場合、それを「喉の口内炎」と呼ぶことがあります。
2-2.有効成分がとどまりにくい舌裏、舌側面の口内炎には飲み薬
舌の裏や側面にできた口内炎には、飲み薬がおすすめです。
舌は唾液に触れることが多いため、塗り薬やスプレータイプの有効成分が流れてしまう恐れがあります。
そのため、唾液の影響を受けず体内から炎症を改善してくれる飲み薬タイプが良いでしょう。
2-3.歯茎や舌先、頰の内側といった口内炎には塗り薬
歯茎や舌先、頰の内側にできた口内炎には塗り薬がおすすめです。
唇の内側や口角といった箇所にできた口内炎にも、塗り薬が使いやすいでしょう。
2-4.迷ったときは飲み薬やスプレータイプを
どのタイプの薬を選べば良いか迷ったとき、患部にできるだけ触れたくないときはスプレータイプや飲み薬が便利です。
また、1cm以下の口内炎であれば患部を覆ってくれる貼り薬もおすすめです。
3.子どもが口内炎になったときの市販薬の選び方
口内炎用の市販薬のうち、子どもに使いやすいのはスプレータイプです。
あるいは、飲んで改善を目指すシロップタイプもあります。
子どもの口内炎に使う市販薬を選ぶ際は、次の点に注意しましょう。
3-1.要チェック!7歳未満は幼児・乳児で異なる
子どもに使用する市販薬を選ぶときは、薬の適用年齢を必ず確認しましょう。
口内炎だけでなく、市販されている成人向けの薬は、「15歳以上」と「7歳または8歳」に区分されています。
15歳頃の子どもは代謝機能が成人と同程度とされていますが、7~8歳頃の子どもは成人の半分程度しかないと考えられています。
そのため、薬の用法や用量が変わってきます。
なお、「大人」「15歳以上」とだけ書かれた市販薬は、子どもに飲ませないように注意しましょう。
薬の量を調整しても、副作用のリスクは軽減されません。
また、次のように医薬品特有の区分もあります。
- 乳児:1歳未満
- 幼児:1歳以上7歳未満
- 小児:7歳以上15歳未満
薬の選び方で迷ったときは、薬剤師に相談して適切な薬を選んでもらいましょう。
3-2.シロップタイプの口内炎薬は冷蔵庫で保存
子ども向けとしてよく使われるシロップタイプを使用した後は、付属している計量用カップを丁寧に洗浄しましょう。
片づける前にしっかりと乾燥させることも大切です。
また開封後のシロップ剤は、雑菌の混入や増殖を防ぐため冷蔵庫で保存しましょう。
4. 口内炎の種類について
この記事では、患部が白くなり辛味や酸味、物理的刺激などに対して痛みを感じる「アフタ性口内炎」に関する市販薬について紹介してきました。
しかし、冒頭でお伝えしたように、口内炎にはさまざまな種類があり、それぞれ原因や治療法が異なります。
ここではその一部を紹介しますが、下記以外の口内炎ができた場合や、どの口内炎か迷った場合は、まずは歯科口腔外科を受診することをおすすめします。
カンジダ性口内炎
カンジダ菌という真菌(しんきん=カビ)に感染することで発症する口内炎です。カンジダ菌は健康な人の体にも存在しますが、口内が不衛生だったり、免疫力が低下していたりすると一気に増殖し、口内炎を引き起こすことがあります。
なお、カンジダ性口内炎はさらに「偽膜性(ぎまくせい)カンジダ症」「萎縮性(いしゅくせい)カンジダ症」「肥厚性(ひこうせい)カンジダ症」に分かれます。
痛みは弱いことが多いのですが、症状が気になる方は歯科口腔外科を受診しましょう。
基本的に、抗真菌薬を用いた治療をおこないます。
ヘルペス性口内炎
HSV-1(単純ヘルペスウイルス1型)による口内炎です。
HSV-1に感染した、またはすでに体内にウイルスが潜(ひそ)んでいて何らかのきっかけで活発化した、といった場合にできることがある口内炎です。
白い水ぶくれが複数できている場合は、歯科口腔外科を受診しましょう。
治療は、抗ウイルス薬を用いておこなうのが一般的です。
ニコチン性口内炎
タバコの煙に含まれるニコチンやその他の物質、あるいはタバコの熱によって粘膜が炎症を起こし、口内炎になると考えられています。
禁煙が望ましいのですが、すぐにできないという方は、喫煙後のうがいを習慣にしましょう。
ニコチン性口内炎の治療に関しては、禁煙や減煙といった「タバコを吸う習慣をなくす(減らす)」という方法しか見いだされていないのが現状です。
白板症(はくばんしょう)
粘膜の一部が白く盛り上がってしまう口内炎が白板症です。
口腔がんに発展する恐れがある口内炎ということも分かっています。
白板症を発症する原因は、はっきりしていません。
また、白板症ができたからといって、「必ず口腔がんになる」というわけではありません。
しかし、だんだん大きくなる、2週間以上経過しても改善しないといった口内炎の場合、念のため歯科口腔外科を受診しましょう。
白板症の状態を慎重に観察し、がん化が認められた時点で、外科手術によって患部を切除することが検討されます。口内炎に効果がある市販薬はたくさんありますが、できた箇所や薬の特徴を把握していれば、薬剤師に相談しやすくなります。
ぜひこの記事を参考に、自分に合った市販薬を見つけてください。
ただし、子どもは年齢によって飲ませられない薬もあります。
子どもの口内炎の市販薬を選ぶときは、特に注意してください。
また、中には副作用がある成分が含まれているものもあります。
他の薬を服用していたり、アレルギーを持っていたりする方は、事前に主治医の先生や薬剤師に相談しましょう。
なお、1~2週間ほどたっても症状が改善しない、患部が広がっている、あるいは、治っても頻発するなどの場合は、他の病気が原因になっていることも考えられます。
その場合は、できるだけ早く歯科口腔外科を受診しましょう。
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経歴
2003年 東京歯科大学 歯学部 卒業
2003年4月~2011年10月 東京歯科大学水道橋病院 勤務
2011年11月 まつもと歯科医院 開院
2015年4月~ 東京医薬専門学校 講師
現在に至る